戦後70年、沖縄にとって/安次富浩(沖縄・ヘリ基地反対協議会共同代表)

戦後70年、沖縄にとって ~辺野古新基地建設反対闘争~

沖縄と日本の平和・人権を守る闘いが正念場を迎えている

安次富浩(沖縄・ヘリ基地反対協議会共同代表)

うちなんちゅに沖縄差別からの脱却と自己決定権の獲得を意識させた1年

安次富浩さん 新年には戦後70年を迎える昨2014年は、沖縄差別からの脱却と自己決定権の獲得に向け、うちなんちゅにそのことを深く意識させた1年間であった。

 2013年1月末に提出した普天間基地の閉鎖と県内移設断念、オスプレイ配備撤回を求める「オール沖縄」(県議会議長、県議全員、県内41市町村長、市町村議会長などの自筆署名)の「建白書」が13年から14年にかけた激動の沖縄の幕開けであった。「オール沖縄の建白書」に敵意を示した安倍首相は2月末訪米し、辺野古移設の日米合意堅持を約束して、沖縄の民意である建白書を無視した。

 「戦後レジュームの解体」を身上とする安倍首相が参勤交代的な訪米後に行ったのは、サンフランシスコ講和条約が締結された4月28日に天皇夫婦出席の「主権回復の日」の開催であった。この式典では出席者から「天皇陛下バンザイ」のコールがあり、天皇を賛美する戦前を回帰させる式典であった。この「4・28」は日本政府が沖縄を米国に売り渡した日で、その結果、過酷な米軍事植民地体制が27年間も続いた。この式典強行に沖縄では大きな反発が渦巻き、「主権回復の日」開催反対の県民集会が持たれ、さすがの仲井眞前知事も県民の反発を回避するために高良副知事を派遣した。

 その後安倍政権は、石破自民党幹事長を通じて沖縄選出の自民党所属衆・参国会議員に対し、「(普天間基地の県外移設の公約を撤回しないなら)次期選挙では公認しない」と恫喝し、選挙公約の撤回と屈服を迫った。いわゆる「平成の琉球処分」(11月29日)である。公約を裏切った5人組と自民党沖縄県連は、辺野古移設反対のうちなんちゅはもとより翁長雄志那覇市長や仲里利信元県議会議長など県内の保守層の重鎮からも大きな反発を招き、自民党那覇市議団の分裂劇まで引き起こした。

日本政府のアメ政策に屈し、
うちなーの魂を売り渡した仲井眞前知事の「辺野古埋め立て承認」

 落選後、報道陣にもみくちゃにされる仲井真知事

仲井眞前知事(知事落選直後)

 仲井眞前知事は13年12月の予算折衝において、安倍政権から10年間3千億円台の沖縄振興予算で取引し、普天間基地の辺野古移設反対の民意と盟友公明党沖縄県本部から提出された「辺野古移設反対意見書」を無視し、「辺野古埋め立て承認」に向けた事務手続きを指示した。仲井眞前知事の「いい正月を迎えられる」発言は、日本政府の沖縄差別を象徴するアメ政策に屈し「あぶく銭」でうちなーの魂を売り渡す行為で、うちなんちゅにメイア元米沖縄総領事のゆすり、たかりの名人と揶揄した発言を思い出させ、「仲井眞許さぬ」と怒りのマグマが蔓延(まんえん)して行くのである。

 沖縄防衛局から提出されている「辺野古埋め立て承認申請書」を年末に承認する動きを察したうちなんちゅは、仲井眞前知事の県庁登庁を阻止するため数百人の規模で県庁ロビーに座り込んだ。登庁を阻止された仲井眞前知事は知事公舎周辺を県警機動隊に守らせ、知事公舎へ県幹部職員を呼びつけ、「辺野古埋め立て承認」する記者会見を行った。県庁ロビーに結集したうちなんちゅは1月に予定されている名護市長選挙で稲嶺ススム市長の再選を勝ち取ることが日本政府と仲井眞県政が結託した「辺野古埋立て」承認に対抗できる唯一方法であることを確認した。

