新年 死んだ陸士の仲間を偲ぶ/尾形憲(法政大学名誉教授)

特攻隊員 私は1939年の12月、陸軍予科士官学校へ入学、41年の3月卒業した。2カ月の隊付き(現地見習い)を終わり、41年の6月陸軍航空士官学校へ入学し、43年の5月卒業した。歩兵など地上の本科は前年の12月である。人数は総数約2500人だが、そのうち約半数と、この前後の中でいちばん戦死の比率が高かった世代である。16~17歳から20歳前後、人生のうち最も多感な青年時代を戦争に過ごしたのであった。

 戦争中軍人は電車賃が半額だったのをもじり、織田信長の辞世を受けて「人生わずか50年、軍人半額25年」といったものだが、私の同期の仲間はその半額にも達せず死んだのが多い。

 その1人阿南維晟(これあき)は予科が同区隊、敗戦時自決した阿南陸相の次男である。東京の自宅へ日曜日に連れて行ってもらったことがある。御馳走で満腹、帰りに靴の紐を結ぶのに苦労した。2年年上の兄は1浪で陸士入学、4年で入学の彼と同期になった。弟の方は1943年、20歳になるかならずに中国で戦死したが、兄は生き永らえて戦後自衛隊に入隊した。

ガダルカナル島 やはり同区隊だった朝鮮出身の崔貞根、あとで高山昇と改名。彼は襲撃機のパイロットとして沖縄で敵艦に体当たりして戦死するが、航空士官学校にいたころ、仲間に「俺は天皇陛下のために死ぬというようなことはできぬ」ともらしていた。朝鮮民族としての苦衷から出た本心であろう。

 出丸一男はフィリピンの特攻靖国飛行隊長として出撃するが、生還する。この時すでに突っ込んだものとして少佐に2階級特進し、天皇にも上奏されていた。生きている英霊があってはならないと、彼はマラリアで寝ている病室から参謀に引きずりだされて、援護機もないまま単機出撃させられ、再び帰ってこなかった。「処刑飛行」である。

 中学校で同じクラスだった高成田光正。彼は広島で原爆に遭い、腸を引きずりながら病院にたどりつく。4日後息を引きとる。
尾形憲(法政大学名誉教授) ここで紹介する一人ひとり、70年前というのにその面持ちが瞼に浮かび、時にはその声音さえ、耳に谺(こだま)する。

 水戸の航空通信学校で一緒だった大久保晋。あのころ罰金制度を作った。ノロケ話をした奴は2メーター(2円)、ゲス話を始めた張本人は1メーターなど。夏は褌(ふんどし)一つで寝ているが、その横っちょからセガレが顔を出してる奴がいる。意識的な罪ではないが、風紀上あまり宜しくない。罰金20センチ(20銭)をいつも彼はとられていた。戦後来た同期生名簿によれば、彼は1945年1月ビルマで戦死。赤ら顔の気のいい奴だった。

 それから前に本紙74号で紹介した古山圭二鈴木周爾。敗戦の前年、私が航空通信学校を卒業して、フィリピンの航空軍司令部に赴任する際、血気に逸って勝手に飛行機探しをして却って遅くなってしまったが、司令部に先着した2人である。古山は冨永恭次司令官の副官代理で台湾に、鈴木は参謀部の通信係で北ルソンに移動の際、何れも米機による犠牲となった。彼らは何のために死んだのか。彼らが願っていた日本はどこへ行ったのか。彼らのことを偲ぶにつけ、私は今年もと決意を新たにする。

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特攻70年:「特攻は日本の恥部、美化は怖い」保阪正康さん(毎日2014年10月24日)
軍国主義教育が「思考停止」人間をつくった 尾形憲さん(コモンズ74号)
不屈の沖縄・竹富町教委に学ぶ 尾形憲さん(コモンズ75号)
尾形憲さんの著作(Amazonサイト)

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