連載】要塞化すすむ南西諸島(2)/小西 誠
米軍の対中封じ込めに高まる緊張と自衛隊

沖縄は米軍の盾として焦土に すすむミサイル戦構想

沖縄を舞台としたミサイル戦運用構想

沖縄を舞台としたミサイル戦運用構想

 前号でのインタビューに続いて軍事専門家小西誠さんのお話を聞く。前回は自衛隊が南西諸島の島々にどのように配備されているかを聞いた。その自衛隊基地は、具体的にどのような目的のもとに運用されるのか。米軍と密接な関係を保ち、各地で共同演習をやってきた自衛隊は米軍の戦略のもとに米軍とともに東アジア、琉球列島弧に沿って運用されようとしている。そこで自衛隊はどのような役割を担っているのか、東アジアで何が起ころうとしているのかを見てゆく。

■沖縄を舞台としたミサイル戦運用構想

対地・対艦巡航ミサイルの運用イメージ小西 前回は沖縄島に自衛隊の地対艦ミサイル部隊が配備されるところで終わっていますが、少し追加させてください。新防衛大綱・新中期防で沖縄島を含む先島―南西諸島でのミサイル部隊の増強が一段と大きく打ち出されたからです。これを新防衛大綱などでは、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の配備を行うとしています。

 問題はこれらの配備先が石垣島・宮古島・沖縄島のいずれかということです。現在予定の対艦・対空ミサイル部隊に加えて「島嶼間ミサイル戦用」として配備するということです。こういう「島嶼間戦争」を含めて、日米の想定する「島嶼戦争」においては、もはや南西諸島の島々は、一木一草も残らない焦土と化すでしょう。

■南西シフトと島嶼の不沈空母化

空母に改造された護衛艦「いずも」

空母に改造された護衛艦「いずも」

 日本は戦後74年以上も運用していなかった空母を、なぜ今造る必要があるのか。「南西諸島に20ヶ所ある民間飛行場を自衛隊が使えばいい」と言う自衛隊元西部方面総監もいるくらいです。それがいちばん簡単です。飛行場に掩体壕(えんたいごう)を併設し、地下に燃料庫や弾薬庫を造ればはるかに簡単です。しかも空母とちがって決して沈まない。文字通り不沈空母です。

 それに、例え滑走路を爆撃され破壊されても滑走路は簡単に修復できます。10メートルの穴でも、1日どころか1時間あればブルドーザーで埋めることができます。今は使われていない1千メートル級の空港なら30ヶ所くらいあります。例えば、その中の旧種子島空港では昨年10月、米海兵隊と合同の軍事演習をやっているし、また、奄美大島の旧奄美空港を使って対艦ミサイル部隊を軸とした「鎮西演習」をやっている。

 防衛省は2017年、与那国、石垣、宮古、南北大東島の5つの空港と使用の交渉に入ると新聞で発表しています。しかし発表しているということは、すでに交渉がある程度進んでいると見ていいでしょう。市長が了承すれば、空港は数ヶ月で整備されるでしょう。しかし改修空母を運用するには、離着艦訓練も含めて最低5年はかかります。

――地対艦ミサイル部隊を配備するということは、敵が艦船でやってくる事を想定しているわけですね?

小西 それだけではないが、そこが軸になっています。日中戦争について、「経済的に相互依存しているし、もし戦争になったら核戦争にまでいってしまうから、戦争はできない」という意見がありますが、現実のシビアな南西シフトに踏まえた考えとは言えません。現実に自衛隊は中国軍の動きを封鎖しようとしているわけです。

東シナ海・南シナ海をめぐる軍事列島線 第一列島線はベトナムまでつながっており、そこでフィリピンやベトナムと対峙するわけです。そこまで含む政治的、経済的、軍事的なシフトになっています。
 日本列島から沖縄、フィリピン、ベトナムまでの封鎖線は近海封鎖。遠海封鎖はマラッカ海峡まで続いています。そこでは米軍の一千トンクラスの沿岸戦闘艦が2010年から4隻配備されています。

■新たなウォーム・ウォーの始まり

 これらの封鎖は米軍の「オフショアコントロール」戦略のもとに行われています。この目的とするのは、このように配備することによって中国に向かって「こちらは中国の動きをいつでも止められる」という政治的・軍事的威嚇をしているのです。マラッカ海峡から、ジャワ、カリマンタンなどのスンダ海峡にかけて中国の経済流通の80%がここで止められるとされています。従って、すぐに戦争が始まるわけではないとしても、いつでも中国の封鎖ができるという体制を日米で構築しているのです。

安倍・トランプ これは2017年12月、トランプによる国家安全保障戦略が、2018年1月には米国防総省からも軍事戦略が発表されています。それによれば、ロシア、中国を日米で封じ込める態勢が始まり、「新冷戦」と呼ばれていますが、この呼び方は誤解される言い方です。むしろ自衛隊の一部では「ウォーム・ウォー」つまり「温かい戦争」という言い方をしています。

 冷戦とは、東西が分裂しながら相互に住み分け出来ている状態のことです。しかしウォーム・ウォーはいつでも戦争が始まる状態を意味します。かつての冷戦では東西による覇権が互いに確立している状態でしたが、日米中の相互間では、東アジア、太平洋、部分的にはインド洋も含めて覇権争いが続いています。そしてそのエスカレートは平時から有事へ「シームレス」(切れ目なく)に起こってゆく。

■「航行の自由作戦」に高まる緊張

 これはどういう風に始まりつつあるかというと、半年ほど前、中国軍と米軍が異常に南シナ海で接近したことがありました。その時には400メートルの距離でしたが、最近、米軍と中国軍との間で42メートルもの距離に接近したことがありました。中国が領有を主張する海域を認めない米軍が「航行の自由作戦」と称して中国軍に異常に接近したものです。

 海上では道路と違いすぐには停止出来ないから42メートルはぶつかっても不思議ではない距離です。つまり、中国軍側は衝突も辞さない覚悟で向かってきたという事です。戦死者が出るかも知れない状態です。ここでもし戦死者が何十人か出たら、次は自衛のために撃つぞ、という意味です。

■経済力と産業技術力とのジレンマ

――経済的に見ると、アメリカの没落に対して中国の方が有利になりつつありますよね。2025年には米中の経済力が逆転するのではないかとも言われていますが?