1月名護市長選挙で稲嶺ススム市長が大差で勝利

稲嶺進さん名護市長当選 2014年1月、名護市長選挙で稲嶺ススム市長と対立する辺野古誘致派候補の応援に駆け付けた石破自民党幹事長は「500億円の名護振興資金」の拠出をぶち上げた。これが名護市民や県民から大きな反発と怒りを買い、政府自民党が推す候補を大差で敗北へ追いやった。

 名護市民はアメに浸る仲井眞前知事と違うことをうちなんちゅに示した。埋め立て承認した仲井眞前知事に反発する仲里利信元県議会議長や稲嶺恵一元県知事などの保守層や基地との共存・共生を否定する県経済界の若手からも支持を得たことも名護市長選の特筆すべき点であった。公明党沖縄県本部は創価学会員へ自主投票を指示し、実質的には稲嶺市長を応援した。そして9月の名護市議選でも稲嶺与党の過半数維持を再び獲得する快挙をあげたのである。

11月沖縄県知事選挙で翁長候補が圧勝

翁長雄志さん歴史的圧勝 11月の沖縄県知事選はまさに沖縄のアイデンティティーを問う闘いであった。「オール沖縄の建白書」の精神の継続を呼びかける人々によって「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」が発足した。(7月27日)これを契機に次期知事選の候補者選定に拍車が駆けられ、保革双方の責任者などによる候補者選考討議の結果、沖縄建白書提出のまとめ役として活躍した翁長雄志那覇市長を知事候補として擁立することが決定され、統一選挙母体「ひやみかちうまんちゅの会」が結成された。

 安倍政権のなりふり構わぬ選挙応援にもかかわらず、翁長候補が圧勝した背景には、日米安保条約を容認しながらも「イデオロギーよりもアイデンティティー」、「在沖米軍基地は押し付けられたもの」、「(日米安保容認なら)応分の基地負担を」、「基地関連収入は県民総所得のわずか5%」、「基地は沖縄経済の阻害物」など基地関連経済からの脱却と日本政府による一貫した沖縄差別政策の矛盾、東アジア経済圏との平和交流など沖縄の未来志向型の演説が保守層も含めたうちなんちゅの琴線に響き、過去の選挙でも事例がない10万票近い大差の勝利となった。

沖縄における保革を超えた闘いの歩み

教科書検定撤回県民大会

教科書検定撤回県民大会(2007.9.29)

 沖縄における保守支持層と革新支持層との連携の萌芽は2007年9月29日の教科書検定撤回県民大会であった。沖縄戦は「鉄の暴風」が吹き荒れ、地獄の戦場の様相を呈していた。この沖縄戦では旧日本軍が住民に「集団自決」を命じ、日常会話のウチナーグチを使ったことがスパイとして虐殺されるなどうちなんちゅの命が粗末にされた。文科省が教科書検定で「軍命」による集団自決を記載した個所を削除指示したことが沖縄県民の怒りを買い、教科書検定撤回の島ぐるみ闘争が展開された。

 県民大会の実行委員長に仲里利信県議会議長が就任した。沖縄戦を体験した仲里議長は保守系県議団を強い説得によって実行委員会に加わらせ、11万人が結集する県民大会を成功させた。11万人とは県人口140万人の1割近い人々が文科省の沖縄戦に対する歴史的事実の歪曲を許さないとの怒りで県民大会に参加したのである。日本のどこの地域に10万余の民衆が結集する市民の政治的集会が開催出来るのであろうか。

 保革の枠を超えた政治的な結合は2010年の名護市長選に引き継がれた。当時の名護市は北部振興策というアメをしゃぶり続けた箱モノ行政が主軸であった。近い将来、市財政がパンクするとの危機感を抱いた保守系市議団の有志が辺野古移設反対の革新市議団との粘り強い協議の結果、「海にも、陸にも新しい基地は造らせない」との選挙公約を掲げた稲嶺ススムを統一候補として擁立し、移設容認の現職市長を破ったのである。これ以降、市民主体の辺野古移設反対運動に稲嶺名護市の平和行政が加わり、市民運動と市政の不離一体で苦難の中に勝利の展望を切り拓く闘いへと進化し、名護の民意を背景に新基地建設反対の訪米要請行動や対日本政府交渉などが展開したのである。

