汚染された砂川最高裁判決の 再審請求に起ち上がりました!/土屋源太郎

土屋源太郎(伊達判決を生かす会・砂川事件裁判元被告)

1・米軍基地拡張に反対する砂川闘争とは?

砂川事件の再審請求後、記者会見する元被告の土屋源太郎さん(右)ら 6/17、東京・霞が関の司法記者クラブで

砂川事件の再審請求後、記者会見する元被告の土屋源太郎さん(右)ら=6/17、東京・霞が関の司法記者クラブで

 戦前の陸軍立川飛行場は農民達の多くの犠牲によって作られたのです。 
 1945年、米軍が進駐して立川米軍基地にするため所有者の承認どころか通告もなしでブルドーザーと銃剣で拡張工事を行いました。

 1950年代、米ソ冷戦の激化により爆撃機、軍用機の高速化・大型化が競われ、基地滑走路の延長が必要となりました。1955年、基地拡張のため土地強制収用の通告が砂川町(現立川市)になされました。町議会は直ちに反対決議を行い、町をあげて「基地拡張反対同盟」を結成しました。1955年~57年、3度にわたり収用のための土地強制測量に反対する闘いが行われました。砂川闘争です。「土地に杭は打たれても、心に杭は打たれない」。地元の人たちの心意気です。

砂川町民に襲いかかる機動隊

砂川町民に襲いかかる機動隊

 1956年10月の砂川の闘いは総評、全学連を始め21の支援協ができ、延べ1万人を超える人々が闘争に参加しました。機動隊の暴力的な行為により1000人に及ぶ負傷者を出したが、測量は中止されました。

 1957年7月、基地内土地所有者が返還訴訟を進めたため、基地内の強制収用が行われました。これに反対する闘いが労働者、学生など数千人によって展開されました。その闘いの中で300人くらいの人が基地内に3~4メートル進入しました。所有地が基地内の土地なのですから進入しての抗議は当然のことでした。9月22日、基地内に進入したとして逮捕され、安保条約に基づく行政協定に伴う刑事特別法違反として労働者学生7名が起訴されました。
 
 そして、第一審東京地裁の、あのすばらしい伊達判決が出されたのです。
 この判決を出すにあたり伊達裁判長は、内外に多大な混乱をおこすだろうとし、辞表を懐にして強い決意をもって臨んだそうです。また彼は、最高裁で、差し戻しに反対する数人の少数意見があるだろうと考えていました。しかし、実際には彼の予想に反し、裁判官15人全員が一致した判決を下しました。そのことに彼は絶望し、司法の独立に疑問を抱かせることになり、裁判官を辞めるきっかけになったとのことです。(当時の左陪席裁判官・松本判事談)

2・砂川事件裁判一審無罪・最高裁、一審判決を破棄!

伊達秋雄東京地裁裁判長

伊達秋雄東京地裁裁判長

 砂川裁判は駐留米軍が我が国憲法9条に違反しているかいないかの憲法裁判でした。
 1959年3月30日、東京地裁の判決は、
「アメリカ軍がわ国内に駐留するのは、日米両政府の意見の合致があったからであって、アメリ力軍の駐留は、わが国政府の行為によるものであり、わが国政府の要請とそれに対する施設、費用の分担その他の協力があって始めて可能となるものである。わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的でアメリカ軍の駐留を許容していることは、指揮権や軍出動義務の有無にかかわらず、憲法第九条二項前段によって禁止されている戦力の保持に該当するものであり、結局わが国内に駐留するアメリカ軍は、憲法上その存在を許すべからざるものと言わざるを得ない」として、被告全員を無罪としました。(伊達判決)。

 60年安保改定交渉を進めていた日米政府はこの判決に驚愕し、この判決を早期に棄却させる手段として、検察は最高裁に直接上告する「跳躍上告」を行いました。最高裁の審理は田中耕太郎裁判長のもとで短時間のうちに行われ、1959年12月16日「一審判決を破棄し本件を差し戻す」判決が出されました。判決の理由は
「我が国の防衛力の不足を補うため安保条約に基づき駐留している米軍は、我が国に指揮管理権もなく外国軍隊であり、違憲無効とは認められない」「安保条約のごとき高度の政治性を持つものは司法裁判所の審査になじまない」(統治行為論)。

 最高裁の憲法審査権を自ら放棄し、基地訴訟、自衛隊訴訟など、その後の憲法の司法判断に大きな障害となったのです。最近、厚木基地の騒音訴訟で自衛隊の夜間飛行禁止命令の判決が出されましたが、米軍についてはこれに触れないとしました。まさに、これがその統治行為論なのです。その後、差し戻し裁判で罰金2000円の有罪が被告全員に確定しました。

3・違法な最高裁判決と、田中裁判長とマッカーサー大使との謀議!

