コロナ災害は医療制度改革による「人災」だ/武峪真樹(ジグザク会)
直ちに撤回し、ベッド数・検査体制の拡充を!

庶民医療を切り捨て、病院数は半減以下に
改革と言う名の改悪
―これが新自由主義者の目論む医療の未来だ!

入院のイメージ写真

民営化に並行し断行された医療制度改革

小泉純一郎

  2003年、「聖域なき構造改革」を掲げて総選挙に圧勝した自民党小泉内閣は、それまでにも中曽根政権や橋本政権などによって進められてきた公共サービスの民営化をさらに一層推し進め、郵政、道路公団、各種の金融公庫などを次々に民営化していった。この「構造改革」の一環として、医療制度改革も並行して推し進めていった。

 その具体的内容は、「給付と負担の公平化」「医療費適正化」などの美名の下に、入院の必要な患者に入院日数削減を強制し、在宅医療・介護へと切り替えさせるものであり、また点数制度を導入して医師の診療報酬を削減、病院勤務にも成果給を導入し、医療従事者の負担を増加するものである。またこれまでの保健医療を見直し、保険料を3割負担へと引き上げることとなった。

医療制度改革は高齢者切り捨て政策だ!

安倍

 2006年9月、小泉政権を引き継いだ第一次安倍内閣は、この医療制度改革を推し進め、保険料の見直しを進めてきた。

 2006年と言えば、1947~9年に生まれた団塊の世代が60歳定年に近づき、年金給付と高齢者医療の増加が予測された。この時すでに医療費負担が増加の一途をたどっていた。

 厚労省は前年の年金制度改革、介護制度改革に続いてこの年5月には医療制度改革についての「基本的考え方」を社保審医療保険部会に示していた。それによれば「医療費適正化計画」に基づいて5カ年計画で医療費負担の大幅削減を目指している。

 中・長期の対策によって団塊世代が高齢化のピークを迎える2025年時点で、総額11%、医療給付費の6・5兆円削減、医療費ベースでは7・7兆円の削減が可能と推定されるとしている。

 つまり厚労省は、老齢者が増え老人医療の充実化がますます必要となりつつある時に、それに逆行する「削減計画」をぶち上げたのだ!

 さらに驚くべきことには、2008年から新しく「後期高齢者医療制度」が始まり、75歳以上の高齢者は個人単位で保険料の支払いをしなければならなくなってしまった。また、健康保険料率も、介護保険料率も少しずつ引き上げられている。

ベッド数20万床削減を目指してきた政府

ベッド数20万床削減を目指してきた政府

 公営企業の民営化、年金制度改革、医療制度改革は一体のものである。

 「福祉目的」と称して消費税を引き上げながら、その増収で得た資金の年金・医療事業への投入を削り続け、個人・民間に負担を押し付けているのがこの10年以上にわたって続けられている自民党の政策である。その結果、市民の生活水準はますます切り詰められて行く。

 医療においては、地域医療の縮小、病院経営の 統廃合が全国的に進められている。

地域医療の縮小、病院経営の 統廃合

 2008年と2018年とを比較すると、数の上ではベッド数20床以上が条件となる病院の数が減り、19床以下しかない一般診療所が増えている。その結果、この10年間でベッド数は176万4871床から164万8657床へと11万6214床も減っている(厚労省発表)。

 まだ新型コロナウイルス感染が発生する前の昨年10月28日、政府は経済財政諮問会議を開き、社会保障制度改革について議論した。

全国のベッド数を2025年までに13万床削減全国のベッド数を2025年までに13万床削減

 その中では何と! 全国のベッド数を2025年までに13万床削減することが提言されている。それどころか5年前の2015年には、20万床を削減し30~34万人を自宅や介護施設での治療に切り替えることが、「目標」とされていたのだ。

すでに事実上の「医療崩壊」が始まっている

医療崩壊

  このような時に、新型コロナウイルス感染が始まったのだ。大きな病院を削減し小さな診療所ばかりにしたために検査体制が整わなくなり、検査技師も検査施設も不足してしまった。

 そのために全国でどれだけ感染が広がっているのかを把握することができなくなる事態に陥った。また、病床数がギリギリの数に減らされてしまったために入院治療も制限せざるを得ず、それもあって検査数を制限しなければならなくなった。

 その結果、数字には表れていないが「新型コロナの感染者」と見なされ自宅隔離とされている感染者が、実は東京を中心にたくさん存在していると推定されている。日本の新型コロナ対策は今、このような麻痺状態にあるのだ。事実上の「医療崩壊」である

 4月15日、厚労省クラスター対策班は、適切な対策を取らなければ大規模な感染の広がりが起こるとの予想を発表した。しかし政府は「検査数を増やせば医療崩壊に陥ってしまう」と悲鳴を上げている。

 誰のせいでそうなったのか! 

