韓国】ろうそく民衆の検察改革は勝利へ前進/村山和弘
-2020年「韓国の民主的な国家改造」が本格化する

「徴用工問題」追及から「植民地支配・日韓条約体制」打倒へ

検察権力を包囲する韓国のロウソク民衆

【編集部より】 韓国政治は激しく揺れながら前進している。韓国検察庁は裁判所、警察庁の上に君臨し、検事総長は絶大な権力を持っている。文在寅大統領はこの組織を改革すべく曺国氏を法務大臣に指名したが、検察は曺氏には不正の疑いがあるとした。しかしこれは検察によるデマであったことが内部からの告発なども含めて明らかにされてきた。
 朝鮮、日本、米国も含めた東アジアの国際関係の中で韓国の今後は予断を許さない。

検察権力・右翼保守勢力に対する民衆の闘い

文在寅(ムン・ジェイン)大統領と曺国(チョ・グク)前法相
文在寅大統領と曺国前法相

 曺国(チョ・グク)前法相の夫人であり「長女の不正入試」や「不正な金融投資」などの疑いで10月24日未明に逮捕されたチョン・ギョンシム韓国東洋大学教授は、そのまま拘置所で新年を迎えた。

 昨年12月27日未明、曺国氏を拘留しようとした検察に対して、文在寅(ムン・ジェイン)大統領を支持する人々が夜を徹して拘置所をとり囲み、「検察解体!」を叫んだ。民衆のこれまでの闘いによって裁判所は検察が請求した逮捕令状を棄却し、曺国氏は解放された。深夜の拘置所前では人々が勝利の歓呼で曺国氏を迎えた。

 それでも、検察は、12月31日、曺国氏を在宅起訴した。また検察は、曺国氏と結託しているとして宋炳琪(ソン・ビョンギ)蔚山市経済副市長の逮捕状も請求した。検察は、青瓦台(大統領府)に強制捜査を3度行った。大統領府に検察が乗り込む事態とは「検察権力によるクーデター」に他ならない。

韓国党は国中の極右団体をかき集め、国会を占拠して検察改革法案の審議を妨害した
韓国党は国中の極右団体をかき集め、国会を占拠して改革法案の審議を妨害

 国会では、文政権の与党「共に民主党」に対して300議席定数のうち114議席を占める最大野党で朴槿恵(パックネ)前大統領の与党であった自由韓国党(旧ハンナラ党)が国会を占拠し、検察改革の法案審議をストップさせてきた。それと結託した検察は、法相候補の曺国氏に捜査の的を絞り、「文書偽造」「汚職」「大学進学不正」など、手当たりしだい「何か出るまで」強制捜査をやり続け、家族・親族への「不正」をでっち上げた。

 マスコミも大キャンペーンをくり拡げた。韓国では大手マスコミ4社の内、3社は保守右翼であり、1社が中道だ。その中道マスコミも検察の強制捜査に萎縮して、「検察権力批判」を行なっていない。

 民衆も検察やマスコミからの影響と無縁ではなかった。それも当然だ。若い世代は、故廬武鉉氏の死の真相を知らないからだ。
 他方、左派の一部は、文政権の改革スピードの遅さに強い不満があった。支持者でも「胃が痛くなった」というほどだった。

検察庁・韓日右翼マスコミの大統領府攻撃

文在寅氏と故 廬武鉉元大統領

 同じ体験を、文在寅(ムンジェイン)大統領が20年近く前に経験していた。廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領がどうして、保守勢力に倒されたのか? 何故、死んだのか?

 その「敗北の経験」は、廬武鉉元大統領の死を一番の側近として、文在寅氏が痛恨の念で体験したのである。しかも、彼一人が敗北の経験をしたのではなかった。当時の丸ごと一世代が、後悔の涙を流した。民衆闘争史の深い教訓だった。
 この間の「検察解体」「曺国は私だ」と叫んだ人々の心は、「二度とあの敗北を繰り返さない」との強い思いに駆りたてられていた。

 当時、廬武鉉大統領を「保守勢力に屈服している」と思って見限った自分が、「大統領を殺した保守勢力」と闘えなかった自分の誤りと重なっていた。韓国の民衆闘争が「痛恨の涙を経験した」教訓が、この粘り強い闘いを形成していた。

検察庁包囲100万人デモ

 相次ぐ「検察庁包囲100万人デモ」、何としても、文政権と曺国の家族を死守しようと心に誓った必死の闘いだった。検察による「曺国氏家族への包囲」「拘束取調べ」「裁判」。氷点下の夜や明け方に及ぶ闘いの連続であった。

 韓国では検察が捜査指揮権を持ち、警察は検察の支配下にある。2019年は、この検察権力を打倒できるかどうか、「ろうそく革命」の生死を賭けた闘いの年だった。曺国氏を始め、故廬武鉉故大統領の追悼を誓った人々が検察改革デモを担った。

