今回の米国による対中国宣戦布告とも言える一連の政策打ち出しは、昨年2018年8月14日トランプが署名した2019NDAA(国防権限法)に既に詳細に暗示されていた。その中味は一言で集約すれば、軍産体制の再強化につながる処方集だ。国防権限法は今後の国防政策とそれに必要とされる予算の大枠を示したものだ。
<米軍再建>を謳うトランプの強い意志で、戦費を含む予算総額は2018年度より170億ドルも多い約7170億ドル・79兆円余りとなった。世界覇権を渡さないとする米軍産複合集団。彼らの主敵は、はっきりと中国に定められた。
米・国防予算白書で、中国との対決姿勢鮮明に
「中国企業の通信機器禁止」の底流
世界のマスコミも、特にわが国のマスコミも専門家も見過ごした?(あるいは意識的に沈黙したか)、トランプ米国の重大な世界戦略の転換が昨年8月にあった事実はほとんど知られない。
トランプと副大統領ペンスは、ニューヨーク州のフォート・ドラム基地(第10山岳師団)でこの日、侵略戦専門部隊である唯一の山岳軍将兵らの見守る前で2019NDAA(国防権限法)署名式を行った。
トランプは例の自画自賛の演説で「ひどい予算削減の時代は終わり我われは今、これまでにない形で軍を再建している」と述べ、みずからの成果だと強調。軍産複合体との運命共同化たる身を露わにした。
その2019国防権限法の中味だが、中国について、軍の近代化や強引な世界投資を通じて国際秩序を覆そうとしていると非難している。その対抗措置として中国への機密の漏えいを防ぐため、政府機関での中国の大手通信機器メーカーである華為(ファーウエイ)や中興通訊(ZTE)2社製品の使用の禁止。ほかに中国を念頭に海外からの投資の審査を強化する条項を盛り込み、かつてない中国への対決姿勢を露わにしたのだ。
これは経済封鎖から始めようとする米国流の古典的手法だ。だが、企業名を挙げそれも一般の企業の名前を挙げて警戒するのは究めて異質で、トランプの数々の異常な言動に惑わされた感もあるが、12月の華為№2首脳逮捕に至る道筋はやはり既定のモノであったと見られる。
※2019年度NDAAでの中国関連部分について
1257~1258項 台湾の防衛力強化。台湾旅行法で今後高官レベルの交流を促進。軍事訓練も企図する。
1259項 中国のRIMPACへの参加禁止。
1260項 中国の産業スパイなどによる技術移転に注意。
1261項 中国共産党によるサイバー活動やハイブリッド戦術、メディア情報操作、文化的活動への注意と監視。
1262項 南シナ海における中国の活動に関する報告の必要性。
…そして889項 HuaweiとZTEについて言及。→★HuaweiやZTEの製品を政府機関は使わないこと。
★これら企業の製品を使っている企業は米政府と取引できないことを意味する。まさにこれは世界企業各社への警告と恫喝だった。
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