米国大統領選・二大政党制の歴史的背景
共和vs民主 二つ以外に民意の選択は許されないのか…

リンカーン大統領

共和党の礎と黄金時代を築いたリンカーン大統領

 米国大統領選で現職のトランプが、共和党指名獲得に必要な1276人以上の代議員を確保済みで本選の正式候補になるのは確実だ。
 一方の民主党は、序盤で社会民主主義を標榜し若者を中心に草の根的ブーム起こしたサンダースの勢いに陰りが見え、中道のバイデンに有利な情勢だ。コロナウイルス騒ぎで大量動員での選挙戦術を得意とするサンダース側に不利に傾く。

 国家分断の象徴とまで言われたトランプの前回の驚きの勝利だが、これはラストベルト(錆びた金属)と呼ばれる中西部の鉄鋼や石炭・自動車など産業衰退諸州の白人層の厚い支持があったからとされる。
 いずれにせよ「共和党」と「民主党」に大別されるのはなぜか?米国の2大政党制の歴史をまとめた。【関西M】

米2大政党制の成立

 米国で今日的につながる政党システムが成立するのは1830年代、A・ジャクソン大統領の在任期間(1829~37年)の頃とされる。
 当初は、ジャクソンを支持する民主党(Democratic Party)とそれに対抗するホイッグ党(Whig Party)という構図の2大政党制であった。

 やがて奴隷制への賛否をめぐって1850年代の政党再編成がおこり、それによって民主党と共和党(Republican Party)の二大政党制が成立。これが21世紀の現在に続く。

「解放者」=共和党

 1860年の大統領選挙では、奴隷制に反対して結成されたばかりの共和党から、初の大統領当選者(Aリンカーン)が登場し、これが南北戦争(1861~65年)のきっかけとなった。

 この時代、共和党はリベレーター(解放者)の位置にあり、もちろん黒人被圧迫階級の希望の星であったというから、現在とはまったく逆の位相といえる。

共和党が長く優位

 南北戦争後は計16回の大統領選挙(1868~1928年)のうち、民主党が勝利したのはわずか4回に過ぎず、共和党の優位は長く続くことになる。

ニューディールと民主党

 この民主党劣位の状況を変えたのが1929年に発生した世界大恐慌と、それに続く1932年の大統領選挙だった。
 この時現職だった共和党Hフーヴァーを破ったFルーズヴェルトは歴史的な「ニューディール政策」を打ち出し、国民の支持を勝ち取ったのだ。

労働運動の力で築いたニューディール政策の輝き

 この時の成功体験が労働者大衆の民主党とのイメージ作りに奏功した訳だ。さらに当時の全米の労働運動こそがニューディール政策の確固たる基礎を作り上げた。

 例えば、20世紀初頭に「合同繊維労組」指導者Sヒルマンは移民労働者を組織化し、今日に見る集団交渉の基本を作り上げた。
 北部各州での労働運動の目覚ましい働きで、失業保険・最低賃金・時間外手当に関する法律も制定された。

 ニューディール政策の「知的な父」と呼ばれたJコモンズ・ウィスコンシン州立大学教授と彼の教え子たちは、ワシントンに出向きルーズベルト大統領政策を手伝った。これが大恐慌を終わらせ、中間層が拡大する礎を築いた。

新しい社会規範を

 だが1980年代以降の規制緩和、労働組合への弱体攻撃、グローバリゼーション拡大による生産海外化で中西部ラストベルト地域の製造業破壊につながる深刻な不況が起こった。

 取り残された地域での振興目的の軍需産業巨大化など、ニューディール政策で提起された基本部分の大半は荒廃した。これが、ラストベルト地域で取り残された白人層たちのトランプ傾斜という前回大統領選の結果たる深刻な米国分断となったのだ。

 米国にも、そしてそれに強烈な影響を受ける世界は、今こそ新しい社会規範を探らねばならない時代となったわけだが…。

(⇒次項につづく

民主党vs 共和党の主な違い

民主党(Democratic Party)
1792年、民主共和党として結成された。1930年代にはニューディール政策を実施したFルーズベルト大統領(在任1933~45年)の下で、強固な支持基盤が確立された。シンボルは、勤勉の証しであるロバ。      

