うち続く治安立法攻撃を阻止しよう/永嶋靖久(弁護士)

戦争できる社会 秘密保護法の施行が12月10日に強行されようとしている。昨年国会に上程されたカンパ禁止法改悪案は現在衆議院で審議中だ。今国会には、テロリスト指定・資産凍結法案(テロ新法)が上程されている。来春通常国会には、盗聴法改悪・司法取引を主な内容とする法案が上程の予定だ。共謀罪の上程も狙われている。これら一連の治安立法攻撃は、集団的自衛権行使を容認した安倍政府が、実際に戦争を始めるための不可欠の準備だ。

■カンパ禁止法改悪

 カンパ禁止法(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律)は02年に制定された。日本政府や外国政府などを脅迫する目的で、船舶や建造物,道路などに重大な損傷を与える行為などを「公衆等脅迫目的の犯罪」と呼んで、これに対する資金提供を処罰する。

 現行の刑法では、建造物などの損壊は未遂も予備も処罰されない。それに対する資金提供(幇助)も処罰されない。ところが、カンパ禁止法ができて、日本政府や外国政府を脅迫する目的があると、建造物損壊の予備の幇助(資金提供)も、さらに資金提供の未遂まで処罰されることになった。制定時に、福島瑞穂議員が「ハマスにカンパすれば私も逮捕されるのか」と国会で質問したのに対して、政府委員は曖昧な答弁を繰り返した。辺野古で抗議行動中に海上保安庁の巡視艇を傷がついたり、原発再稼動に反対して道路を封鎖しようとして道路に穴を開ける行為も「公衆等脅迫目的の犯罪」にあたる可能性がある。

 改悪案は、「資金」の概念を「資金+土地・建物・物品・役務その他の利益」に拡大する。さらに、これまでは「公衆等脅迫目的の犯罪」を実行しようとする者(企画者)に対して資金等を提供しようとする者(一次協力者)だけが処罰されることになっていたが、改悪案では、一次協力者に対して資金等を提供しようとする者(二次協力者)、「公衆等脅迫目的の犯罪」の実行のために利用されるものとして資金等を提供しようとする者(その他協力者)も処罰対象とされる。カンパ禁止の処罰範囲はとめどなく広がる
治安弾圧を阻止しよう
■テロ新法

 テロ新法(国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえわが国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法)は、「テロリスト」を指定して、その財産を凍結する法律だ。

 テロリストとして指定されるのは、一つには、タリバンやアル・カイダに関連して国連制裁委員会が指名する者・団体だ(3条テロリスト)。もう一つは国家公安委員会が指定する者・団体だ(4条テロリスト)。国家公安委員会が指定するのは、(1)外為法が海外送金を規制している者・団体であって、(2)イ「公衆等脅迫目的の犯罪行為を行い、行おうとし、又は助けたと認められる者であって、将来更に公衆等脅迫目的の犯罪行為を行い、又は助ける明らかな恐れがあると認めるに足りる十分な理由があるもの」、ロ「テロリストの支配的な影響下にあって、公衆等脅迫目的の犯罪行為を行い、または助けるおそれがある者・団体」、ハ「政令が定める国が指定する者・団体」のどれかだ。

 (1)について、外為法では、日本の平和と安全の維持のために必要があるなどと政府が認めたときには海外送金に財務大臣などの許可が必要としている。財務省は、現在、国連制裁委員会が指定するものの他に、PFLP、PFLP―GC、ハマスなどを指定している。(2)のイは「公衆等脅迫目的の犯罪」が何を意味するのかはカンパ禁止法で触れたとおりだ。行おうとした者が、将来行う恐れがあるとされればテロリストに指定される。テロ新法が国会上程された時、多くのマスコミは、テロリスト指定されるのが3条テロリストだけであるかのように報じたが、法文はそうではない。4条テロリストの指定条件はとても緩やかだ。そして、テロリスト指定されると、財産が凍結される。生活のために必要と認められる財産以外は公安委員会に提出しなければならない。公安委員会の許可なしには銀行口座も使えない。家賃も水光熱費も口座引落しできず、カードもETCも使えない。テロリスト指定されれば、社会生活は送れなくなるに等しい

■FATF戦争できる社会

 1989 年G7アルシュサミット合意に基づいて設けられた政府間機関がFATF(金融活動作業部会)だ。マネーロンダリング、テロ資金供与およびその他関連する、国際金融システムの健全性に対する脅威と戦うための政策立案機関である。FATFは今年6月27日に、対日要望を発表した。テロ資金供与の完全な犯罪化、テロリストの資産凍結のための完全なメカニズム、パレルモ条約(越境的組織犯罪防止条約)の批准と完全な実施の履行などである。テロ新法とカンパ禁止法の改悪はこの要望に基づくという。しかし、これまで日本政府は外為法がテロ資金源対策だと述べていた。また、カンパ禁止法は成立以来、一例も適用はない

 そもそも、資産凍結はかつて戦時下において、相手国と相手国民に対する経済制裁と報復の手段だった。今やそれが「国際金融システムの健全性に対する脅威」への対抗手段となった。世界中で、戦争と治安、軍隊と警察の融合が進んでいるが、日本政府はFATFの要望を口実に、戦争的手段を自国内のカッコ付「テロリスト」に一気に拡大しようとしている

■盗聴法改悪

 9月18日、法制審議会は盗聴法改悪と司法取引などを主な内容とする答申を全会一致で採択した。これに基づく法案は来春通常国会への上程が予定されている。現行盗聴法では、薬物や銃器犯罪を中心に、NTTなどの施設で事業者の立会のもと電話・メール・ファックスなどを対象として必要最小限の範囲で行われる断片的な盗聴(スポット盗聴)だけが認められていた。これに対して、改悪案では、傷害・逮捕監禁・窃盗・詐欺など軽微な犯罪までが対象となり、警察施設で立会人なしにすべての会話を記録する仕組みになる。

■共謀罪

共謀罪新設阻止 共謀罪は、話し合うだけで罪にする、自由な議論を許さないための法律だ。FATFの対日要望にあるパレルモ条約とは、法務省がこの条約があるから共謀罪を成立させなければならないと主張してきた条約だ。首相官邸は法務省に対して、「共謀罪の名前を変えろ」「一般国民に影響がないという理論武装をしろ」などという指示を飛ばしているという。カンパ禁止法・テロ新法に続いて、共謀罪の上程も必至だ。

 戦争をする国には、戦争できる社会が必要だ。戦争を隠し、戦争に反対するものを押さえ込み、一切の議論を許さず、そのために監視を張り巡らせる。秘密法・共謀罪・盗聴法、そしてカンパ禁止法やテロ新法は一体となってそのような社会をつくり出そうとしている。

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