「ソウル宣言」の精神をわが国に(その4)サッチャー・競争至上主義、民営化と滴下理論の破綻

サッチャー・競争至上主義、民営化と滴下理論の破綻

「安い工賃求め」世界をうろつくドル経済

丸山茂樹氏講演「協同組合の可能性と未来」より

【前回の骨子】
世界を席巻していたグローバリズム失態のツケである2008年・リーマンショック。そのあらゆる国家を食い物にする経済的怪物を考え直す契機に、と考えられたのが2012年の国際共同組合年だったのだが…。
ウオール街占拠デモ

アメリカ・ウオール街占拠行動

 (前回からの続き)現在アメリカのドルは、あるいは日本の円も、実際に生活に必要なお金の4倍以上印刷されているんです。
 お金をどんどん回して銀行に証券会社に回していけば、それはお金がぐるぐる回って行くにつれて「みんな購買意欲が高まって景気が良くなるだろう」というのが、いわゆるマネタリー政策でありまして、これが1980年代にレーガン大統領とかサッチャー首相とか、日本の中曽根首相がやった政策なのです。

 でもなぜ皆さん、レーガンやサッチャーや中曽根が勝ったのでしょうか?
 今また似たような事が起こっているのですが、「一体どうしてだろう」と。それは実際の人間の生活に必要なものを必要に応じて生産して、それをどこか一部の人間が得するのではなくてみんなで出来るだけ協力し、地域社会の共存を図っていこうというのでは「だめだ」という、キャンペーンが勝ったのです。

 具体的に私も調査に行ったことがあるんですけれども、イギリスなどでなぜサッチャーが勝ち、しかも長期政権になったかというと、サッチャーの演説とか本を読むとこうなっているんです。「イギリス病」といわれたイギリスの停滞はなぜ起こったのか?それは、「みんなが既得権益に甘えて働かなくなったからだ」と。どうして既得権益に甘えて働かなくなったか、これは、「鉄鋼も自動車も造船も炭坑も電気も鉄道もみんな国有化して、みんな公務員になったから彼らは働かなくなったんだ」と。
 怠ける。ちょっときついことを言うとストライキばっかりやる。だから民営化しろと。激しい競争の中に叩き込んだら一生懸命に働くと。良い物を提供するところは残る。悪い物を効率を悪く作るところは潰れる。それで良いじゃないかと。良い物を作る、効率的に作るものが残ればイギリス病は無くなって日本みたいなところに負けないんだと。かつてはイギリスとかスウェーデンというのは世界の造船大国だったのに日本に負けてしまったじゃないかと。だから、「造船も鉄鋼も石炭も鉄道もみんな民営化すれば発展するんだ」ということだったんですね。それでサッチャーが長い間、労働党政権から奪い取って「競争競争」とやったんです。

 彼らのもうひとつの理論はトリクル理論と言いまして、お金持ちがたくさんお金を儲けて大企業が儲けたら中小企業にそれが及んでくる。中小企業が儲かったら零細企業にも及んでくる。零細企業も少し豊かになったら最も貧しい人たちにもそこら辺の小さなお店の人たちも路地裏の家族経営のところもやがて潤いが及んでくる、というトリクル理論。滴下理論というんですな。しずくが垂れてくる理論。
 ところがですね、皆さん経験されているように、60年代70年代までは確かにそういうことがありました。ところが、グローバリゼーションが進むにつれて、それが少なくなったり無くなってきたのです。つまり、安い物を求めて世界中に資本が駆け回るようになった。例えば、日本で作るよりも中国で作った方がいい。韓国で作った方がいいと。韓国は私は3年ぐらいソウル大学に留学したことがあるのですけれども、ソウルで見たことはですね、日本の企業がどんどん逃げていくのです。中国やベトナム、カンボジアへ。韓国で作るよりも中国の方が半分でコストが済む。ベトナムだったら3分の1だと。

■増加する外国からのお嫁さん

 話が余談になりますけれども、韓国の農村に行きますと外国人のお嫁さんがすごく多いんですよ。私が政府の役人に聞いたら、もう3分の1が外国人のお嫁さんだと。以前は中国の韓国系の人間であったり、フィリピンだったり、バングラディッシュだったりしたんだけれども、今は圧倒的にベトナムからのお嫁さんが農村で多いと。

 つまり、韓国の企業がベトナムに進出して札ピラをはたいているものですから、「韓国はすごく良いだろう」ということで、嫁不足の韓国に来まして。韓国の農村を歩きますと、どの市町村に行っても、変な話ですが「多文化共生課」という課があるんです。「多くの文化が共に生きる課」というのがあります。「何をやるところですか?」と聞いたら、「いやぁ外国人のお嫁さんが多くて差別される。その間に生まれた子どもが悲しい思いをする。自殺したり子どもを連れて自分の母国に帰ったりすることも起こってるんで、そういうことがないようにイベントを組んだり、彼らを激励したり、お料理教室とかいろんな楽しいことをやって一緒に生きて貰う仕事をしているんです」ということでしたが。

 話が逸れてしまいましたが、要するに大企業が儲かれば中企業、下請、孫請もそれなりに儲かるという仕組みがグローバリゼーションによって、またマネー資本主義によって非常に世界秩序が乱れている。

 皆さんの方がご存じだと思いますが、一時期、石油が猛烈に上がりましたね。漁民たちが「もう漁業をやらない」と言ってストライキをしたことがあるじゃないですか。それから穀物が無くなった時がありました。トウモロコシなどをアルコールにしてエネルギーに使うと言ってワーッと高騰した。いま金が上がっているでしょ?一頃の3倍だというんですが。あれは何かというと、実際の社会に必要なマネー以外のお金が利益を求めて世界中をうろついているんです。
次回につづく

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