 文政権が曺国氏を法相に任命したのはこの検察権力の改革のためであった。曺国氏は法務相に就任するとすぐ、法務省による検察への監察権を強化する検察改革案を発表した。文在寅氏は朴槿恵前大統領失脚後、選挙によって大統領府を合法的に握った大統領である。ろうそく革命を担った民衆が大統領府の背後にいるという自信もあった。

 しかし大統領府以外の権力を握っている保守勢力は、検察権力を先頭にして、最早、後がない「決戦」の覚悟を決めていた。検察当局の曺国逮捕の目的はこの大統領側からの検察権力縮小方針を阻止する事だったのである。

 マスコミは保守勢力が握っている。曺国氏に対するマスコミの大デマ宣伝はまるで洪水のようだった。それによってろうそくデモに参加した若者の支持率が落ちた。ソウル大生のデモは「曺国の娘の推薦状」デマによって「不正入試」疑惑がでっち上げられたことによるものだった。

 実は「曺国批判」キャンペーンの正体は、韓国の右翼マスコミと日本の右翼マスコミが曺国氏を歪曲するデマの拡散によるものだったのだ。

デマは暴かれた!新たな闘いが始まる

 廬武鉉氏の敗北を繰り返さないと決意した世代が「第二ろうそく革命」を貫く確信を持った勢力の中心軸だった。

 文政権の労働者への政策は画期的だったが、しかし「徴用工」問題での最高法院判決を巡って日本による半導体輸出規制など経済制裁と時期が重なり、文在寅政権は苦しい立場に置かれた。また左派の一部からは文政権に対して「資本に屈した」「財閥にメスを入れない。保守勢力と強く闘うべき」との批判が出た。

 しかし、廬武鉉政権の敗北を自分で経験した世代は「数世代に及ぶ闘いだ」と決意している。辛酸を舐めた人たちが、職場の帰りにデモに結集し、日々ともに頑張った。その成果が現れつつある。

検察の不当捜査を告発した韓国の警察庁長官
警察庁長官が検察の不当捜査を告発

 軍人権センターは「軍事クーデターの真相が隠蔽されている」と発表した。この全貌は、検察と自由国民党にも無関係では無い。
 警察内部からも「検察捜査の問題性」を警察庁長官が発言した。すると検察は、警察庁長官を強制捜査した。ところが検察内部からも叛旗を翻す者が現れたのだ。検事が検察の捜査内容を告発・弾劾した。「曺国捜査は違憲。全てが無実だ」。

 また今まで検察の僕(しもべ)だった裁判所が曺国拘留の検察申請を却下したのだ。こんなことは韓国司法史上初めてだ。これで「曺国は疑惑の洪水」と思った人々も「検察とマスコミのデマの洪水」に自分は侵されていたという事に気づき始めた。

大統領新年あいさつ「国民の上に立つ権力は無い」

 年明け早々、ハンギョレ新聞は文在寅大統領への支持が高まってきていると報じた。1月3日のM B C放送による世論調査では一時30%台にまで下がった大統領への支持率が50・2%へ復活。自由韓国党の議事妨害に否定が60・1%。肯定は28・6%。次期大統領を選ぶ質問には民主党候補支持が韓国党の2倍だった。

 検察による曺国の罪状でっち上げが明らかとなり、急速に支持率が戻ってきたのだ。また「政治家・高位高職者」を対象にした検察庁特捜部の権力を検察から取り上げ、公捜処(高位公職者の犯罪捜査処) を設置する法律を約6割が支持した。

曺国 夫妻

 検察が「人質」のつもりで拘束していたチョン・ギョンシム夫人が拘置所内からメッセージを出し、これが世間に知れるや、逆に検察を追い詰めている。

「私がここに居ることになった唯一の理由である司法改革・公捜処設置・検警捜査権調整案の通過のため、祈り続けている」「ろうそく市民の希望が実現する日まで」「私と夫を励ましてくださった多くの市民の心が伝わってきた」。

 因みに公捜処設置・検警捜査権調整案はすでに国会を通過し、半年後には施行される。検察権力の没落は決定的となった。保守大連合を掲げた初期の勢いは全く消え、年が明けると保守派は3派に分裂した。

 1月2日、検察は昨年4月26日未明の自由韓国党の国会占拠を阻止して衝突した「共に民主党」の5名に対しても、自由韓国党24名と共に起訴した。検察は「公平中立」を装いながら、検察権力を奪う「共に民主党」の妨害を目論んでいるのである。

 2020年1月1日、年頭にあたって大統領は「どんな権力機関も国民の上に存在することはできない」 「権力機関が国民の信頼を得ることができる時まで法的・制度的改革を止めない」と宣言した。

 さあ! 日本民衆もこれに続こう!フェイク・デマを打破する年だ。

NO!安倍を掲げて日韓条約体制と闘う韓国民衆に続こう

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