8・15と集団的自衛権 by 来栖宗孝(元東海大学文明研究所教授)

八・一五と集団的自衛権
来栖宗孝(元東海大学文明研究所教授)

東京大空襲(1945)

東京大空襲(1945)


 六十九周年となる八月一五日が近付いている。東京、大阪、名古屋、横浜等の大都市をはじめ、県庁所在地都市から中・小都市にいたるまで、米空軍B29戦略爆撃隊の焼夷弾爆撃、最後に広島、長崎への原子爆弾投下により、日本の大多数の都市が炎上、焦土と化したことを記憶している人は極く少数になった。
 家を焼かれ、衣なく、特に食なく貧困、窮迫、精神的には不安、混迷に陥った生活も、二世代以上経った現在忘れ去られている。

 日本人の健忘症は、福島第一原子力発電所の大事故についても繰り返されている。
 現在でもメルトダウンした原子炉直前には放射能が高くて近付けず実情は不明である。そこから出る放射能物質と発電所地下水の汚染水は出放しで無限拡散に近い。放射能汚染地域から避難した十数万の人々の生活のめどは立っていない。
 これら当面の課題を健忘したかのように、安倍政権は、原発再開及び同輸出企図、特定秘密保護法制定、国家安全保障会議設置に継ぎ、集団安全保障については閣議だけで決定するという絵に描いたような右翼ナショナリズム政策を強行している。ついでに消費税増税、しかし事業税減税とロコツな資本・企業奉仕だ!

 米国の軍事行動に協力して軍事行動を採るというのならよろしい。先ず第一に、首相はじめ閣僚、政府与党の幹部以下賛成票を投じた国会議員、高級官僚自らか又はその子弟が真っ先に軍事行動の、正しく言えば戦場の第一線に出動したまえ!近代戦では、いつも激戦地に送られ、戦病傷死するのは庶民だけである。泣くのは庶民の親、庶民の妻、恋人だけであることは六十九年前に日本人は経験したはずである。

幼稚で支離滅裂な安倍の論理 それに安倍氏の集団的自衛権必要性の例示の幼稚さだ。
 邦人を乗せた米艦船が(仮に、中国から―私)攻撃されたらこれを助けるため武力行使をしてはいけないのか、だと。笑わせるな!この場合、すでに戦争がはじまっているから邦人の輸送なのだ。(米中戦争?中国は米国とは戦いませんよ。)それに米艦船に邦人を乗せるなどありえない。第二次世界戦争中、日米両国はそれぞれの敵国人(日米人)を交換船で輸送、記憶ではマダガスカル島の港で交換し合った。交換船を攻撃するほど国際法無視をする国こそ世界中から敵とされますぞ。

 米国攻撃のミサイルをそのまま見過ごすことはできない、これを我が方が撃墜する?
 結構、結構。どこの国が、例えば北朝鮮がするというのか。国民全員を喰わせることもできない独裁小国が米国にミサイルを撃ち込むというのか。子供じみた漫画を示すとは国民を馬鹿にするにも程がある。この安倍設例を一つ一つ批判しない日本のマスコミも馬鹿げている。中国、北朝鮮を仮想敵国としてこれが米国と戦うときには日本も「集団的自衛権」の発動として戦うという仮定そのものが馬鹿げている。両国ともその内部事情からして戦争など発起できないのは明らかではないか。

 結局、安倍の集団的自衛権の発動というのは、経済発展のため産軍複合体を強化し軍需工業を増強し、これを梃子に内外に経済発展させようとすることに帰結するのではないか。しかし、これは昔の日本やヒトラー・ドイツ、近くはアメリカのヴェトナム攻撃等のやったことで全世界を敵に廻してしまったのである。

 安倍政権の政策はまったく逆転している。大事なことは外交努力が先ず第一番の仕事である。有事・軍事行動にならぬための外交が先である。特に、中国、韓国、北朝鮮はかつて我が国が軍事占領した国で彼らはそれを忘れていない。アジア、特に北アジア協同体とまではいえぬとしても差し当たり、北アジアの平和・協力こそ第一の外交目標である。

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