 新型コロナ感染に対応できない今の日本の医療体制は、小泉改革以来連綿と続けられてきた医療体制の削減に原因がある。これは「人災」である。

市民生活安定と医療体制の回復が必要だ!

医療負担の増加

 安倍政権はこの緊急時に「法制」としての緊急事態宣言を発令するだけで、市民生活に対してはほとんど何の効果的方策も実行していない。

 緊急事態へ向けて外出を制止すれば市民生活が行き詰まるのは当然である。また検査・治療の体制も全く実情に追いついていない。
 今やらなければならないのは、何よりも大型予算の投入で市民の生活の安定に向けて速やかな経済的対処をすると共に、検査・治療体制を拡充することである。

 医療制度改革を直ちに撤回せよ!
 削減されてきた十数万の医療ベッド数を大至急回復させ、検査・入院・治療体制を確立せよ!
【武峪真樹/ジグザク会(4月15日記)】

「コモンズ」140号の目次にもどる

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

  1. コモンズ最新号目次

特集記事(ランダム)

  1. 連帯

    2018-11-25

    「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同人募集!

緊急出版「ストしたら逮捕されまくったけど それってどうなの…」

最近の記事

  1. 武建一&ネルソン・マンデラ
    例年通り編集局員の夏期休暇を確保するため、143号は9月10日発行の予定です。ご了承の上ご…
  2. あさがおのフリーイラスト
    資本主義こそがビヨーキとコロナ告げ イージス・アショア次は辺野古だ断念だ 開業…
  3. オルテガ・イ・ガゼット
    匿名性に埋没する大衆を定義現代の「野蛮人」への警世の書 ホセ・オルテガ・イ・ガセット…
  4. 映画「エジソンズ・ゲーム」
    電気を制する者が未来を制す現代につながる争闘の歴史の始め  19世紀末、米国。自ら発…
  5. 1995年少女暴行事件に全沖縄が憤激した(10.21県民大会)
    (前号からのつづき) 日米政府の押し付ける新基地絶対反対「琉球民族」自らで、世界に平…

職場・労働相談はこちら(外部リンク)


