コロナ禍における新しい働き方を考える/大阪労働学校・アソシエ
“オンライン労働問題”という必然「つながらない権利」

今こそ「つながらない権利」の確立を
<オンライン&自由意志>その繋がりの未来

アメリカのハウスクリーニング労働者によって結成されたプラットフォーム協同組合  UP&GO

写真:アメリカのハウスクリーニング労働者によって結成されたプラットフォーム協同組合
UP&GO(HPより抜粋)

レポート:労働学校アソシエ事務局S

 大阪労働学校・アソシエは5月3日(日)、今やさけては通れなくなったオンライン上での労働や組織運営をテーマに<協同組合講座>をオンラインで開催しました。
 なぜ協同組合の講座でこのテーマを取り上げたのかというと、コロナ以前からオンラインでの組織化や労働の分配に先駆的に取り組んできた「プラットフォーム協同組合」という運動体が存在し、その運動の原則や実践が今日の状況を乗り越えるヒントになるとの考えからです。

新型コロナウイルスがもたらした“オンライン”労働問題という必然

 現在、新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが推奨され、多くの人が経済活動の急激な変化に直面しています。
 例えば、人々の在宅時間の増加に伴って注文や来訪が殺到する宅配やスーパーマーケットに関わる労働者に負担が集中しており、彼ら彼女らの健康や生活を守るのは喫緊の課題です。

 一方、これは抜け落ちがちな視点ですが、もう一つ重要な課題として、これまで仕事から離れ、休む場であった自宅にてオンラインで働かざるを得ない労働者の権利保障やプライベートの確保があります。
 実際、オンラインで飲み会が開催され、カメラ越しに上司から部屋の汚さを指摘され、掃除しろ、と言われるなど自宅でパワハラを受ける事例もあるほどです。

 この新しい課題に対して、労働者側だけでなく、組織運営に関わる管理職の人や組合幹部の人もこれまでの価値観を大きく変える責任があります。
 以下、そうした価値の転換のヒントとなるプラットフォーム協同組合の実践と原則を紹介します。

プラットフォーム協同組合が切り開いた可能性

 プラットフォーム協同組合の事例として、家事労働者の労働者協同組合があります。
 その中身は、移民や女性など弱い立場の人々が結集し、オンラインアプリで仕事を請け負い、収益はわずかな経費を除きほとんどが労働者=組合員に還元されるというものです。
 日本では学者の間では話題にのぼりますが、似たような実践例はまだありません。

 大切なことは、これが協同組合であり、共同所有、一人一票などの原則があることです。

プラットフォーム協同組合の10原則
1.共同所有(プラットフォームの共同所有)
2.十分な給与と所得の保障
3.透明性とデータポータビリティ
4.評価と承認
5.共同決定(プラットフォームの設計を含む)
6.法による保護(市場において公正な競争に参加するため)
7.リモートワークへの利益と保護
8.恣意的な行動からの保護
9.職場における過度な監視の拒否
10.つながらない権利

どの原則も重要ですが、今日の状況に対処するうえで特に参考になる原則が「つながらない権利」です。

 スマートフォンでつながり、自宅で仕事せざるを得ない今日、あらゆる瞬間が職場になります。
 自宅にいても仕事に意識が囚われてしまい、実際、際限なく仕事をしてしまう、させられるという事例があります。

 この問題は決して新しいものではなく、これまでフリーランスの人や個人事業主、子育て中であったり体が弱くリモートワークを選択せざるを得なかった人たちが直面してきた問題です。

 これまでこうした働き方を選択した人々の権利保護や生活保障は十分にされてきませんでした。
 「つながらない権利」とはオンライン状態から自分の意思で自由に離脱してよい権利のことであり、こうした問題から組合員を守るものです。

 かつて、アルバイトや非正規で働く人を「縛られない自由な働き方」として扱い、なし崩し的に差別と格差が拡大した事実があります。
 同様に、企業や政府が推奨する在宅ワークをなし崩し的に進めていけば、コロナ以前より楽で自由だと喧伝され、気づいたら立場の弱い人々の生活は蝕まれてしまいます。

 労働組合なども力を合わせ、オンラインから離脱するための職場のルール作りや、「つながらない権利」を実効力のある権利として勝ち取るべきです。

オンライン化で変わる組織運営

 「直接会って話す」という、社会を維持するうえで当たり前と思われていた前提が今や崩れ始めています。
 そのため、これを前提として成立していた会社、労働組合、協同組合、学校などの運営は根本的な変革が迫られています。

 まず見つめ直す必要があるのは、これまで同じ時間に同じ場所で集まって何かをする組織形態こそが排除を生んでいた事実です。

 具体的には、子育てのため職場から離脱していた女性や、体が弱くフルタイムで働けなかった人々、不登校の生徒など、弱い立場に押し込められ、労働や組織の主役から排除された人々の存在です。
 しかし、プラットフォーム協同組合のような形態が拡大すれば、もはや目の前の組織に所属する必要もなくなります。

 逆に言えば、強制力や排除圧力によって成立させていた組織の運営側は、今後、信頼の獲得や選んでもらうための工夫が必要になるということです。
 もしオンラインの導入のせいで組織のつながりが弱まった、と感じるならばそれはこれまで何らかの強制力によって縛っていたことの証しです。

 あくまでボトムアップで、最も弱い立場の人を取りこぼさず、自分たちでオンライン仕事のルールや権利を確立する。
 オンライン化が進む今こそ、既存の労働組合や協同組合が蓄積した経験を活かす時だと思います。

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