惨事便乗型資本主義 ― その正体 岩波書店
『ショック・ドクトリン』のサブタイトルThe Rise of Disaster Capitalis〈惨事活用型資本主義の勃興〉という言葉こそ、実に本書の内容を表す。

戦争と言う人災や、津波や台風のような自然災害、政変などの危機につけこみ、あるいはそれを演出し大衆が茫然自失の間に、およそ不可能と思われた過激な市場経済変革を強行する連中がいる。
ショックを利用した教義(ドクトリン)を振りかざし、主に米国発の世界支配企業が画策する暴力的謀略的政策…それをカナダ人女性ジャーナリストのナオミ・クラインは、『ショック・ドクトリン』とし、現代の最も危険な思想と喝破した。
その一派の理論的基礎は、シカゴ大学経済学者M・フリードマンに発している。
大衆の唱えるケインズ経済学に反対し、徹底した自由市場主義を主張した野心家フリードマン。投資家の利益を代弁するシカゴ学派は、「大きな政府」や「福祉国家」を執拗に攻撃し、国家の役割は警察と契約強制以外はすべて民営化し市場に委ねよと説いた。
民衆を震え上がらせ抵抗力を奪うためこの一派は重大事件を綿密に計画し、急進的な改革を強行するために危機を作り利用して来たとクラインは事件系列的に精緻に証明して見せた。
小泉・竹中の「構造改革」なる社会破壊と、2011大震災後の…そして2020コロナ騒動渦中の日本でこそ、あらためて広く読まれるべき書である。
本書はドキュメンタリーとして映画化もされている(日本版サイト)
