経営が崩壊するトラック業界と産業民主化の必要性

愛知連帯ユニオン

佐藤 隆(愛知連帯ユニオン)

1、崩壊するトラック運送経営

 トラック産業は、産業規模にして約12兆円、トン×キロベースで海運・鉄道・航空を退けて輸送業界の第1位の約51%を占め、約84万人の運転手(全従業員は約187万人)を抱える。そして、その企業数の99%が中小零細企業という特徴を持つ。
賃金低下、長時間労働、失業
 ところが、現在、この中小運送事業者が軒並み経営危機を迎えている。「全国トラック協会の経営分析 平成24年度版」によると、貨物運送事業者の営業利益率は、平均で何とマイナス2・1%(平成23年度はマイナス1%)、年間売上2億円の会社なら420万円の損失が平均的に出ている状況で、事業者の62%が赤字経営を拡大しているという。リーマンショック前の2007年に1社平均2億696万7000円あった営業収入は、2012年に1億8016万1000円へ約13%減少している。

 このような状況を背景に、トラック労働者へは、賃金低下、長時間労働、仕事の喪失という現実が襲いかかっている。

2、貨物運送事業の規制緩和が原因

愛知連帯ユニオン トラック事業者の経営危機の根本要因は、1990年物流2法(「貨物自動車運送事業法」「貨物運送取扱事業法」)の施行による規制緩和である。

 貨物自動車運送事業法の施行によりトラック運送は「免許制」から「許可制」へと規制緩和され、5台の営業車を用意して届け出れば、基本的に貨物自動車運送業の許可が下りるようになった。その結果、規制緩和後の20年で事業者数は1・5倍となり、その後は参入と退出(倒産等)が拮抗、現在は退出が参入を上回る事態となっている。規制緩和は、同時に、それまで運輸大臣による認可制であった運賃料金が事前届出制となり、2003年以降はそれもなくなって自由化された。
 結果、過当競争で運送価格の下落が激化、平成20年度時点で3兆2000億円の規制緩和利用者メリット(=運送事業者デメリット)があったとされている。

3、大手運送会社が下請け運送会社を収奪する仕組み

トラック産業 貨物運送取扱事業法によって、それまで規制されていた取次(自分は実運送をせず、他の機関を利用して輸送受託をすること)が容易になった。大手運送業者は、利益性の低い実運送を中小零細の下請けに回すことで運賃値下げの影響を回避した。

 端的には、荷主(製造メーカーなど)から輸送の仕事を請け負い、下請けの運送会社に振り分けるだけで、運賃の1割ほどが手に入るような仕組みになっている。二次・三次下請けの零細運送業ではさらに中間の取次料が差し引かれ(各階層で10%程度と言われる)、元の運送価格の6割程度の運賃になってしまうこともある。

 輸送部門・倉庫部門・在庫管理・出荷管理と以前はそれぞれに専門化されていた業務を、3PL(サード・パーティ・ロジスティクス―第三者)として荷主企業の物流活動を包括的に請け負い、マネージメントを生業とする企業が横行している。かつて「水屋」とさげすまれた業態が、大手物流企業の主要な業態になっていると言っても過言ではない。

4、輸出大メーカー中心の産業構造

愛知連帯ユニオン アベノミクスの金融緩和により、円安が進んで自動車産業・家電業界など輸出企業が大きな利益を上げる一方、燃料価格が高騰しても運送価格は上がらない構造となっている。平成15年度に1リットル64円だった軽油価格は平成26年にはその約2倍に跳ね上がっているが、燃料サーチャージを受けられない事業者は90%を超えている。

 トラックの車両価格は、社会的規制を理由に装備品が増え、特に2005年の排気ガス規制で1989年の当時の2倍となり、2010年には新たな排気ガス規制でさらに価格が上昇している(平成24年3月全ト協―環境省ヒアリング)。

 トヨタグループが主な出資者となる愛知県の大手運送会社や日立製作所グループの日立物流など、荷主である大メーカーが運送子会社を作り、物流業界を支配する構造となっている。その下で、実運送を担う運送事業は、各種税金や高速道路料金の負担も増え、先にみたように実運送をすればするほど赤字が増える状態に転落しているのである。

5、事業者に利益がでる賃金では労働者は生活できない!

 トラック産業は労働集約型産業と言われ、人件費(賃金と法定福利費の会社負担分の合計)は40%弱とされる。だが、これではトラック労働者の生活は余りに苦しい。
連帯ユニオンへ
 1人の運転手が運搬する貨物の月の運賃が100万円あったとして、その40%から法定福利費の会社負担分を除けば、賃金は35万円程度であり、手取りは30万円を切る。これでは家族や住宅ローン(住宅ローン返済世帯は全産業平均で単身世帯を除いて約37・4%、月の返済額は平均9・4万円)を抱えた労働者は生きていけない。だが、実際は、1日5万円になる運賃料金は下請け業者は収受できず、月に100万円を売り上げる仕事は特殊な仕事か、超長時間労働以外は存在しない。

 したがって、現場では、事業者に利益が出る賃金では労働者は生活できず、労働者が生活できる賃金を支払えば事業者は赤字になるという対立の中にある。したがって、労働者と労働組合は、使用者に生活できる賃金を求めて闘争しつつ、トラック業界の産業構造の変革・民主化の課題に向き合わなければならない。

6、「残業ゼロ法案」先取りする労働現場の現実

愛知連帯ユニオン このようなトラック業界の経営環境の中で、労使とも長時間労働を志向せざるを得ず、時間外賃金の未払いが大きな問題になっている。

 ここでブラック士業(経営弁護士や社労士)たちが考え出したのが、「変動残業制」や「みなし残業制」である。「変動残業制」では、「運行手当」など変動する手当が、時間外賃金が増えるとその分減少する、したがって、実質いくら時間外労働が増えても賃金総額は変わらない。「みなし残業制」では、「距離手当」や「勤続手当」など、本来時間外割増賃金と性格の違うものを就業規則で「時間外割増賃金見合い」とされ、実際の時間外割増賃金の支払いを回避する。

 これらは、これまでの固定時間外手当に関する裁判判例(労使の明確な合意がある、所定内賃金と時間外賃金が明確に区別できる、労基法37条をクリアしていることを検証できるという基準)からして違法性が強いが、司法の反動化の中で、合法と認められているケースもある。また、拘束時間の中に随時休憩時間=賃金を支払わない時間を設けるというやり方も増えている。
 「残業代ゼロ法案」は既に労働現場では現実化しており、力強い労働運動の反撃が必要とされている。

 トラック労働者が健康的な労働時間で文化的な生活を確保するためには、企業の壁を越えて産業別労組を形成し、中小事業者と連携して適正な運賃と賃金を収受できるようにしなければならない。

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