震災3年後の南三陸町を訪ねて(下) – 『黒い矢じり』

大平 達郎「復興・協同」通信 No18 (2014・6・19 )前号からのつづき

3・ 自然の大循環の崩壊

穏やかな海洋 「50 年前の海に戻ったようです!」この言葉は何を意味するのか!そう!地球も生きているのだ!人はこの世に生を受けた瞬間から死にむけてのカウントダウンが始まる。地球も誕生の瞬間から地球崩壊に向けてカウントダウンが始る。

 2600万年に1度、地球上の生物は絶滅に瀕するという。人間の気がつかない場所で動かないと思っていた穏やかな現実が実は刻々と破壊され変化し、鋭いナイフで切り取ったような断層がマントルの地底へずりずりと崩れ去り飲み込まれて行く 、その歪みを解消する時がくる。膨大な歪み解消のエネルギーがM8 以上の巨大地震を惹起する。

 大津波は海底の大掃除をし、陸上の人間の作ったあらゆるものを破壊した。3・11の巨大地震・津波によって「神の領域」の核に手を染めて安全対策を怠った原発が爆発した。これが大気に、海洋に、放射性物質をまき散らした。核は人間のDNA を破壊する。

 核のゴミも処分できないでいる。このことは文明の崩壊を意味する。2600万年に1度、地球上の生物は絶滅に瀕するというこの自然のサイクルを待つしかないのだろうか。人間は天に向かって唾を吐いてしまった。人間消滅を覚悟せねばなるまい。

おわりに

 平穏な穏やかな海洋を眺めながら帰途についた。
kuyo 近江正人詩集『黒い矢じり』を私1 人しか乗っていないバスの中で声に出していた。

   博物館の陳列ケースの隅で
   一本の矢じりを見た
   四千年も前の縄文人の骨盤に
   突き刺さったまま出土したという

   説明書きによれば
   男の骨盤はひどくすり減っていて
   矢じりを腰に受けた後もしばらく重労働に耐えて生きたという
   今は 手のひらほどもない灰色の骨片に
   深々と食い込んだまま
   ほの暗い照明の下 矢じりは鈍く輝いている

   ガラス箱の底から
   男の小さな悲鳴が聞こえた
   どんな顔の戦士であったか
   どの部族との戦闘で射られたものか
   背後からふいに飛んできたこの矢は
   男の逃げ去る背中を嘲ったものだったか

   妻も子も 年寄りもいたろう
   いずれにせよ この男は
   足を引きずりながらしばらく生きて
   部族の長に再び使え 長の墓の土偶も焼き
   顔をしかめながら
   獣を追い 魚を捕り 女を抱いた
   ずくずくと化膿し 痛みを増す腰の不運に
   どれほどの夜
   男はうめき 戦いを呪い続けただろうか

   あれから四千年
   我々の歴史はそのまま戦の歴史であった
   矢じりが鉄砲の弾となり 砲弾となり
   ミサイルとなり 原爆となっても
   戦いの象徴であることに変わりはない

   悲観的生物学者によると 人間細胞のDNAは
   なわばり意識の遺伝子を抱え込んでいるという
   家を 部族を 国家を己がなわばりとして
   戦をしたがる闘争本能は
   すでに細胞深く組み込まれた
   我々の恐るべき自爆装置だというのだ

   人類の生誕の時より
   あの男の受けた黒い矢じりは
   神の与えた原罪のように
   我々の細胞深く突き刺さったまま
   四千年後の今も まだとれていない
   (近江正人詩集『黒い矢じり』土曜美術社)

 この詩は、原爆=原発爆発と人間の飽くなき欲望と縄張り意識が昂じて自爆に繋がって行くように感じさせた。3・11 の巨大地震・津波は神の警告ではないかと思う。犠牲者に深い祈りを捧げ、帰途についた。(了)

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