サンダース候補ブームの背景に医療荒廃への怒り
医薬メジャーvs無保険 全米数千万大衆の怒りはどこへ

「米国民皆保険こそ国家財政を救う!」
最新研究が3大学合同研究で明らかに

特許 薬価貧困

米国版「国民皆保険」の道

 民主党の大統領候補選最中のバーニー・サンダースと、既に脱落したエリザベス・ウォーレン二人の候補が提案していた米国版「国民皆保険」(メディケア・フォー・オール)。
 これは全米数千万人の無保険者の不当な命の格差を解消しようとする提案の筈だが、「国民皆保険」は社会主義的であり、財政膨張と非効率を招くとアメリカの医薬メジャー利権の保守ロビイストや政界の主流派からはこれまで遠ざけられていた。

バーニー・サンダース
バーニー・サンダース

 ところがこの提案こそ逆に年間数千億ドルもの節約を可能にし、数万人の命を救うことになるという研究結果が発表された。
 イェール大学とフロリダ大学、メリーランド大学の研究者が合同で行った研究がそれで、米国医療保険制度が、政府運営による完全な国民皆保険に移行すると、年に推定約4500億ドル(約47兆円)もの巨額なコスト削減になるというのだ。

 2月15日医学雑誌「ランセット」に発表されたこの研究は国民皆保険制度への移行で、年に約6万8000人もの命が救えるとしている。
 研究者らは国民皆保険の導入で、米国医療費全体が年約13%削減されると同時に、低所得世帯への医療アクセスが改善されるとしている。

 米国では約4000万人が医療保険とは無縁で、さらに4100万人が適切な医療保険に加入できていない。全体で見ると、総人口の実に約4分の1がニーズに見合った医療保険に対応できていない。

高すぎる医療コスト

主要国医療費のGDP割合

 この研究によれば、「雇用主と加入者による保険料と政府の資金で賄う」現在の制度よりも、国民皆保険制度の方が少ない財政支出で全体のコストをまかなえるという衝撃的結果が出たのだ。

 米国の一人当たり医療費は世界のどの国より高いことも指摘されている。これはサンダース候補が皆保険制度の議論でよく言っていることだ。
 〈メディケア・フォー・オール〉が適切に運営されるなら、国の医療費を節約できる可能性が高いと専門家は口を揃える。

 サンダース候補はこの研究を絶賛し、自分の提唱する医療保険改革は「人権としての医療」を保証する最善策だと付け加えた。「労働者の家計負担を数千ドル減らし、年に何万人もの死を防ぐことになるだろう」と、サンダース候補は語る。

 「製薬業界や医療保険業界支配者は気に入らないかもしれないが、私が大統領になったら、こういう連中の強欲は終わりだ。私たちは国民皆保険を達成する」として、若者層を中心にこれまで大きな草の根的ブームを起こしてきたのだが…。

医療支配者からの強い抵抗が

トランプ大統領

 民主党の誰が大統領になってもな医療制度改革案を成立させるのはまったく困難な道のりだ。穏健な民主党員でさえ、国民皆保険制度を支持することに不安を抱いている。

 トランプを筆頭に共和党は長い間、国民皆保険制度への移行をめざす左派の動きに抵抗している。
 前のオバマ大統領時代に成立した医療保険制度改革法(オバマケア)でさえ、トランプは代替法案を導入することなく制度そのものを廃絶しようとしているからだ。

 医療と命をめぐる大衆の怒りがいつの大統領選挙で具現化するのか…米国の「闇」はまだ深すぎる。


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