書評『塩花の木』 (耕文社・刊)

塩花の木 韓国の大手企業、釜山の造船会社・韓進(ハンジン)重工業では、10年以上にわたり解雇が続き会社の強硬な対応の中、自殺者は20数名にのぼった。

 2011年1月6日、一人の女性労働指導者が高さ35mの鉄塔クレーンに登り、そのまま立て籠った!彼女の名は、金鎮淑・キム・ジンスク。400名の解雇撤回を社会にアピールしようとした。だが報道も何もされず、会社は整理解雇を強行し続ける。金さんがクレーンに登ったのは、長期ストを構えても解雇を阻止できず、追い詰められ最後の手段であった。

 そんな孤独な闘いの中、彼女のクレーン上からの叫びはツイッター等を通じて徐々に人々に伝わり始める。150日以上に及ぶ上空での日々を過ごした頃、奇跡が立ち上がった。
 「希望のバス」と呼ばれる連帯行動が広がり、全土から市民が釜山の籠城現場に駆けつけたのだ。第1回「希望のバス」で700名もの市民がクレーン下に集まり、その後第5次にわたり数万もの市民が駆けつけた。
 籠城300日を越え解決せず、死ぬことばかり考えていた金さんに思いとどまらせたのも、下界で雨の日も集まり、天に向かって応援の声を張り上げる市民一人一人の姿だった。

 11月会社からの暫定合意案が出され、金さんは309日ぶりにクレーンから降り大地を踏みしめた。「……大地が揺れてない」ので、逆に気持ちが悪いよと周辺を笑わせ、泣かせた。

 その金さんの魂の半生を綴った日本語版が、立命館大学女性研究者らの手で今回成った。
 「塩花」とは?―金さんは本の中で、労働者の背中に広がる汗を「塩の花」と描き、労働者を「塩の花を咲かせる木」であり、「黄金がたわわに咲く木である」とも表現している。
 2012年記録映画「塩花の木、希望のバスに乗る」の鑑賞も合わせお勧めしたい。 (灯台)

『塩花の木』 (耕文社・刊)
金鎮淑(著), ペ・ヨンミ(翻訳), 野木香里 (翻訳), 友岡有希 (翻訳), ISBN:4863770308

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