農が人と地域を変える/西沢江美子
―地元の特別支援学級の子どもたちと小さな直売所をつくってみた

社会と暮らし:埼玉県秩父市の特別支援学校の子どもたちとの実践
“農”が人と地域を変える―こんな農業もあります―
支援学校で苗を植える

<解説:大野和興> 四国の山村で育ち、その後農業農村を歩いて記事を書くことを仕事にして60年近くが過ぎました。それなりに農業の奥深さや村のくらしを知っているつもりでしたが、そんなぼくの認識の浅さを思い知らされる日々にこの春から立ち会っています。首都圏の西に位置する農山村・秩父に住んでいるのですが、近所にある特別支援学校の農業実習に参加し、そこで採れた野菜類を販売する小さな直売所を立ち上げたのです。知的障害を持つ子どもたちが農業をやる中でどんどん変わり、小さな直内所が地域のよりどころとなって、人と人のつながりが深まる―。80歳近くになって農業の奥深さを改めてかみしめています。
 以下、そんな試みを中心になって支えているジャーナリストの西沢江美子さんに書いてもらいました。西沢さんは2011年の東北大震災に際し、関西生コン支部が立ち上げた復興支援基金の援助で福島県三春町で高齢女性たちとともに農のくらしを立て直すプロジェクトを立ち上げ、現在秩父雑穀自由学校を主宰されている女性です。(編集委員)

個性豊かな子どもたちと

 この春、小さい小さい野菜直売所を作りました。名前は「特別支援学校朝どり野菜直売所」。埼玉県北西部の秩父市にある県立の学校です。小高い山の上にあり、小学生から高等部まで約100人の障害を持つ子どもたちが学んでいます。高校1年から3年の9人の生徒で農業グループが編成され、週2日農業実習に励んでいます。今年4月から、その実習に参加させてもらいました。

 9人の生徒たちは実に個性的です。自分の意志通りに歩くことが困難な少年、素手でものに触れられない子、他人がそばに寄ることを極端に嫌う生徒、ぶつぶつ一人で話している哲学者風の子…。そして、農業を通して、生徒たちの自分なりの動きを大切にしている教師がいます。

 畑を耕し、種をまき、草を取り、イモを掘り、いくつもの農作業をしていく中で、大きな変化が子どもたちに生まれました。自分の意志で動けなかった肥満の子が、サツマイモを一輪車でよろよろしながらも運ぶようになりました。人がそばによることを嫌がっていた少年がいつの間にか隣に並んで草を取っています。ほとんどの子が手が汚れることを嫌って軍手をしていたのですが、その軍手をはずし大根の間引きをしていました。

採れたものはみんな売る

小さな直売所
 生産したものを確実に消費して農業は完結します。そこで、野菜ができ始めた6月に、畑の端に運搬用コンテナ4個を積んで直売所を作りました。かつては純農村だった高台は、移り住んできた人もあって住宅が増えていますが、その人たちも高齢化し、買い物難民の地域になっています。

 突然のように出来た「朝どり百円直売所」は、思った以上に順調に動いています。毎朝7時に筆者夫婦と一人の教師の三人で野菜を取り袋に入れ並べます。キュウリ、トマト、レタス、ナス、スイカなど春夏野菜が終わり、そしてカボチャ、オクラ、サツマイモと続き、今は白菜、サニーレタス、ブロッコリー、キャベツ、大根、水菜,カブが並んでいます。一人の生徒が早起きして時々参加し記帳を引き受けています。

 並べ終わるころ、ある人は痛む足を引きずりながら、ある人はお化粧をして元気に、散歩友達を連れ立って、買い物にきます。みんな一人暮らしの高齢者です。百円玉を備え置きの小さな箱に入れ、一袋か二袋を買う。いつか直売所は朝夕の寄り合い場所になっていました。メニューの交換、健康情報、野菜を作る子どもたちのことから福祉のことまで話は広がります。
 ご多分に漏れずここも古い共同体意識は消え、住民どうしがばらばらになっています。今、小さな直売所を中心に新しいつながりが生まれつつあるのです。

仲間外れの野菜はないよ

直売所で人気の丸キュウリ

地域で人気の「丸キュウリ」

 もう一つどうしても報告したいことがあります。丸まったキュウリの話です。
 「ここのキュウリは柔らかくておいしい」と口コミで広がり、この夏よく売れました。キュウリの中には細い物、丸まったもの、ひねこびたものもあります。それも捨てずに、採ったものはすべて袋に入れ並べました。どれも個性豊かな子どもたちが作ったものだからです。

 やがてつるが枯れ、最後の収穫を迎える頃、実をつけたキュウリはすべて小さく、細かったり太っていたり、丸まっていたり。それも全部並べました。そしたら、「丸まったところがおいしい」と食べ方に花が咲き、「こんなのスーパーでは売ってないものね」。
 いつか「丸キュウリ」という名前までつき、連日売り切れました。