連帯労組の闘い ↑ 映画「フツーの仕事がしたい」より 労働相談は連帯ユニオン

行動予定

10月
31
13:30 “他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
“他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
10月 31 @ 13:30 – 16:00
“他者への想像力”を~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて @ オンライン
【同時通訳付き Web開催】 SJFアドボカシーカフェ第67回 “他者への想像力”を ~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて~  組織ジャーナリズム・メディアの報道に接する日々において、政権に対する「忖度」やフェイクニュースの横行など目を覆うばかりの状況に不信感や危機感が高まっています。  長年メディアの中で活動をしてきたベテラン(?)のおじさん・おばさんたちも危機感を共有してきました。そこから、ジャーナリストを目指す若い人たちに「権力を監視し、市民の側に立つ」という姿勢を育んでもらおうと、「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」の活動が3年前から始まりました。  なぜ「日韓」なのか。日韓の間には、従軍慰安婦や徴用工の人たちのこと、強制労働など、今も「歴史認識」をめぐる問題が横たわっています。その解決のためには、まずお互いが相手を学び、理解していくことが必要です。その行為は、ジャーナリストにとって大切な“他者への想像力”に思いを寄せることにもつながります。  ジャーナリストが日々伝える「今」の一つひとつは、「過去」つまり歴史を背負っています。そこに目を向けられるようなジャーナリストが日本で、韓国でニュースを発信していければ、今のメディアは少しずつ変わっていけるのではないか。そんな日韓学生フォーラムの試みをもとに、日韓の皆さんと歴史認識を共有する道を探っていければと思います。 ゲスト 〇植村隆さん:  1958年、高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒、82年、朝日新聞社入社。大阪社会部記者などを経て、テヘラン、ソウル特派員。北海道報道部次長や外報部次長などを経て、北京特派員、函館支局長など。2014年、早期退職。17年秋に「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」をジャーナリスト仲間たちと立ち上げる。また現在まで、16年より韓国カトリック大学客員教授、18年より週刊金曜日発行人兼社長、19年6月から「金曜ジャーナリズム塾」塾長も務める。 〇西嶋真司さん:  1957年生まれ、早稲田大学卒。81年に「RKB毎日放送」入社。記者として報道部に配属され、91~94年にJNNソウル特派員。2000年に制作部に異動し、ドキュメンタリー番組を制作。18年に退社し、映像制作会社「ドキュメント・アジア」を設立。ドキュメンタリー映画の代表作に『抗い 記録作家 林えいだい』。現在は元朝日新聞の植村隆記者のバッシング問題をテーマにした映画『標的』を制作中。 〇「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」に参加し、現在メディアで働く記者や学生も出演します。 詳細 ●日時: 2020年10月31日(土)  13:30~16:00 ※受付時間13:00~13:25 ●会場: オンライン開催 ★オンライン会議システム・Zoom(言語通訳機能付き)を使用します。スマホやPC等の端末から参加いただけます。参加方法の詳細は、お申込みくださった方に10月26日までにメールいたします。 ★グループ対話セッション(逐語通訳付き)や、ゲストとの対話も行う予定です。聞くだけの参加も可能ですが、この対話の場を一緒につくれるよう、お声を出していただけましたら幸いです。参加者さまのお顔は写らないよう初めはこちらで設定いたしますが、グループ対話中は、自主的にお顔を写していただけます。 ●参加費: 無料  ※通信料は参加者さまのご負担となります。 ●お申込みフォーム: https://socialjustice.jp/20201031.html ★先着50名様。完全事前登録制(上記フォームからのみの受け付けとなります)。 ★締め切りは【10月25日】、または【定員に達した時点】の早い方とさせてください。 ●イベントホームページ: http://socialjustice.jp/p/20201031/ ★同時通訳(日本語・韓国語)をいたします。 ★韓国語でのご案内ページ http://socialjustice.jp/p/ko20201031/ もございます。オンライン開催のため韓国など海外からの参加も容易です。もしお知り合いで韓国語でのご案内の方がよろしい方がいらっしゃいましたら、こちらのリンクを広めていただけましたら幸甚です。 ― 助成: オープン・ソサエティ財団/JANICグローバル共生ファンド ― ■主催・お問い合わせ先: 認定NPO法人まちぽっと ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) メール: info@socialjustice.jp
18:30 止めよう!沖縄・南西諸島への大軍... @ かながわ県民センター
止めよう!沖縄・南西諸島への大軍... @ かながわ県民センター
10月 31 @ 18:30 – 20:30
止めよう!沖縄・南西諸島への大軍拡!~小西誠さん講演 @ かながわ県民センター | 横浜市 | 神奈川県 | 日本
■ 日 時: 2020年10月31日(土)  18:30~20:30 (開場18:15) ■ 場 所: かながわ県民センター2Fホール  横浜市神奈川区鶴屋町2-24-2(横浜駅きた西口から徒歩5分)  http://www.pref.kanagawa.jp/docs/u3x/cnt/f5681/access.html ■ 資料代: 800円 ■ 定 員:事前申込み優先で130名  申込先: ytkouen@gmail.com  Fax: 045-881-2772 Tel: 070-6481-4362 ■ プログラム ※予告なく変更する場合があります ⭐18:30~19:00 闘うシンガー川口真由美さんの歌 ⭐19:00~20:00 小西誠さんの講演 ・要塞化される琉球弧~対中国の日米共同「島嶼戦争」~ミサイル戦争の実態 ・琉球弧全域のミサイル基地化・要塞化計画ー与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島・馬毛島への新配備 ・エアシーバトルとオフショア・コントロール、オフショア・バランシングと南西シフト ・国民保護法と住民避難~「非武装地域」宣言 再び沖縄を戦場にするな! ⭐20:00~20:30 質疑応答 賛同金募集中!  一口千円 口座名:横浜講演実行委員会2020  〒00290ー1ー98382 店名〇二九 0098382 主催  横浜講演実行委員会2020 ytkouen@gmail.com    

特集(新着順)

  1. 1995年少女暴行事件に全沖縄が憤激した(10.21県民大会)

    2020-8-5

    沖縄の「自己決定権」その歴史と現在(4)/伊波洋一 400年間、奪われた歴史再発見の時

  2. 総選挙で圧勝した文政権のこれからの動向に注目

    2020-8-3

    韓国総選挙の分析 キャンドルの民意(4) 今後の課題~文政権のこれからの動向に注目を

  3. 6・21 シンポ・今、見逃せない労働組合弾圧

    2020-7-26

    6・21 シンポ・今、見逃せない労働組合弾圧 各界識者が語った権力思惑とメディア発信

  4. 奪還された武建一委員長

    2020-7-25

    武建一 連帯労組・関西生コン支部委員長に聞く 弾圧された関生産別運動とは何か?今後にむけた胸中は?

  5. アレイダ・ゲバラさん大阪講演(2011)

    2020-7-4

    ゲバラの娘アレイダさんの語る『連帯』の重い意味 「命をビジネスにしてはならない」

バックナンバー

カテゴリ一覧

本日
昨日
累計
FROM 2014/01/01
ページ上部へ戻る