安倍政権の埋め立て工事着手との辺野古の闘い

海保の暴行で市民が怪我 2014年7月1日(意図的な集団的自衛権の行使を閣議決定で容認した日)、安倍政権による埋め立て工事着手の記者会見が行われて以降、厳しい辺野古移設反対闘争が始まった。海上では「辺野古・ブルー(カヌーチーム)」や「虹の平和船団」による海底ボーリング調査阻止行動が展開された。

 海上行動隊は安倍政権が閣議決定した臨時制限水域とその違反者には「刑事特別法」による逮捕恫喝に屈せず、海上保安官による「確保」という身柄拘束や暴力にもめげず、非暴力の抵抗で制限水域の突破を図りながら、海底ボーリング調査を止めるため、スパット台船へ向けカヌーを漕ぎ続けた。大浦湾から辺野古リーフ沖には海上保安庁の13隻の大型巡視船、海保の33隻のゴムボートが建設予定水域を走り回る光景は県民に米軍艦が沖縄の沿岸を席巻した沖縄戦を蘇えらせたのである。

 7月10日以降、陸上ではキャンプ・シュワブに設置された作業ゲート前の座り込み行動で調査用資材の搬入を阻止した。沖縄防衛局はヘリ基地反対協などの抗議団による座り込み阻止闘争を避けるため深夜及び未明・早朝に資材搬入する姑息な戦術を駆使した。ゲート前抗議団は県警機動隊によるごぼう抜きと隊員の暴力によって女性の高齢者などのけが人が出ても海上行動隊と連携して粘り強い非暴力の抵抗運動を続けている。

非暴力抵抗闘争が県知事選、総選挙の勝利に連動し
日米両政府を震撼させている

辺野古ゲート前の攻防 この非暴力抵抗闘争は多くの県民に共感を与え、物資の差し入れやカンパが集中し、さらに全国の支援者から「辺野古・ブルーチーム」への参加やゲート前の座り込みが続々増え、野党の国会議員や県議団、市議団も闘争現場に駆け付けるなど活況を呈している。

 現場における非暴力抵抗闘争がゲート前での翁長県知事候補の知事選出発式へと連動し、県知事選勝利に大きく反映させた。そして、安倍政権による突如の衆院年末解散・総選挙では選挙公約を破棄した沖縄自民党国会議員4人組の落選・追放に向けた「島ぐるみ」の闘いが展開され、ひやみかちうまんちゅの会が推薦する4区候補者全員が当選する快挙を生みだしだ。翁長新知事を支える4人の衆院議員が誕生し、安倍政権一人勝ちの衆院選に水を差す沖縄の勢いを示した。

 この2014年の闘いが象徴するように、17年にわたる辺野古での粘り強い闘いが日米両政府を震撼させているのである。振り返れば、うちなんちゅの抵抗の歴史があり、日本復帰以前の米軍植民地支配下においても伊江島など非暴力の粘り強い住民闘争が各地で展開された。復帰後も米軍による事件・事故が多発し、それを看過してきた日本政府への怒りから住民による様々な抵抗闘争が持続し、この非暴力抵抗闘争がうちなんちゅの人権と民主的権利をつくりあげてきた。滔々と流れる住民主体の抵抗闘争が沖縄の反基地・平和闘争の特徴点である。

戦後70年の節目 沖縄と日本の平和・人権を守る闘いが正念場を迎えている

「集団的自衛権反対!」(2014/6/30 首相官邸前)

「集団的自衛権反対!」(2014/6/30 官邸前)

