「ソウル宣言」の精神をわが国に(その6)ボローニャ・国家に先行した協同組合の存在

国家に先行した協同組合の存在

商業と自治概念が「大学」育むイタリア商業自治都市、ボローニャに注目

丸山茂樹氏講演「協同組合の可能性と未来」より

【これまでの講演骨子】世界を破壊する強欲なマネー資本主義への対抗軸として、様々な市民が自由に参加結合する協同組合による経済運営が今後の本道となるべきだ。その旗振り役の韓国ソウル市の他に世界各国では、協同組合自治都市ともいうべき著名な自治体がある。(関西・S)

シェア! (前回からの続き)日本と韓国が竹島の問題で首脳会談をやるかやらないかで争っているという話はもう毎日のようにやるのですけれども。韓国は日本以上に格差社会で厳しい社会の中で毎日20か30ぐらいずつ協同組合が出来ていて一生懸命です。ソウル市がコンサルティングをやったりしています。「こうやったら営業が上手く行きます。こうやったら役所の仕事が受注出来ます。ここにはこういう都市計画がありますから、そこに勉強に行ったらどうですか」と。

 つまり韓国のソウル市は協同組合というのは人々が自ら進んで協力しながら作るものである。行政はその活動がし易いように環境を整えてあげることであって、アドバイスしたり教育したりはするけれども、決定し、実行し、実際に仕事をするのは皆さん自身ですよ、ということですね。
 ですから、ぜひ私も全部翻訳もしましたし、雑誌で紹介もしてありますけれども、ソウル市、あるいはここに名を連ねているイタリアのボローニャとかカナダのケベック、そういうところに皆さんも注目していただきたいと思います。

 私は何回もケベックにもボローニャにも、もちろんソウルにも、マニラ、ケソン、フィリピンも参っておりますけれども、やはりどうやってこういうことが上手く行くんだろうなぁということを考えた場合に、企業経営というのはですね、生協みたいに物を仕入れて売るというのは比較的単純なんですよ。やっぱり物を作るには原材料が必要です。加工するには技術が必要です。販売するのも必要です。アフターケアも必要です。しかもそれが持続しなきゃいけない。2年か3年は上手く行ったけど、その後受注できないのではしょうがない。

 そこをどうやっていくかという、生産協同組合というのは消費協同組合と原材料というものとリンクしないと上手く行かないし、そういう一時的に困ったり、なかなかリンクするのが難しい時にフォローしてくれるような中間支援組織とローカルガバメント、地方自治体の環境作りというものが相またないと上手く行かない。じゃあそういうことをコーディネートしていくのは誰がやるのか?で、例えば非常に上手く行っているといわれているイタリアのボローニャの市長がこの間ソウルに来て、もの凄く胸を張ってですね、大いばりと言いますか大演説をぶったのですけれども。
ボローニャ地図
 彼は開口一番にですね、イタリアは非常に失業の多い国で、特に青年達の失業が多い国だけれどもボローニャでは「非常に少ないんだ」と。それから「平均賃金が非常に高いんだ」と。ボローニャにはフィアットのような、オリベッティのような巨大企業が無い替わりに中小企業が沢山あってですね、中企業といってももう大企業に近いですよね。400人とか500人とかいうようなそういう企業も沢山ありますから。要するに、賃金が高い、失業が低い、巨大資本が利益を独り占めするようなことをしない、それはなぜか?、それは協同組合と労働組合と政治家と地方政府が良い関係を作っているからだと。

 協同組合都市というのはそういうものなんだと。ちなみにボローニャというのはイタリアの真ん中にあるのですけれども、世界で一番協同組合の歴史が古いと言われているんです。もうルネッサンスよりも前ですから、中世、国家が出来る前から協同組合がある。

協同組合精神こそ、人を結びつける源

 どうしてかと言うと、あそこは商業都市で、ヨーロッパ中の商業の中心で、言葉が違うしルールが違うから商売をするためには法律が必要で、協同の法律をつくるためにはみんがまずラテン語を勉強して、違う国々の商人や仲買人や生産者や労働者がわかるような法律をために学校をつくる。学校をつくる人間が組合をつくって教授を雇ってきた。だから大学協同組合いうのがボローニャの最初だと。「国ができる前に協同組合ができたんですよ」と。

 実際にボローニャへ行ってみて、「へぇ」と思ったのですが、今でも大学教授は学生が選ぶんですよ。だから日本みたいに教授が威張ってないですよね。絶えず学生のニーズに応えないと不信任になってしまうということですけれども。行政も同じですよね。地区協議会というのがありまして、そこで直接民主主義といいますか、市のお金をどこにどういうふうに使ってるんだと。大きな企業に吸い取られたり、外国企業に持っていかれたりしていないか、地域のためにちゃんと使っているのか、というようなことを絶えず監視する地方自治というものと、自分たちで事業もきちんとやるいう協同組合がしっかりしていて、労働組合ももちろんある。

 まぁ、良いことづくめじゃなくて、ボローニャの市長も、「一時期、保守党に権力を握られました」と、「でも4年後に取り返しました」ということを言っていました。
 皆さん、今日は持ってきていないんですけれども、文春文庫という小さな本で『ボローニャ紀行』という本があるんですよ。これ、井上ひさしさんという去年(編集部調べ2010年没)死んじゃった劇作家です。(次回に続く

…………………………

井上ひさし

井上ひさし

井上ひさし(1934年11月17日 ― 2010年4月9日)日本の小説家、劇作家、放送作家。文化功労者、日本藝術院会員、日本ペンクラブ会長(第14代)、「九条の会」呼びかけ人。
【主な作品】(小説)「ブンとフン」「手鎖心中」「モッキンポット師の後始末」「吉里吉里人」。(戯曲)「日本人のへそ」「イーハトーボの劇列車」「國語元年」「父と暮せば」。(テレビ)「ひょっこりひょうたん島」「ひみつのアッコちゃん」「ムーミンのテーマ(作詞)」など多数。

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