青年たちは今(8)GSEF2018ビルバオ大会に参加して/星野 雪

社会的連帯経済を若者の運動として発展させる可能性を感じた
GSEF2018ビルバオ大会
■ 80ヶ国から1700名が参加
 2年後の大会はメキシコに決定


 10月の初めに、スペインのバスク地方ビルバオ市で行われた社会的連帯経済の国際会議、GSEF(Global Social Economy Forum)に参加しました。
 社会的連帯経済とは、資本ではなく、人間を中心とする経済を目指す思想、運動、システムの総称です。協同組合のように民主的な運営方法を採用している組織や、社会運動との結びつきが強いNPOやフェアトレード等の活動がそれに含まれているとされます。

GSEF2018ビルバオ大会 ソウル市長講演

ソウル市長の講演

 今大会のテーマは「包括的で持続可能な地域創生への価値と競争力」で、2014年のソウル、2016年のモントリオールに続く第3回目の大会であり、80ヶ国から1700人以上もの参加者が集まりました。3日間に及んだ大会では、ソウル市長やビルバオ市長等も参加した社会的連帯経済についての全体集会から、労働の未来に関しての分科会やフェアトレードについての分科会等、様々な発表や議論が行われました。日本からは、障害者の雇用や教育活動を行っている滋賀県の社会福祉法人「共生シンフォニー」が自分たちの活動を分科会で発表しました。

GSEF2018ビルバオ大会 サッカースタジアム前集合写真

日本派遣団 サッカースタジアム前集合写真

 今回、私は大阪労働学校アソシエ「社会的連帯経済研究会」が組織した関西派遣団として参加しましたが、他にも生活クラブやパルシステムといった生協の方々や大学教授らとともに日本実行委員会の派遣団を構成し、その一員として統一行動に加わりました。本来は関西派遣団に連帯労働組合関西地区生コン支部の方々や近畿生コン関連協同組合の方々も加わるはずだったのですが、権力による不当な弾圧の影響で参加が見送られました。連帯労組関西地区生コン支部の方々は、東京で開催された日本実行委主催の「プレフォーラム」に参加され関西派遣団代表として発言くださったので、この件は本当に残念でした。

■ 今大会初めて青年の発表の場が設定され、
 青年独自の声明も発表


 今回の大会では、若者の発表の場も設定されており、ヨーロッパの青年生協の委員長とカナダの大学の自治会の委員長が活動報告を行っていました。お話を伺うと、どちらもフランスの若者を手本にして活動しているとのことでした。また、前述の会に出席した発表者は、今大会の運営から声をかけられ集まっただけであり、互いに初対面だったそうです。

 今大会では、ビルバオ宣言に加え、初めて若者からの声明が発表されましたが、若者の連帯はまだまだ弱く、これからの課題だと感じました。逆に言えば、まだまだ若者の運動として発展させる可能性が残っているということでもあります。

■ モンドラゴン協同組合見学で感じたこと

 今回GSEFが開催されたビルバオは、スペイン北部に位置する山と海に囲まれた地方都市です。この都市がソウルやモントリオールといった大都市に続く開催地に選ばれた理由の一つは、世界的にも有名なモンドラゴン協同組合というグループがあるためです。

 「協同組合」というと、日本では生協などの消費者協同組合や農協がイメージされますが、向こうでは労働者協同組合(ワーカーズコープ)を意味します。神父のホセ・マリア・アリスメンディアリエタが設立した技術学校が起源とされるモンドラゴン協同組合は、8万人以上を雇用する世界最大のワーカーズコープであり、小売り業から金融業まで幅広く事業を展開しています。驚いたのは、モンドラゴン大学という大学までも協同組合が運営しており、そこの学生たちも組合員だということです。

GSEF2018ビルバオ大会 DotS.Coop見学

DotS.Coopを見学

 大会終了後、日本の参加者たちとそこのビジネス学部でコーチを務めていた10名の若者が設立した協同組合グループDot S.Coopを訪問しました。正直に言えば、国家やグローバル大企業から自立した経済圏を築いている、という事前のイメージと実際の現実は異なっていました。

 例えば、ある人が「なぜコカ・コーラ等のグローバル大企業と仕事をするのか」と彼らに尋ねた際、彼らは「コカ・コーラのしている事自体に賛成はしないがそこで働いている人たちは良い人だからだ」と答えていました。しかし、たとえどんなに人のいい警察官がいても、警察が暴力を独占している事実が変わらないように、従業員が善人でも悪人でもコカ・コーラがグローバル大企業であることは変わりません。彼らと仕事をする、という事は彼らを支援する事にもつながります。

 資本主義に代わる経済体制として提唱されている社会的経済を掲げる会社が、協同組合を単に株式会社に代わる便利なシステムとして扱っていたのは、少し残念に思えました。とは言え、これは一つの小さなグループに対する個人的な感想です。モンドラゴンには世界中から視察があり、今なお世界中の団体がその体制をモデルにしています。それでも成功しているのはモンドラゴンだけだと聞きました。モンドラゴンについて、多角的な視点から全体像を知るべきだと思いました。

■ 人間をもの扱いせずに尊厳を守る
 社会的連帯経済は資本主義経済よりずっと良い


 今回はわずか7日間の滞在でしたが、GSEFとその後の見学を通して感じたのは、人間をモノ扱いせずに尊厳を守る社会を目指す社会的連帯経済は、人間の構想する力を奪い、実行のみに従事する事を強いる資本主義社会よりもずっと理想的なのではないかという事です。

 今回の大会だけを見ても、1700人以上の参加者があり注目度も大きく、しかもビルバオやソウル等の地方行政だけではなく国連やILOまでもその実践に取り組んでおり、その規模と可能性はすごいものだと思いました。

GSEF2018ビルバオ大会 ゲルニカのモニュメント前で記念撮影

ゲルニカのモニュメント前で記念撮影

 しかし、大会後にゲルニカで会ったモンドラゴン組合の労働者が「モンドラゴン組合の組合員は、初期の組合員が持っていた自治意識を失っている。彼らは協同組合の理念に共感して働いているのではなく、生活の安定の為にそこで働いているだけだ。」と述べていたのを聞き、理想を実行し続けることはとても困難だと感じました。

 もちろんこれは一人の組合員の意見であり、理念に共感して奮闘している人もたくさんいるはずです。そうでなければ、モンドラゴンがこれほど発展し世界的に注目されることはなかったでしょう。この組合員の意見を聞き、民主主義やそれを基盤とした経済体制は、資本主義と違って主体性がなく怠惰では実現できないのだと再認識しました。もちろん制度も人間の意識を変えうるとは思いますが、最終的には各個人が理想を忘れず、その実現のために強い意志を持ち続けることが重要だと思います。

 現在、日本では「社会的連帯経済」という言葉さえほとんど知られておらず、ソウルのような行政レベルでの取り組みにはまだほど遠い状況です。今後、GSEFジャパン(それがどのような組織と運動に発展していくかは未知ですが)を中心に、ソウル宣言の会を引き継ぎつつ、2年後のGSEFメキシコ大会に向けて活動をしていけたらと思います。

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