連載(寄稿)(その64)
協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史〇37

協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史 近畿生コン関連協同組合連合会専務理事 増田幸伸

連載第64回

■産業政策闘争と協同組合(2)

関西生コン支部のミキサー車デモ

関西生コン支部のミキサー車デモ

 関西地区生コン支部(関生支部)労働運動で他に比類なき大きな特色は、「産業政策闘争」と呼ばれる独自の思想性と行動にある。

 日本の産業構造は、独占資本(大企業)が下請中小企業群を支配下に置く。独占資本が当該産業の価格・技術・品質管理・人材・資金などを独占的に掌握・決定し、中小企業を従属化に置く。セメント・生コン産業や建設産業において典型的である。

 一方で、戦後改革・経済民主主義の一環として、中小企業等協同組合法の制定がある。法は(法律の目的)第1条「この法律は、中小規模の商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う者、勤労者その他の者が相互扶助の精神に基き協同して事業を行うために必要な組織について定め、これらの者の公正な経済活動の機会を確保し、もつてその自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図ることを目的とする。」と定めている。

 中小企業が団結して事業協同組合を結成し、大企業と対等取引できる環境を作る。しかし、協同組合を作れば自動的に力を持つものではない。事業の理念や戦略・方針、団結やリーダーシップの質、事業の運営能力や実務力が問われる。そして、何より大企業や競合する協組に入らない同業他社との対決において、実態的には現行の法制度は協組に圧倒的に不利となっている。事業協同組合運動が成功するには、重要なことなのにほとんど指摘されていないが、協組を構成する中小企業の横断的な労働組合の規制力・実践力が不可欠なのだ。

 中小企業の労働組合は、個別中小資本と一面において賃金労働条件をめぐって闘う。しかし、もう一面で、産業民主化、独占資本の産業支配を覆すために、弱者である労働者と中小企業が共闘する。
 労働者は団結して労働組合を作る。中小企業も団結して協同組合を作る。両組織の共闘の力が、大企業との対等取引を可能にする。

 たとえば、一生コン工場が、セメントメーカー(太平洋セメント、住友大阪セメント、宇部三菱セメント、トクヤマ、麻生セメント)、実際は販売店に、セメント代の値上げには応じられないといえば、セメントが入ってこないだけである。また、ゼネコン、実際は商社・販売店に、生コン販売価格をこれ以下では売りませんといえば、誰もその生コン工場の生コンを購入しないだけである。

 そこで、一地域の生コン工場100社が結集し、協同組合としてまとまった購入、まとまった販売をすれば、いくら大企業といえども無視できなくなる。対等取引条件が生まれる。しかし、そもそも中小企業のリーダーシップだけで、利害が錯綜する100社を結集し共同事業が展開できるのか、セメントメーカーが作った生コン工場が指導権を握らないか、ゼネコン・商社が工事物件を餌に一本釣りし分断してきても団結は保たれるのか。様々な妨害策動をはねのけられるのか。

 そこで労働組合の指導性と実践力が求められる。関生支部は、中小企業への説得と行動を通しての結集、セメントメーカー・ゼネコン・行政に対する説得や行動、政党や世論にたいする宣伝や提案を行う。それは生コン価格の適正化だけではなく、技術や品質や安全管理を担保する、安全安心のコンクリート構造物を社会に提供する運動としてもある。

 さて、こうした取り組みは1973年の春闘から始まっていく。中小企業14社との集団交渉が実現した。産業別労働組合として、各企業へ統一要求・統一交渉・統一行動を展開、背景資本でもあるセメントメーカーへの取組も含め、14社との集団的労使関係を進展させた。企業横断的な賃金労働条件の向上を勝ち取る。

 そもそも、春闘の始まりは1955年、総評傘下の日本炭鉱労働組合、日本私鉄労働組合総連合会、合成化学産業労働組合連合、日本電気産業労働組合、全国紙パルプ産業労働組合連合会、全国金属労働組合、化学産業労働組合同盟、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会の8つの労働組合が「共闘会議」を結成、賃上げ要求を行ったものとされている。企業別労働組合であるために、個別的労使関係の交渉力の弱さを補うために編み出した戦術である。
 73春闘以降、関生支部は総評・春闘のレベルを超えた成果と産業政策の新たな地平を踏み出した。

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