新連載】要塞化すすむ南西諸島(1)/小西 誠(軍事評論家)

南西諸島に展開する自衛隊

いま、南西諸島全域への自衛隊配備計画が進められている。地対艦・地対空ミサイル部隊を中心に、レーダー基地や兵站施設建設も進められている。またそれらに付随して沿岸監視部隊や住民監視目的と思われる情報保全隊などまでが配備される。これは米軍の対中国戦略のもとに自衛隊が配備され、武力衝突の際には米軍の別働隊として中国軍の前面に立って戦うことが想定される。軍事評論家の小西誠さんにお話をうかがった。(編集部)

■ 政治に先行する軍事

小西誠さん

小西誠さん

――いま、沖縄の辺野古の問題が大きく取り上げられておりますが、一方では安倍政権は自衛隊基地を南西諸島一帯に広く展開しつつあります。これは米軍の戦略との関係も含め小西さんからご意見を伺いたいと思います。

小西 まず自衛隊の南西諸島配備の実態から説明していきたいと思います。これは北方シフトから南西シフト態勢への転換と言えます。九州から与那国島までの「琉球列島弧」第一列島線に沿ってほとんどの島にミサイル部隊を中心とした自衛隊基地を作るということです
 2016年に与那国に開隊(部隊の開設を指す)されたのに続いて、今年2019年3月には宮古島、奄美に開隊されます。九州での新聞報道によれば九州で「鎮西30演習」が行われた時、司令官が「我々はすでに準備を終えた。あとは政治がどう判断するかだ」と発言した。鎮西演習とは南西諸島における機動展開部隊の実動演習としてこの5年間繰り返してきています。その配備体制がどのように展開されているかを説明していきます。

■ 与那国島の状況

与那国島

与那国島駐屯地

 2016年3月30日に開隊、沿岸監視部隊160人。最初は小さく造りそれを増強してゆくのがこれまでのやり方です。100人、150人、160人へと漸増しています。沿岸監視隊から始まりましたが、空自移動警戒隊の配備も決定し移動訓練も始まっています。
 情報公開請求によって得た情報によれば、ここに弾薬庫などの巨大な兵站施設を作る事が決まっています。最新情報によれば、情報保全隊に警務隊までが配備されることが決まっています。ここから分かることは一つは住民の情報を収集し宣撫工作を講じるだろうという事。もう一つは今後、少なくとも与那国部隊が連隊規模に増強されてゆくだろうということです。現在、基地警備隊には30人が配属されていますが、今後は1000人規模になってゆくでしょう。

■ 石垣島の状況

石垣島

石垣島の自然

 警備部隊、地対空・地対艦ミサイル部隊600人、兵站施設が決まっていて規模が拡大されます。石垣の住民はそれを必死に食い止めていたんですが、2019年2月に着工すると防衛省は宣言しています。
 防衛省が急ぐ理由は、沖縄県が宮古島住民の要求で環境保護をめざしており、今までは自衛隊はその対象外であったものが自衛隊も含めることになり、そのための環境アセスメントが3月末を予定しているため、環境アセスメントにかかったらそれだけで3年も5年もかかるので駆け込みで着工してしまおうとしているわけです。自衛隊はそのために説明会を開いていますが、住民は拒否しています。1万5千、有権者の半分が住民投票要求の署名をしています。
 しかし、住民投票で多数をとったとしても政府は強行してきますよ。前例があって、岩国基地に艦載機が移駐する時に、岩国市民の87%が住民投票で拒否したんですが、首長をすげ替えて移駐を強行してきたんです。ですから、自衛隊側から見た基地の戦略的重要性を考えると、例え住民投票で否決されても自衛隊配備は強行してくるでしょう。辺野古のように。そうしないと戦略的に穴が空いてしまう。

■ 要塞島と化す宮古島の状況

宮古島に建設中の基地

宮古島に建設中の基地

 宮古島は先島諸島の中心的な位置にあり、警備部隊に加え、地対空・地対艦ミサイル部隊が配備され、さらに指揮所が置かれることになっています。自衛隊は戦前、石垣島に1万、宮古島3万を擁した旧軍を踏襲しています。宮古島には、今800人を予定していますが、さらに増えることになるでしょう。
 宮古島には宮古空港の他に3000メートル級の下地島空港がありますが、十数年前から何度も自衛隊や米軍の誘致運動があって、それを跳ね返してきました。「民家空港に限定する」という1971年に屋良朝苗県知事が作った覚書がありますから今のところ軍事空港にはできませんが、このままの力関係では軍事空港化は必至の情勢です。

■ 奄美大島・種子島(馬毛島)への配置

馬毛島

馬毛島

 奄美にも、警備部隊、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊、兵站部隊が600人配備となっていますが、その後空自移動警戒隊、空自通信基地が新たに配備・建設されます。つまり、5部隊が配備され、文字どおりこの島も要塞島になります。
 また、種子島北西部に馬毛島がありますが、防衛省ホームページには2010年に馬毛島の利用について公開されています(同サイト「国を守る」)。米軍艦載機のタッチアンドゴー訓練だけが行われるかのように報道されてますが、それは年間13日程度です。防衛省のホームページには、自衛隊の上陸訓練の演習場、機動展開の事前集積拠点としてちゃんと書いてありますし、地元でも説明会を開いています。
 自衛隊の南西シフト、薩南諸島での馬毛島の重要性は防衛省の文書でも出ていますが、「島嶼戦争」には兵員、武器、弾薬、燃料、医療品など膨大な兵站物資が必要となります。馬毛島はそれを輸送する航空輸送拠点、奄美が海上輸送の拠点と予定されています。

――船での補給にはかなりの艦船が必要と思いますが、自衛隊はそれを所有しているのでしょうか?