小西 いくら見かけの経済力が高まっても、内実ではどうでしょうか。例えば5Gの分野で話題となっている中国製スマートフォン「ファーウエイ」が世界的に好調ですが、内部の基板や部品のほとんどは日本、韓国、米国製です。だからマイクロチップの供給を止められたら中国は力を失うでしょう。

トランプ大統領 戦時中、日本軍の地下軍事工場が八王子にあって今でも見学できますが、敗戦後、米軍がこれを収容した時に驚いたのは、兵器の工作機械が全部アメリカ製だった事でした。ゼロ戦などもそれで全部作っていた。だから、工作機械が壊れたら、もう武器も造れない。いま中国がまさにそうなんです。マイクロチップから、工作機械から、全部外国製の機械を使って造っているわけです。

 中国は戦闘機のエンジンもヘリコプターのエンジンも独力では造れない。だからロシアからエンジンを買い入れてライセンス生産をしている状態です。外形は中国でも造れるでしょう。しかし肝心のエンジンはロシア製です。エンジン、マイクロチップ、工作機械など最も重要な部分を外国からの輸入に頼っている。

 だからアメリカも(航行の自由作戦などで)強気で中国に向かってきているわけです。いざとなればマイクロチップの供給を止めることができるという自信があるからです。

中国が建造した空母「遼寧」

中国が建造した空母「遼寧」

 本当の最先端技術は経験の蓄積が重要なのです。日本が戦後70年以上も造っていなかった空母を今改装して造っていますが、運用するのは難しいでしょう。同じように中国の空母にもまだ技術の蓄積がありません。

 潜水艦にも同じことが言えます。日本の潜水艦は800メートルから1000メートル潜れます。これは世界の潜水艦の中でもナンバーワンです。鋼鉄の製造技術が優秀だからです。戦前から100年造りつづけてきた歴史があります。ところが中国の潜水艦は300メートルの水圧に耐えられないだろうと言われています。

 外部に漏れるエンジン音でもちがいます。日本の潜水艦のエンジン音は静かですが、中国のエンジンは大きな音がする(音紋といい自衛隊は中国潜水艦の全てを掌握)。だから実戦では中国の潜水艦は待ち伏せ攻撃に簡単にやられてしまうことになる。潜水艦は2週間くらい待ち伏せしている事ができますから中国艦よりも深い位置からジッと待ち構えていて攻撃できる。

■日韓関係の変化――軍事同盟から対立へ

 いま、私は自衛隊の教範類を防衛省に開示請求して50冊くらい読んでいます。例えばこれらを分析すると対艦ミサイル連隊の任務がわかります。

――ところどころ真っ黒ですね。

ヤマサクラ演習

米軍戦略に基づくヤマサクラ演習(沖縄は壊滅)

小西 黒いところも多いけど、読んでゆくと、自衛隊が対艦ミサイルをどう使うのか、その作戦が具体的に分かってきます。第一攻撃目標は輸送船。これを撃破することによって補給を断つ。目標が大きいし、成果も大きい。琉球列島弧のチョークポイントのところで中国艦船を封鎖するわけです。いま東・南シナ海の緊張が高まっていますが、中国の軍民船を止めることによって軍事的にも、また経済的にも脅威を与える。それに対して中国側は強硬突破する。また米軍も「航行の自由作戦」によって中国の封鎖線を突破する。それに対して中国も強行に阻止する。まさに緊張状態にあります。

 尖閣を巡っても緊張が続いています。日中の空軍同士が互いにひんぱんにつばぜり合いをやっていますからね。これでは本当にいつ、偶発的な撃墜事件が起こるかわからない。

 しかし、韓国軍を見ても、止める力はないでしょう。レーダー照射を巡る事態を見ると、みっともないやりとりにはあきれます。しかし、歴史を知らない若い人たちの間では日韓の対立に何の疑問も持たないようですが、本来韓国は自衛隊と米軍を介した「準軍事同盟」関係にありました。特に日韓は相互にGSOMIA(日韓で秘密を直接共有するための軍事情報包括保護協定)などの軍事協定を締結する関係また、自衛隊と韓国軍が食料や燃料などを融通しあう物品役務相互提供協定(ACSA)でも協議が始まっていました。

 この前の朴槿恵(パククネ)政権時代には日韓は準軍事同盟へといきつつあつたということ。文在寅(ムンジェイン)政権になってから変わってきたわけです。
 だから、あのレーダー照射問題について、安倍政権の対応を見ると非常に愚かな、韓国を見下した恫喝的やり方と言わざるを得ません。本来はお互いにウラで「あ、ごめんなさい」で済ませてしまえる話なのです。(→次号につづく

<次回予告>
自衛隊の南西シフト下における「機動展開・統合運用」体制、日米のA2・AD戦略などの実態


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