韓国総選挙の分析 キャンドルの民意(4)
今後の課題~文政権のこれからの動向に注目を

韓国総選挙の分析 キャンドルの民意
総選挙で圧勝した文政権のこれからの動向に注目

民主化後には例のない巨大与党となった文政権

前号からのつづき
 与党・共に民主党指導部は今回の大勝利に「恐ろしさを覚える」としつつ、「重大な責任を感じる」として、結果を謙虚に受け止めるとしている。 

コロナ対策のより一層の徹底

 今後の課題として第一に、韓国政府は当面、現在行っているコロナ対策をより徹底し、新型コロナを封じ込め、打ち勝っていかねばならないことだろう。

 民主労総は4月16日の中央執行委員会で、全組織を緊急体系に転換し、中執を「解雇禁止、雇用の保障、社会安全網の拡大のための緊急闘争本部」としてスピード感をもって対処する一方、他の社会市民団体に呼びかけるとしている。
 また、政労使による緊急協議を行うこと、社会的弱者保護のために組合員カンパを呼び掛けている。

 ちなみに民主労総は、今回の選挙で民主労総組織内候補を発表、選挙区36人、比例8人、支持候補65人の合計109人を推薦した。
 筆者が調べた結果、当選者は正義党比例の2人で公共運輸労組出身だ。

 韓国労総も4月13日に「コロナ19雇用危機申告センター」を発足させ、相談業務を強化するとしている。
 韓国労総は今回の選挙で、与党・共に民主党と政策協定を締結し、共同歩調をとってきたが、16日の発表によると、「労働尊重実践の国会議員」とした共に民主党66人のうち51人が当選、そのうち5人が組織内候補だったとのことだ。
 しかし、韓国労総の副委員長経験者など3人は未来統合党から出馬し当選している。

 このようなことを受けて、4月19日の聯合ニュースによると、韓国政府も早急に「コロナ雇用安定政策パッケージ」を発表するという。

 その内容には中小企業への休業手当の割合を90%まで引き上げることや、雇用保険に入れないでいるフリーランサーや請負型労働者などへの支援強化にのりだすという。最近、国民皆保険制度のように雇用保険を全国民的なものにすべきだという声が出ていることを考えると、今後ターニングポイントになるか注目されるところだ。

 インターネット・メディア『民プラス』は、「韓国でコロナ危機を解決する力は、個人利己主義や民族排他性、集団嫌悪ではなく、共同体的協同と団結、連帯にあることを世に示した。これがヨーロッパやアメリカで失敗したのに対し、韓国が成功した理由だ」としつつ、「近づく経済危機をむしろ政治経済のパラダイムを再構成する契機にすべき」としている。

社会の民主化・経済など国家改革の推進

 第二の課題は、守旧派の抵抗に立ち向かいキャンドル革命の求めた改革を進められるかだ。

 経済正義実践市民連合が4月16日に行った「選挙評価座談会」で、参加したオーマイニュース記者は「与党が勝ったので、むしろ改革措置を何も行わないだろう」とし、経実連のソウル大教授のパク政策委員長も同意した。

 反面、トクソン女子大政治外交教授のチョ政治改革委員長は「今までは国会で野党に足を引っ張られていたが、もうその口実は通じなくなった」としながら、「今後は力強い改革に進むのではないか」と発言、市民社会が強い圧力を行使すべきだとしている。

 保守派は今回の選挙で打撃を受けたが、今後も文政権に様々な形で抵抗するだろう。
 小選挙区で勝利したとはいえ、政党別得票率をみると、先の表のように未来33.84%、民主33.35%となっていて、与党系の開かれた民主党や革新系の正義党などを含めてようやく48%だ。

 保守系の未来統合党内部では選挙の敗因をめぐって、既に責任転嫁の内輪もめが始まっており、なかなか体制を立て直せないでいる。
 しかし、検察や高級官僚、軍部、マスコミなどの韓国保守の根は深く、最近続いている「太極旗デモ」と陰に陽に連携しながら、文政権の改革を必死で阻止していくだろう。


 前述の『民プラス』のいう「汎民主進歩勢力」による「民主多数派国会」が今後、どのように改革法案などを可決させ、韓国社会を変えて行けるのかは最も大きな課題となる。

平和外交の課題

 第三に、朝鮮半島の平和と南北統一への動きの加速化だ。間もなく4月27日、南北首脳会談・板門店宣言2周年記念になるが、コロナ状況のもとで文在寅政権がどのように迎えるか注目したい。

 第四に、外交の課題。今回の勝利で、文在寅政権は自信をもって、既存の政策を進めるだろう。

中朝韓米首脳写真

 米国トランプ大統領が今年初め、韓国側に在韓米軍の費用負担を5倍に増加させろと圧力をかけ、韓国では反発の声が出て「米軍はいっそのこと、出て行け」というスローガンが飛び出した。この国防費負担金増額をめぐる韓米交渉がずっと行われていたが、3月末から4月初めにかけて11回目の交渉が行われた。

 一時マスコミでは1.5倍増で日韓両政府が妥結したと報じたが、翌日大統領府はこれを否定したので、交渉は続く模様だ。また、米軍が基地で働く韓国人労働者に対し、4月1日から無給休職を言い渡して大きな問題となっており、「公平な米韓関係」を求める民意はさらに高まるだろう。

 日本との問題は先に書いた「親日政治の弊害清算」運動の中で勝利した文政権なので、当面はこれまでの方針のまま進むだろう。
 今回の選挙では30年間、日本軍「慰安婦」問題で市民運動の現場にいた韓国挺身隊問題対策協議会のユン・ミヒャン(尹美香)代表が、共に民主党比例で立候補、当選を果たした。共に民主党の「ふらつく立場」をしっかり牽制するに違いない。

 ただ、今後は日米保守勢力による文政権へ圧力も加重されると思われるので、これらにどう立ち向かえるかも課題となるだろう。

第五の課題「進歩勢力」の動向 

 今回、議席を獲得した正義党も当初予想していた二桁に及ばなかった。

 正義党のシム・サムジョン代表は選挙区で当選、進歩系議員としては四選を果たしたが、正義党が選管に届け出た候補者数は選挙区75人、比例29人で、当選は両方で6人、得票数は9.67%だった。民衆党は選挙区59人、比例8人の候補者を立てて、当選ゼロ、得票数は1.05%だった。

 文政権の改革を後押しするためにも、また労働者、市民中心の政策を推し進め、東アジアの平和を構築するためにも、今後の足場固めが必要だろう。


 コロナ事態の中で初の「全国選挙」、初の18歳の投票、1996年以降最高の投票率、憲政史上初めて女性議員最多の57人19%、民主化以後に初めて180議席以上の巨大な与党の登場ということで「初」の多い(『ニューシス』)選挙だったが、日本からも韓国の改革の行方に注目しよう。

(2020年4月19日記、 日韓ネット・かもめ)

全文はこちら
 韓国総選挙の詳細分析(日韓ネット・かもめ)より


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