書評『水が世界を支配する』スティーブン・ソロモン

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「水」大国・日本に迫る最大の危機

書評『水が世界を支配する』スティーブン・ソロモン 人類文明の歴史は、水をどうやって得るか、どうやって使うかの歴史だった…命の水をキーワードに世界の歴史を眺めなおした一書だ。
 世界各地の社会制度や政治、経済、産業など文明をかたどるモノとは何かをさぐり、それこそ水だとのあっけない結論が示されている。

 中でも11章~12章…米国における水の歴史はこの著の重要部で、この国のステートしての多様性を説明するのに便利でもある。
 新生独立国家米国は、広大な国土のそれぞれの条件に合わせ、ある時は中国の大運河方式、また欧州型資本市場方式で、さらには古代中東の中央集権方式で対応していく。それまで5000年の人類と水の歴史を、まっさらな新天地で「おさらい」してみせるかのように。

フーバーダムの功罪

フーバーダム 1936年に竣工したフーバーダムは、その建設によって上流域の米国では灌漑農業を行うことが可能となったが、下流域のメキシコで塩害を発生させ、メキシコ政府や農民からの怨嗟と抗議の声にさらされた。
 ダムの建設によって、従来肥沃な土壌であった下流域に養分土壌が流れなくなり、農作物が育たなくなる。それは言われてみれば当たり前のことなのだが、ダム建設が下流域などに大きな悪影響になっていることにダム廃止運動の基点が見いだせる。

 雨と山林が豊富な「水大国」日本に住んでいると忘れがちなことだが、人類史における文明と経済システムの基底は、地域固有の「水」の条件によって形づくられ、国家の興亡、戦争の行方も「水」が決め手になっていたというこの驚くべき視点こそ、今、目先の利害だけで山河や農業を破壊し、水道システムが外国資本に売り渡され、「水大国」の地位が揺らごうとしている我が国には必須の書だ。


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