カット野菜と丸キュウリ

 学校と畑のある山を下りて20分ほど歩くとスーパーがあります。そこの人気商品はカット野菜。「数百円で手をかけずに数種類の野菜が食べられる」「それにあれこれ考えなくてすむし」。農山村地帯の秩父の台所にも、カット野菜はしっかり入っているのです。

 カット野菜は一工程ごとに洗浄・滅菌され、“清潔”な野菜に生まれ変わります。子どもたちと働いた畑で「丸キュウリ」をとり、袋に入れて並べながら、スーパーに並ぶカット野菜ことを思いました。どちらが本当に野菜なのだろうか、と。


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10月
31
13:30 “他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
“他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
10月 31 @ 13:30 – 16:00
“他者への想像力”を~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて @ オンライン
【同時通訳付き Web開催】 SJFアドボカシーカフェ第67回 “他者への想像力”を ~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて~  組織ジャーナリズム・メディアの報道に接する日々において、政権に対する「忖度」やフェイクニュースの横行など目を覆うばかりの状況に不信感や危機感が高まっています。  長年メディアの中で活動をしてきたベテラン(?)のおじさん・おばさんたちも危機感を共有してきました。そこから、ジャーナリストを目指す若い人たちに「権力を監視し、市民の側に立つ」という姿勢を育んでもらおうと、「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」の活動が3年前から始まりました。  なぜ「日韓」なのか。日韓の間には、従軍慰安婦や徴用工の人たちのこと、強制労働など、今も「歴史認識」をめぐる問題が横たわっています。その解決のためには、まずお互いが相手を学び、理解していくことが必要です。その行為は、ジャーナリストにとって大切な“他者への想像力”に思いを寄せることにもつながります。  ジャーナリストが日々伝える「今」の一つひとつは、「過去」つまり歴史を背負っています。そこに目を向けられるようなジャーナリストが日本で、韓国でニュースを発信していければ、今のメディアは少しずつ変わっていけるのではないか。そんな日韓学生フォーラムの試みをもとに、日韓の皆さんと歴史認識を共有する道を探っていければと思います。 ゲスト 〇植村隆さん:  1958年、高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒、82年、朝日新聞社入社。大阪社会部記者などを経て、テヘラン、ソウル特派員。北海道報道部次長や外報部次長などを経て、北京特派員、函館支局長など。2014年、早期退職。17年秋に「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」をジャーナリスト仲間たちと立ち上げる。また現在まで、16年より韓国カトリック大学客員教授、18年より週刊金曜日発行人兼社長、19年6月から「金曜ジャーナリズム塾」塾長も務める。 〇西嶋真司さん:  1957年生まれ、早稲田大学卒。81年に「RKB毎日放送」入社。記者として報道部に配属され、91~94年にJNNソウル特派員。2000年に制作部に異動し、ドキュメンタリー番組を制作。18年に退社し、映像制作会社「ドキュメント・アジア」を設立。ドキュメンタリー映画の代表作に『抗い 記録作家 林えいだい』。現在は元朝日新聞の植村隆記者のバッシング問題をテーマにした映画『標的』を制作中。 〇「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」に参加し、現在メディアで働く記者や学生も出演します。 詳細 ●日時: 2020年10月31日(土)  13:30~16:00 ※受付時間13:00~13:25 ●会場: オンライン開催 ★オンライン会議システム・Zoom(言語通訳機能付き)を使用します。スマホやPC等の端末から参加いただけます。参加方法の詳細は、お申込みくださった方に10月26日までにメールいたします。 ★グループ対話セッション(逐語通訳付き)や、ゲストとの対話も行う予定です。聞くだけの参加も可能ですが、この対話の場を一緒につくれるよう、お声を出していただけましたら幸いです。参加者さまのお顔は写らないよう初めはこちらで設定いたしますが、グループ対話中は、自主的にお顔を写していただけます。 ●参加費: 無料  ※通信料は参加者さまのご負担となります。 ●お申込みフォーム: https://socialjustice.jp/20201031.html ★先着50名様。完全事前登録制(上記フォームからのみの受け付けとなります)。 ★締め切りは【10月25日】、または【定員に達した時点】の早い方とさせてください。 ●イベントホームページ: http://socialjustice.jp/p/20201031/ ★同時通訳(日本語・韓国語)をいたします。 ★韓国語でのご案内ページ http://socialjustice.jp/p/ko20201031/ もございます。オンライン開催のため韓国など海外からの参加も容易です。もしお知り合いで韓国語でのご案内の方がよろしい方がいらっしゃいましたら、こちらのリンクを広めていただけましたら幸甚です。 ― 助成: オープン・ソサエティ財団/JANICグローバル共生ファンド ― ■主催・お問い合わせ先: 認定NPO法人まちぽっと ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) メール: info@socialjustice.jp
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