奄美市大熊地区

奄美市大熊地区駐屯地

小西 例えば兵員・兵站物資などを1万人輸送するためには輸送船が100隻必要となります。フォークランド紛争の時、英国政府は民間の大型船を100隻借り上げて輸送に使っています。自衛隊では5万人くらいでの戦闘を想定していますが、短期的にも100隻は必要となるでしょう。戦争となれば、民間船の徴用となりますね。しかし平時から徴用するわけにはいかないので、今は「なっちゃんワールド」など民間フェリー2隻だけを常時借り上げて演習をやっているわけです。この船は普段は函館に係留しています。

瀬戸内町節子地区駐屯地

瀬戸内町節子地区駐屯地

 奄美の瀬戸内町古仁屋港は「奄美の瀬戸内海」と言われるように入り組んで穏やかな入り江です。ここに海自の誘致運動が起こっています。南西シフト態勢の海上輸送拠点計画です。
 自衛隊駐屯地の造成が進められている奄美市大熊地区(対空ミサイル・歩兵部隊基地30ヘクタール)、瀬戸内町節子地区(対艦ミサイル・歩兵部隊・大型弾薬庫、兵站基地28ヘクタール)は南西諸島最大規模になります。この基地は急峻な高地にありますから、そこまで地下道を掘って港へつなぐことが考えられます。またここはアマミノクロウサギの棲息域なんです。だから、トンネルを掘ることになるでしょう。

■ 水陸機動団の動向

与那国レーダー基地

与那国レーダー基地

 水陸機動団が2018年3月に2個連隊で発足し、水陸両用車52輌、オスプレイ17機で発足しましたが、そのオスプレイの配備先の佐賀空港が地元漁民の反対運動で配備先が決まらずいったん木更津へ配備するとなっています。水陸機動団は3個連隊を予定していますから、あと1個連隊を沖縄に作ることがほぼ決定されています。防衛省は発表しながら、沖縄の反対運動の動向を見ているんです。反対運動が弱ければ直ぐに投入してくるでしょう。
 2012年の統合幕僚部の発表によれば、水陸機動団のキャンプハンセンへ1個連隊の移動が予定されています。自衛隊が米海兵隊基地のキャンプハンセンに行って毎年合同訓練を行なっている事からも、水陸機動団のここへの配備は明らかです。
 沖縄本島には対艦ミサイル部隊が配備されます。これは八戸の第4ミサイル連隊を移駐させることが決まっています。そのうちの1個中隊がすでに2018年3月に九州に移動していて、今後は奄美に配置されるでしょう。だから奄美に最初にミサイル部隊が配置されるんです。

■ 空母のほんとうの役割

F35Bステルス機

F35Bステルス機

 さらにF35B戦闘機(短距離離陸垂直着陸機)をとりあえず42機購入し、「いずも」型護衛艦を2隻を改修し、空母艦隊の配備が始まります。次の新中期防衛計画では18機のF35Bを改装空母に載せる事になります。
 空母は普通は1隻の運用はなく3個空母機動部隊で運用しますから、まだこれから新造する事になるでしょう。しかし、ここで問題になるのは、この空母部隊をどこで運用するかということです。これは列島線の外側の太平洋で運用することになっています。
 列島線の内側にいれば簡単に敵に攻撃されますから、太平洋側に出て島の陰に隠れて運用するしかないんです。そうすれば、島々にはミサイル部隊が配置されていますから、それに守られるだろうと。

空母に改造された護衛艦「いずも」

空母に改造された護衛艦「いずも」

 しかし、僕はあまり意味はないと思っています。戦前の日本海軍は改装空母を含めて30隻くらいの空母を持っていたんですが、あれはハワイを含めて広い太平洋全域で戦闘をするためだったんですよ。ところが、列島弧の内側の狭い海域や南シナ海では空母など必要がありません。島々に沢山の空港があるしいざとなれば南西諸島の民間空港を全部徴発するという計画があるのです(既に与那国・石垣・宮古島・南北大東島の軍事化を発表)。

――事実上の不沈空母ですからねえ。

小西 今の段階では空母を持つということは、せいぜい敵ミサイルのターゲットを増やして無駄弾を撃たせるという事に過ぎません。戦争になれば米軍の空母部隊も3部隊くらい動くでしょう。それに強襲揚陸艦も来る。日本の空母はターゲットを分散させて米軍を守る。米軍もそれを奨励している文書が出ています。

――米軍のために代わりにやられてくれ、と?

事実上の空母・護衛艦「かが」

事実上の空母・護衛艦「かが」

小西 そういう事です。米空母は1隻1兆5千億円くらいしますから、グアム島方面に退避移動させ、強襲揚陸艦はそれよりも安いから何隻かを列島線付近に配置する。実はミサイルは、動く艦艇にはそんなに命中しないんですよ。実際にリムパックの時にハワイ沖で自衛隊の最新鋭のミサイルを持って行って、そこで米軍の廃棄艦を目標に撃ったんですが、2発撃って1発しか当たらなかった。命中率50%です。それも止まっている船です。
 僕もびっくりしました。空母は時速80キロで航行できますから、ジグザグの回避行動をしたら100発撃って10当たるかどうか。だから防衛省も米国防総省も大げさに「中国の弾道弾ミサイル危機」を吹聴しているんです。しかし万が一当たったら大変なので逃げるというわけです。(以下、次号につづく

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