連載(寄稿)(その67)
協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史〇40

協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史 近畿生コン関連協同組合連合会専務理事 増田幸伸

連載第67回

■産業政策闘争と協同組合(5)

76春闘勝利総決起集会 前号で説明した様に、産業政策闘争といわゆる「労使協調」(日本の大企業労働運動の特徴)とは大きく異なる。この違いは、高度経済成長破綻後の74・75年大不況による日本独占資本の大攻勢に対し、中小企業労働運動という限界を有しながらも反撃していくという労働運動の路線と、独占資本の産業支配にますます繰り込まれていく労働運動の路線との違いを表している。

 総評労働運動は階級闘争を基本理念とし、春闘や反戦平和運動、社会党支持を推し進め、社会に大きな影響力を有してきた。しかし、高度経済成長の過程で、とりわけ、74・75年の高度経済成長破綻後、民間企業への影響力をなくしていった。民間企業では企業主義的労働運動が支配的となる。

 さて、関生支部は73年春闘から集団交渉を開始し、賃金労働条件を飛躍的に高めていく。その一方で、産業政策を進めるために、職場での不当労働行為の根絶を前提に協力共同を確認していった。
 75年に38社との政策懇談会が開催され、76年には「政策パンフ」が発表された。政策課題10項目として、(1)セメントメーカーの責任による雇用福祉基金制度の設立。(2)労働時間の短縮。(3)賃金労働条件の統一。(4)中小生コン企業への優先受注制度の確立。(5)生コン工場の増設や廃棄についての労働組合同意制の確立。(6)中小企業による共同受注・共同販売の確立。(7)セメント・ゼネコン・商社への過剰サービス反対、適正価格の維持。(8)大手商社による生コン販売への介入排除。(9)自由と民主主義の擁護。(10)建設関係労働者の社会的地位の向上、が示された。

 既に触れたが、日本の生コン製造業は欧米と異なり、セメントメーカーが主導してきた。日本初の生コン工場はメーカー直系工場である。業界の資本や技術はメーカーが担保した。しかし、需要が拡大するにつれ、生コン工場だけを経営する専業の中小企業が急増した。高度経済成長により需要は飛躍的に伸びてきたが、同時に供給能力も飛躍的に高まってきた。競争が激化し、セメント・生コン価格が低迷した。
 そこで、セメントメーカーは協力して、自社の直系工場を使って協同組合を組織し運営していった。生コン価格の高値安定によってセメント価格の安定を図ったのである。特に、73年のオイルショックや74・75年大不況期にはセメントの産業支配が強化され、セメント価格が大幅に値上げされた。関西では、74年・75年に、6社が公正取引委員会から「直系生コン企業の協組からの脱退」を勧告された程である。

 一方で、協組に入らない専業の生コン工場や安定した生コン価格に惹かれて新規参入する事業者も増える。セメントメーカーは、アウトや新規参入の生コン工場にはセメントの廉売競争をする。結果的にアウトの側に安いセメントが流れ、生コンの安売り競争に突入していく。協組の結成・安定からアウトとの競合、値崩れ、協組共同事業の崩壊、生コン工場の破倒産の続出というパターンを辿る。中小企業は翻弄されるのである。さらに、ゼネコンや商社は大不況の中にあって、しかも供給過多である生コンの価格を一層買い叩こうとする。

 産業政策を進めるにあたって、中小企業経営者への説得ばかりでなく、労働側の大衆討議による丹念な理解が不可欠である。新しい闘争領域に踏み込むには時間も必要となる。特に、不当労働行為にさらされ続けてきた職場などから、日々接する経営者が、客観的には独占資本から収奪されているからといって、一面「共闘」していくという政策を受け入れられないという声もあった。また、個別資本への打撃力を強めることによって要求を勝ち取るという従来型の運動方針を主張する者もいる。日本の労働運動の分岐の時代である。

 産業政策闘争は、無原則な「労使協調」ではない。自らの雇用と賃金労働条件を改善するために、独占資本の産業支配を中小企業(事業協同組合)と労働組合の共闘の力で覆していこうとする経済民主主義の貫徹であり、新たな労働運動の出発でもあった。労働者が主人公となる社会の礎石を置く闘いである。74・75年大不況による独占資本の攻勢は、労働組合にとってピンチではなくチャンスであった。
 経営側も変わってきた。自らの経営危機を従来の首切り合理化や低賃金で切り抜けるのではなく、大企業との対等取引条件の確立、共同受注共同販売体制の確立、労使共同の行動で経営改善を図るという認識に立った。

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