映評『1987 ある闘いの真実』権力の「闇」に抗う民衆の良心

 いま韓国映画が熱い! この紙面でも1980年の光州蜂起を民衆の眼を通して見た作品『タクシー運転手―約束は海を越えて』が紹介されたが、今また注目すべき作品が日本で上映され、ヒットを続けている。同じく民主化闘争を扱った『1987―ある闘いの真実』がそれである。

■まるでその場に居合わせたかのような臨場感

 映画『1987』は昨年12月に韓国で公開されるや、なんと、わずか1カ月で700万人もの観客動員数を記録した。
 『タクシー運転手』には娯楽的要素あったが、この『1987』ははるかにシリアスで、当時の実際の事件、実在の人物、建築物に至るまで忠実に再現しており、まるで当時その場所に居合わせたかのような臨場感に引き込まれてゆく。
 登場人物も迫真の演技だ。とりわけ悪役のパク所長(キム・ヨンソク)には凄味があって圧倒される。パク所長とチェ検事(ハ・ジョンウ)、二人の対決もすさまじい緊張感を放つ。

■ひとりひとりの良心がつながって道を切り拓く

映評『1987 ある闘いの真実』 物語はひとりの青年の死から始まる。1987年1月14日、ソウル大学生朴鍾哲(パク・ジョンチョル)が南営洞警察の取り調べ中に死亡した。自白を引き出すための拷問によるものだ。報せを聞いたパク所長はこれを闇に葬るため直ちに火葬の申請をした。

 しかしソウル地検公安部長のチェ検事はそこに疑惑を感じ、パク所長の脅しにも屈せず遺体解剖を命令する。果たして解剖の結果、拷問の痕跡が明らかとなった。所長は次に解剖の医師を脅迫するが、やがて東亜日報のユン記者が拷問死の事実をかぎつけ、これを記事にする。

 一連の事態の進展の中に、検事、解剖医師、新聞記者、刑務所看守、民主運動活動家、神父、学生活動家などが次々と関わってゆく。
 やがてひとりひとりの「良心」がつながって、ひとつの真っ直ぐな道を切り拓いてゆく。
 そしてその道が行き着く先・・・。最後のシーンはとりわけ感動的だ。

■自らの力で民主主義を闘いとってきた韓国民衆

 朝鮮半島は解放後まもなく南北に引き裂かれ、戦乱の中に投げ込まれた。
 韓国は李承晩(イ・スンマン)、朴正煕(パク・チョンヒ)、全斗煥(チョン・ドゥファン)と独裁政権下の苦しみが続いた。しかし民衆は黙ってそれに従ったわけではなかった。
 1960年には4月革命によって李承晩政権を倒し、80年には光州蜂起そして87年には民主化闘争で全斗煥独裁政権を打倒したのだ。

 この映画を観て気付いた。
 あの光州武装蜂起の真実は、実は様々な人々の手を伝って戒厳令をかいくぐり、秘かに全国に拡がっていったのだと。
 そして87年、まるでその光州蜂起が全国へ飛び火したかのように、全国4千万民衆が起ち上がった!。 それからキャンドルデモに至るまで、我々はまさに韓国の「民衆革命の歴史」に立ち会っているのだ。

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