田中耕太郎最高裁長官

田中耕太郎最高裁長官

 一審伊達判決を破棄し、駐留米軍の存在を認めた最高裁裁判の審理中に日米政府・マッカーサー大使、田中耕太郎裁判長の謀議密約の実態を明らかにした公文書簡が、2008年から2013年にかけて研究者3名によりアメリカ国立公文書館で発見されました。
 私はこの事を知り、怒りと共に「米軍駐留は違憲とした伊達判決の意義をあらためて多くの人に知ってもらいたい」「アメリカ側に公文書があるならば、日本側にも行政文書がある」と考え、その内容の開示請求を行うこととしました。

 2009年、坂田・武藤の元被告を始め多くの闘う仲間と共に「伊達判決を生かす会」が結成されました。情報開示請求は外務省・法務省・内閣府・最高裁に4度にわたって開示請求を行いました。しかし多くの請求部分については「文書不存在」として不開示となり、異議申立てについても同じく文書不存在として却下されました。最高裁は異議申立てすら受け付けませんでした。

米公文書の公開で明らかになった田中長官の不正行為

米公文書で明らかになった田中長官の不正の数々

 このように国民に情報を開示することもせず、特定秘密保護法を強行成立させ、国民の知る権利を奪うだけでなく知るための開示請求活動をも法によって抑え込もうとしていることは許せません。アメリカの公文書によると、伊達判決が出された翌31日早朝、マッカーサーアメリカ大使と藤山外相が会い、大使は跳躍上告を示唆し藤山外相はそれに応じ、閣議にかけることを約束したのです。当事者ともいえるアメリカが日本の司法にまで介入したのです。

 更に許せないことには、田中最高裁長官が裁判長を自ら務め、最高裁裁判の審理中3度にわたりアメリカ大使・公使に密かに会い、この裁判は優先権が与えられているから早期に進められる公判日程を、被告弁護団に通知する前に、アメリカと日程の報告協議をしています。
 さらに伊達判決を破棄するため15人の裁判官の審理の取り組みについても話し、条約は憲法より優位にあるかについて取り組んでいるなど報告し、密議・密約を行っている事が明らかになりました。

 田中長官の行為は憲法37条が保障する「公平な裁判」に違反し、裁判所法75条の「評議の秘密の保持」を破る犯罪的行為です。このように中立公正を欠き汚染された砂川事件最高裁判決は無効です。

4・砂川事件裁判の再審請求を行い、免訴を求めるために決起!

6月17日に再審請求書を東京地裁に提出

6/17東京地裁に再審請求をする土屋源太郎氏ら元被告

 憲法37条に違反し、汚染され公正でない最高裁判決にしばられて開かれた、やり直し東京地裁の判決も憲法37条に違反する不公平な裁判であり、そこで有罪となったことは認められません。東京地裁は審理を行うべきでなく打ち切り免訴にするべきだと私共は考えています。

 そこで、私を始め元被告椎野氏、武藤氏、故坂田氏の長女和子さんの4名で再審請求を行うことにしました。今国会開会中の6月17日東京地裁に再審請求書を提出しました。代理人弁護士は吉永満夫氏が代表となり70名程の弁護団となりました。この再審請求が開始決定されることにより、司法の独立と中立公正が是正されると確信しています。

ペテン師か?ただの無知か?安倍首相のご都合主義的な詐欺解釈

ペテン師か?ただの無知か?安倍首相のトンでも解釈

 国会開会中の6月17日提出には安倍首相、高村氏、更に安保法制懇の答申で集団的自衛権の憲法解釈による行使のための法律のよりどころとして砂川最高裁判決を持ち出していることがあります。最高裁裁判では安保条約と憲法の審理を放棄していることでも明らかなように、集団的自衛権など一切審議されていません。まさに苦し紛れの詐欺的行為そのものです。国民をだます恥知らずの発言です。これらの発言を打ち破るためにも再審請求を提出しました。
 
 また安倍首相は5月15日の改憲で紙芝居のごとき絵によって紛争地域からおじいちゃん、おばあちゃん達を救出するためにアメリカの軍艦で行なった時に自衛隊はなにもできないと説明しました。これはとんでもない話で、もし地域紛争が起こり、邦人に危険が及びそうだとしたら、まず政府がやるべきことは民間機をチャーターしたり政府専用機を出したりして全員の救出と安全を確保することが政府の危機管理の責任であるのに、まさにあの発言は、自分の無能ぶりをさらけ出したものです。そして、国民をだます話です。

土地に杭は打たれても心に杭は打たれない!

土地に杭は打たれても心に杭は打たれない!

 集団的自衛権の憲法解釈による行使、これを許したら、日本国憲法の立憲主義、基本的人権、平和主義を否定することになり、憲法を閣議で勝手に解釈できたら、まさに独裁国家になります。「平和で安全のため」として安倍内閣は財産と生命を守るため集団的自衛権を行使し、アメリカ軍と共に自衛隊員が血を流す。こんな馬鹿にしたことは許せません。「戦争のできる国家にする」ことは絶対に阻止しなければなりません。
 
 私たちの再審請求もその闘いの一つだと考えています。これらの闘いを進めるためにも、左翼、リベラルの構築が必要です。それには労働組合、市民運動、それぞれの立場を尊重し、党派を超えた闘いを手を組んで根気よく続けることだと考えます。
 集団的自衛権の行使、特定秘密保護法、武器輸出禁止三原則の廃止、辺野古新基地建設、アメリカ追随のTPP、原発再稼動、原発輸出、弱者を苦しめるさらなる増税等、私たちの闘う課題はたくさんあります。
 今起ち上がらなくていつ起ち上がるのですか!(了)


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