 戦後70年を経過する今日、日本は戦後民主主義の危機を迎えている。「戦争できる国家づくり」にまい進する安倍政権に対して、有権者は体たらくな野党の体質と度重なる党内分裂に嫌気を示し、諸選挙での棄権がごく普通の状態となっている。低投票率でも勝利した政党が政権を維持ができる奇妙な選挙制度。この選挙制度の欠陥が、いわゆるお任せ民主主義を蔓延させているのである。

 またヘイトスピーチを展開する新たな右翼排外主義者たちが登場するなど格差が広がる日本社会のなかで、一部の若者たちにはネット右翼に共感するファッショ的傾向もある。戦後民主主義の危機と言っても過言ではない状況である。安倍政権が一見強力に映っているが、アベノミクスの破綻による経済格差が広がり、基盤が動揺することは間違いない。日本の脱原発・反原発と集団的自衛権行使反対、特定秘密保護法の廃案を要求する市民運動が主体となって、政党・党派を超えた共同闘争、統一戦線が創造できれば日本の変革は必ず成し遂げられる。

 一方、イギリスにおけるスコットランドの住民投票はうちなんちゅの自己決定権の確立、日本政府からの自立・独立に向け参考となり得るであろう。ウチナンチュが創り上げた日米両政府への粘り強い非暴力抵抗闘争を展開しながら、やまとんちゅの政治変革に火をつけることにより沖縄の自立および独立を勝ち取れるのである。戦後70年を経て、沖縄と日本の平和・人権を守る闘いが正念場を迎えている。

(編集部注―タイトル、小見出し等編集部の責任でまとめています)

海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会(ヘリ基地反対協議会)
建白書島ぐるみ会議(FaceBook)
ひやみかちうまんちゅの会(FaceBook)

『コモンズ』79号の目次に戻る

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

  1. コモンズ最新号目次

特集記事(ランダム)

  1. アメリカの時代は終わった

    2017-1-10

    年頭主張】対米隷従の「この国のかたち」を変える時-沖縄と結び安保破棄・安倍打倒へ

緊急出版「ストしたら逮捕されまくったけど それってどうなの…」

最近の記事

  1. サンフランシスコ「慰安婦」像
    編集後記  先月ここで紹介された映画 『主戦場』 であるが、新しい事態が起きた事でまたまた注目を浴…
  2. てるてる坊主のイラスト
    盗聴法すでにあなたも丸ハダカ 天安門大道遥か道遠し 南北と日本の平和重ねあい 解…
  3. 映画「記者たち」ポスター
    『記者たち-衝撃と畏怖の真実』 「もし他のメディアが全て政府の広報になるならやらせとけ。我々は…
  4. 映画「バイス」
    米国映画2018年Gグローブ賞受賞『バイス』 監督・アダム・マッケイ 最も愚劣な戦争が、こんな男に…
  5. 大阪労働学校アソシエ
     連帯労組関西生コン支部は労働者の賃上げだけでなく、広く社会的な支援活動を広げてきた。その一環として…

職場・労働相談はこちら(外部リンク)


連帯労組の闘い ↑ 映画「フツーの仕事がしたい」より 労働相談は連帯ユニオン

特集(新着順)

  1. 錦旗を掲げて行軍する維新軍

    2019-6-27

    天皇制と闘うとはどういうことか・補論(2)/菅孝行(評論家) 天皇制と日本資本主義(上)

  2. 日本円札束イメージ

    2019-6-22

    松尾匡教授との往復書簡 前号書評をめぐって

  3. 関西生コン支部の青木さんご夫妻

    2019-6-19

    5・10 組合つぶしの大弾圧に反撃する東京集会

  4. 軍事施設として建てられた靖国神社

    2019-5-22

    天皇制と闘うとはどういうことか・補論(1)/菅孝行(評論家) 天皇制国家にいかにして始末をつけるか

  5. 関西生コン弾圧跳ね返そう!全国規模の大カンパ運動がスタート

    2019-4-7

    関西生コン弾圧跳ね返そう!全国規模の大カンパ運動がスタート~あなたにもできることがある

バックナンバー

カテゴリ一覧

本日
昨日
累計
FROM 2014/01/01
ページ上部へ戻る