よむ 書評『ウラミズモ奴隷選挙』『ひょうすべの国』

笙野ワールド・魂の連作
汚辱世界と表現で対決 怨念の巫女の口伝のような…
 
笙野頼子 追い詰められた存在がゆえ、その反撃は毒を持つ。…衰弱一方のこの日本に、女性表現者がますます過激に登場し始めて来た。その一人、笙野頼子の小説・随筆の中で噴出するエネルギーはすさまじい。

 読者からも、ずばり超ド級の傑作っぽいとか、過激な文体がニーチェ「道徳の系譜」を思わすとか、あの<家畜人ヤプー>世界に繋がるだとか、18禁だとか。さらには狂おし過ぎる孤立世界ゆえ一言で興醒めだとか…いわゆる毀誉褒貶が相半ばし、これほどまでに過度に集中する作家は最近稀だ。いわゆる論争の嵐なのだ。村上ワールドなど<僕もちょっぴり世界のコト考えてるし>的アリバイ表現を濫造する男性表現者はさぞすくんでいるだろう。

 2作は一連のもので、作中に出てくるにっぽんは、近未来の日本の姿であり、<ウラミズモ>はそこから独立した女性のみの国との設定だ。ダイバーシティとか両性の合意など、くそくらえのアンチロマンのメタワールドだ。
 書き方自体がワイドショーや週刊誌の文体っぽく(多分下衆受けを狙って?)エログロとフェミニズム臭のナンセンス小説は、実に書き手の勝手放題が極端に保証されたその臭みの空間こそ読者を選別してるのだろう。

 書名の「ひょうすべ」とは、恐るべき未来を支配する妖怪の名。「表現がすべて」の略語だ。
 米軍オスプレイ墜落を「不時着」、南スーダンの戦闘を「衝突」と言い換え本質を隠そうとする言葉のごまかしが横行する現状に対し、言葉によって同時代と向き合う彼女が怒りを込めて創作した妖怪なのだ。新年、怖いモノ見たさの人々に贈る書物ではある。


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