国民の富を大企業に移す
財界・マスコミ結託の不透明税制の正体
安倍首相は消費税に関し来年度10月から10%へと引き上げる方針を表明した。14年に8%へと増税し、国民生活に甚大な影響を与えたことから、反発を恐れ2度にわたり延期してきたが、今春の大綱で消費増税を明記しており、15日の臨時閣議で決定した。
国民生活は疲弊の極を強め、いわゆるまやかしのアベノミクスの下で非正規雇用は労働者のほぼ半数を占めるまでになった。安倍自公政府は消費税を「社会保障の充実に使う」と増税の名目にするが、実際には法人税の減税分を消費税で穴埋めしているに過ぎない。
一方大企業独占は、消費税還付制度や大元の企業課税の低率化でますます国民や中小零細から富を巻き上げ、過去最高益をあげる。不公平なカラクリで、莫大な権益を享受するトヨタ、ソニーなど輸出で濡れ手に泡の大企業からなる財界。それにつながる大手マスコミは、広告利権でつながる同士であり、不正な増税システムの正体を国民に悟られぬようあらゆる禁じ手を打ってくるだろう。
■トヨタ、5000億円もの利得
トヨタや日産など輸出主体の大企業は、製品を輸出するたびに「輸出品は消費税の回収ができない」という理由で消費税分が還付される制度がある。消費税が増えるたびに還付金が増える仕組みで、この還付金は国内の中小商店が収めた消費税納付額から支払われる。還付額がもっとも多いトヨタ自動車は消費税5%だった2010年度段階の還付金が約2200億円で、消費税が8%になった2015年度の還付金は3633億円にふくれあがった。これが10%になれば5000億円規模に増える。一般庶民や中小零細企業・商店は消費税が増えると出費が増えるが、大企業は消費増税でばく大な利益を得る仕組みだ。
消費税が5%だった2010年度の大企業の推定還付金は以下の通り。
・トヨタ自動車:2200億円強・ソニー:1100億強・日産:1000億円弱・東芝、キャノン、ホンダ:700億円台…。
消費税率が8%の15年度には、消費税収19兆円のうち還付金額は6兆円に膨らんだ。消費税率がアップするほど、輸出大企業は払ってもいない消費税の還付で自動的に不正な利益を横取りする。
まるで大企業に貢ぐ輸出奨励金の有様であり、米国トランプ政権が不正な輸出奨励だとして関税をかけると怒りをぶちまけるが、マスコミは正面から取り上げる気配はない。
大企業には法人実効税率の引き下げに加えて、「政策減税」などの優遇もある。政府が2016年に明らかにした2014年度の実態調査によると、その合計額は約1兆2000億円にのぼり、トヨタ自動車は研究開発減税の1083億円、研究費総額にかかる税額控除の777億円など、年間約2300億円もの減税措置を受けていた。
「社会保障を充実するためには消費増税しかない」といい、庶民の懐から有無をいわさず巻き上げる一方で、大企業へのこれら一方的な優遇や50兆円を超える海外へのばらまき、米国兵器購入に血税を投入する安倍政権の姿勢はあまりに醜い。