傾向として大きな政府(あらゆる問題に政府が取り組む)を容認する。政府による経済政策や社会福祉政策などに対して積極的姿勢を取る。様々な少数者の立場を比較的容認し、共和党との比較においてリベラルといえる。貧困層や弱者・中小企業の救済を目指しており支持層は労働者や女性・少数民族などが多い。

※主な歴代大統領/トルーマン(在任1945~53)、ケネディ(1961~63)、クリントン(1993~2001)、オバマ(2009~16)

共和党(Republican Party)
1854年に地方政党として各州に成立。1860年にリンカーンが大統領になると全国政党として急激に発展した。19世紀の後半から20世紀初頭にかけては、ほぼ政権の座にあった。シンボルは、大きさの証しである象。

傾向として小さな政府(必要以上に政府は関与せず)が信条。政治的な立場は保守的(伝統や習慣、制度などを尊重している立場)であり、共和党を支持している層は裕福な白人層や起業家、キリスト教信者などが多い。

※主な歴代大統領/リンカーン(1861~65)、リチャード・ニクソン(1969~74)ジョージ・ブッシュ(父)(1989~93)、ジョージ・W・ブッシュ(子)(2001~09)、ドナルド・トランプ(2017~)

「コモンズ」139号の目次にもどる

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

  1. コモンズ最新号目次

特集記事(ランダム)

  1. 大阪万博(1970)

    2018-3-11

    連載2】競争と分断の共進化から連帯と協同の共進化へ 日米の制度的妥協=天皇+米軍/斎藤日出治

緊急出版「ストしたら逮捕されまくったけど それってどうなの…」

最近の記事

  1. 武建一&ネルソン・マンデラ
    例年通り編集局員の夏期休暇を確保するため、143号は9月10日発行の予定です。ご了承の上ご…
  2. あさがおのフリーイラスト
    資本主義こそがビヨーキとコロナ告げ イージス・アショア次は辺野古だ断念だ 開業…
  3. オルテガ・イ・ガゼット
    匿名性に埋没する大衆を定義現代の「野蛮人」への警世の書 ホセ・オルテガ・イ・ガセット…
  4. 映画「エジソンズ・ゲーム」
    電気を制する者が未来を制す現代につながる争闘の歴史の始め  19世紀末、米国。自ら発…
  5. 1995年少女暴行事件に全沖縄が憤激した(10.21県民大会)
    (前号からのつづき) 日米政府の押し付ける新基地絶対反対「琉球民族」自らで、世界に平…

職場・労働相談はこちら(外部リンク)


連帯労組の闘い ↑ 映画「フツーの仕事がしたい」より 労働相談は連帯ユニオン

特集(新着順)

  1. 1995年少女暴行事件に全沖縄が憤激した(10.21県民大会)

    2020-8-5

    沖縄の「自己決定権」その歴史と現在(4)/伊波洋一 400年間、奪われた歴史再発見の時

  2. 総選挙で圧勝した文政権のこれからの動向に注目

    2020-8-3

    韓国総選挙の分析 キャンドルの民意(4) 今後の課題~文政権のこれからの動向に注目を

  3. 6・21 シンポ・今、見逃せない労働組合弾圧

    2020-7-26

    6・21 シンポ・今、見逃せない労働組合弾圧 各界識者が語った権力思惑とメディア発信

  4. 奪還された武建一委員長

    2020-7-25

    武建一 連帯労組・関西生コン支部委員長に聞く 弾圧された関生産別運動とは何か?今後にむけた胸中は?

  5. アレイダ・ゲバラさん大阪講演(2011)

    2020-7-4

    ゲバラの娘アレイダさんの語る『連帯』の重い意味 「命をビジネスにしてはならない」

バックナンバー

カテゴリ一覧

本日
昨日
累計
FROM 2014/01/01
ページ上部へ戻る