5G世界通信基盤をめぐる米中の暗闘 – ファーウエィ事件から

「米中争覇」時代へ、米国が最先端技術にかける国際謀略の網
経済対立から軍事衝突の未来?

huawei 昨年の12月5日カナダ捜査当局は、米政府の要請を受け中国の大手通信機器メーカー・ファーウェイ(華為技術有限公司)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者を逮捕した。米国が目下経済制裁を課しているイランに対して、同社が違法に製品を輸出したとの疑いによるとされるが、この動きは後述のように米国側で周到に用意準備されたものだった。
 IoT時代の社会基盤たる5G(第5世代通信規格)のサービス開始を目前にして、米国は中国の各メーカーの「排除」に乗り出した形だ。これは米中争覇の歴史の始まりを告げる象徴的な事件であり、その影響は両国に留まらず米中を対立軸に世界分断と冷戦時代の暗い幕開けも示唆する。【関西M】  

 昨年、米国第一を掲げるトランプ大統領による一方的な追加関税政策に世界の批判が集まる中8月、我が国日本企業にとっても無視できない法律が成立した。対米直接投資の審査強化を図る「外国投資リスク審査近代化法」 (FIRRMA)と、軍事利用可能な汎用品・技術・ソフトウェアに対する輸出管理規制 (EAR) に恒久的な法的基盤を与える「輸出管理改革法」 (ECRA)である。
 これらはかつて東芝が、社会主義国へ軍事転用可能な製品を輸出したかどで米国に懲罰処分を受けた事件*以上の深刻な影響をもたらすと専門家は警告する。

*東芝機械ココム違反事件/1987年発生した外国為替及び外国貿易法違反事件。「共産圏」へ輸出された工作機械によりソビエト連邦の潜水艦技術が進歩しアメリカ軍に潜在的な危険を与えたとして日米間の政治問題に発展した。

 そして今回のファーウエイ事件である。
 右記の3つの法律に加え同時期に示された米国軍産体制…米軍を<一つの国家>と見なすならその国家予算とも言えるNDAA(国防権限法)概算請求での行動目標基準に、中国の通信企業敵視政策がものの見事に打ち出されていた。
 その意味でファーウエイ首脳逮捕と言う大きな事件は、トランプ特有の突飛な思い付きでも何でもないのだ。
 それは米・軍産複合体を筆頭とする反動支配層の思い描く戦略の一環であり、これを事前察知出来ない我が国外交筋と国際知識人の識見の無さには呆然とする。
 人民の思想行動まで支配下に収めようとする米中両国の通信基盤争奪戦は、新しい冷戦構造として我々の目の前にある。

世界4割の5G通信に影響力 中国の巨人ファーウェイ
中国の巨人ファーウェイ
 ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)は中国深圳市に本社を置く通信機器ほか通信基地局設備などの研究開発中継局を供給する世界の大手だ。
 同社は1987年に人民解放軍出身の任正非氏が創業。従業員数は約18万人(2017年)。今回逮捕された孟晩舟氏(副会長CFO)は任会長の娘だ。2018年売上高は前年21%増の約12兆円におよぶ。

米国、2010年からファーウェイ社危険視
近未来戦サイバーウォーの緒戦


 アメリカは2010年からファーウェイ製品の通信端末からアメリカの機密情報が中国政府に渡ってしまっている?との問題点を指摘していた。IT技術の発展した現代、米中衝突があったとしてもミサイルや戦闘機での通常戦争は行われず、ハッキングやクラッキングなどの技術を用いた「サイバー戦争」が行われるとされる。ならばIT情報が敵国に渡ってしまう事は即敗北を意味し、機密情報はどうしても同盟国にすらも渡したくはないだ。
 ITを駆使し相手国が持つシステムを妨害捜査し、相手国よりも優位に貿易を進めて”経済的に強くなる”ことで自国を豊かにするというまさに現代の国家戦争の始まりは2018年8月、中国通信系会社締め出しからと後世は記する筈だ。
             
●同社首脳逮捕の理由
 米国がイランへの経済制裁をしている最中、孟副会長が香港にダミー会社を設立し、イランに対して通信機器を密輸していたとの容疑と、孟が最低でも7つのパスポートを所持していたとして、国家ぐるみでのスパイ活動を行なっていたのではないかとも米国情報筋は騒ぎ立てるが真偽は不明だ。

●世界各国へ中国製品の排除要求
 米国は「ファーウェイ」「ZTE」「ハイクビジョン」に加えて、「ダーファテクノロジー」と「ハイテラ」の2社を排除対象企業に加え、2020年8月13日以降にこれら5社と取引を行う国や企業とは、米政府機関は一切の取引を行わないと宣言し、関係の深い国々に対しても同様に”中国通信系会社3社”の製品は使わないように要求した。要求した国々は「オーストリア」「インド」「日本」「ドイツ」「イタリア」「ニュージーランド」などだ。
 早速日本の3大通信網は米国に追従したが、ドイツは中国を依然支持していると言う。

●中国企業のダメージは?
 昨年4月には、ファーウエイに次ぐ中国の通信機器大手中興通訊(ZTE)に対し、米政府は米企業との7年間の取引禁止の制裁を発動した、7月には解除されたが、その一時的ストップの影響だけでもZTEの2018年1~9月期決算は、1170億円もの大赤字に転落した。
 これなども、大事の前の小手試し的な米国の陽動作戦であったかと今更ながら気づかされる。トランプは米国内には経済に優先する愛国・米国防衛と言う切り札で制圧にかかるだろう。今後中国が、どんな手で反撃に出るか――行く末が懸念される。

世界の携帯電話マーケットは今
世界の携帯電話マーケット韓国サムスンは第2四半期に7510万台を出荷、20.9%の市場シェアを獲得。一方、米国Appleは4130万台を出荷、12.1%の市場シェアを獲得した。日本メーカーは、ソニーを除きトップ10にも入っていない。立ち遅れは明らかだ。


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