
陸上イージス配備撤回、辺野古新基地も白紙撤回を

安倍政権は6月24日、国家安全保障会議(NSⅭ)の4大臣会合で、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の撤回を決めた。そもそもトランプ米政権の言いなりに爆買いし秋田・山口に配備強行しようとしたイージス・アショア配備計画は、両県住民の反対運動の前に立ち往生し、河野防衛相が配備実施のための「改修費用2200億円と12年の期間」を理由に停止したものだ。
このイージス撤回を受けて沖縄県の玉城知事と沖縄県民が、安倍政権に「ならば、コストと期間を要する辺野古新基地建設計画を断念せよ」と求めたのも当然のことだ。沖縄の新基地建設計画は、沖縄県民の民意と反対運動を無視し、防衛省が新基地建設のため埋立て工事を強行する大浦湾の海底には海面下90メートルの深さまで軟弱地盤が拡がり、活断層も存在し、新基地完成には約9300億円の費用と12年の期間がかかるとされ、あらゆる面で破綻している。
しかし、防衛省も安倍政権も秋田と山口の民意には応じながら、沖縄の民意は無視し「唯一の選択肢」だと辺野古に固執し新基地建設強行の姿勢を崩さない。露骨な沖縄差別政策を断じて許さない。
「敵基地攻撃能力保有」論議の危険
コロナ禍ですることか
しかもこのイージス配備撤回には裏がある。安倍首相は、6月18日の記者会見で、イージス配備導入が破綻した政府の責任を明確にするどころか、「敵基地攻撃能力を含む新たな安保政策」を今夏にも国家安全保障会議での議論を開始すると表明したのだ。
この敵のミサイル基地をたたく「敵基地攻撃的能力」保有は、これまで「攻撃的兵器を保有することは、自衛のための最小限度の範囲を超えることになるから、いかなる場合も許されない」とされてきた戦後憲法上の立場を破棄・蹂躙するものである。
対外的危機を演出して政権への求心力を回復する思惑も透けてみえるが、コロナ禍で生存の危機に苦しむ状況の中で、とうてい正気とは思えぬ危険極まりない策動だ。
自民党は与野党内や世論の反発を避けるために、「敵基地攻撃能力」を「自衛反撃能力」に名称変更して、今夏にも「敵基地攻撃能力」保有のための新たな「ミサイル防衛」についての報告書を政府に提出し、安倍政権が今秋にも決定する「国家安保新戦略」に反映する狙いである。
トランプ言いなりの先制攻撃戦略と兵器の爆買い

コロナ・パンデミック禍は「米国一極集中の時代の終わり」をさらに鮮明にした。
直面するトランプ政権は、中国よりだとの理由でWHOからの脱退表明をはじめ米中の対立をあおり、激化させ、対中戦争戦略の下で旧来のBMD構想(既存の日米の弾道ミサイル防衛)に代わり、早期警戒機や戦闘機などあらゆる兵器を連携させる「統合防空ミサイル防衛(IAMD)構想への転換を図りつつある。これには敵基地攻撃も含まれている。
安倍政権の動きは、2018年改定の防衛計画大綱で長巡行ミサイル等の一部導入を図ったが、それにとどまらず米戦略のIAMD構想を本格導入し、中国軍を包囲する南西シフト態勢確立のため米軍と自衛隊の日米軍事一体化を深めていこうというものだ。

「敵基地攻撃能力」の保有のためには、レーダー網や偵察衛星、長射程のミサイル、爆撃機、電子機器などが必要である。
これまでに朝鮮のミサイル脅威を口実に米国言いなりに米武器の爆買いによるミサイル(BMD)整備経費だけでも累計2兆6730億円に上っている防衛費をさらに「兆単位」で拡大し、中国・朝鮮の脅威を口実に「アメリカと共に戦争のできる国」に向かって大軍拡と戦争体制強化への流れを加速させるものである。
重要なことは、「敵基地攻撃能力」と名称を変えてもその本質は変わらず、核武装国家(朝鮮・中国)のミサイル基地をたたく「先制攻撃方針」である以上、それは核戦争への引き金を引く危険な道だということである。
これは、コロナ後の朝鮮半島と台湾、香港の一国二制度問題とも関連して、東アジアの平和と日米安保体制の質と歴史的枠組みの再編にも絡む重要な問題である。
沖縄をはじめ在日米軍でコロナ感染拡大!
命より日米安保重視
コロナ禍は、資本主義が生み出す貧困と格差が命の格差に通じることを明らかにしたが、今一つ、この国の対米隷従の政治の根幹にある米軍の駐留と日米安保の問題を「見える化」させている。
今、普天間基地、キャンプ・ハンセン、カテナ基地など在沖縄米軍基地で、コロナ感染が拡大している。
7月中旬には100名余もの感染が拡大し、さらにそれは本土の岩国,佐世保、厚木、横須賀にも広がり、公表されていないので不明だが横田、座間各基地にも感染拡大の可能性がある。これは沖縄県民をはじめ基地周辺住民の命の危険に係わる問題だ。
なぜ、感染拡大は起こったのか。
現在、米国からの入国は原則禁止されているが、日米地位協定で米軍は出入り自由なため、日本の当局には入国拒否も隔離政策をとる権限もないからだ。
日米地位協定による日米合同委員会では、米軍基地内での検疫情報については米軍と地元の保健所間での情報共有が合意されているにもかかわらず、米国防省が3月30日に基地と部隊のコロナ感染状況は非公開とする方針を取り、安倍政権はこれを口実に米側に公表を要求していない。
この状況に対し、県民の命の軽視への怒りをもって沖縄県議会は全会一致で米軍に対して決議し、「基地封鎖を求める」「地位協定を改定しなければ県民の命は守れない」と指摘し、「今回の問題は沖縄だけでなく日本全体の問題だ」と米国に追従するのみの日本政府を指弾している。今、この危機を招いているのはトランプ・安倍両政権の責任である。

本年は朝鮮戦争開戦から70年。そして、朝鮮戦争を契機に戦後日本の「この国のかたちとあり方」を決めたサンフランシスコ講和条約と日米安保条約が1952年に締結され、その後の1960年に改定された現行日米安保条約が発効されて60年の節目である。
戦後75年たった今なお、日本に78もの米軍専用基地がおかれ、基地内は治外法権で、米軍機が昼夜なく爆音とともに自由勝手に飛び回り、莫大な「思いやり予算」を負担させられている。
特にその7割が集中する沖縄県では、世界でも類のない過剰な基地負担を強いられている。
この実態の根にある安保条約は締結当初の在り方から大きく変質し、上記で述べたように、今や米軍一体で中国を仮想敵国とし、対中米戦争戦略を担うものとなっている。
コロナ・パンデミックは、命と平和は武力では守れない、日米核安保―軍事同盟は廃棄すべき事を教えている。
緊急の課題は、沖縄・辺野古新基地計画の白紙撤回、感染拡げるすべての米軍基地閉鎖、隷属的な日米地位協定の抜本的改訂である。
「モリ・カケ・さくら」そして黒川検事総長問題、河井夫妻の巨額買収事件などにかかわる「首相の犯罪」の数々に人心は離れ、支持率低下で末期症状を示しながら、なお米国言いなりに危険な軍拡と改憲、戦争への道に最後の執念を燃やす安倍政権。今こそ、打倒の時だ!
(7月14日記)