パラダイム転換と新たな社会観の創造を 協同組合とプラットホーム/松岡公明氏(農林年金理事長)

GSEFロゴ11・2「ソウル宣言」プレ・フォーラム――報告(3)

パラダイム転換と新たな社会観の創造を
──協同組合とプラットホーム

第1部 基調講演(要旨)

松岡公明さん(農林年金理事長)

松岡公明さん(農林年金理事長)

 ソウル市の行政の中に社会的経済のセクションまで設けてやる気十分の韓国の実情に比して、わが国では、この5月に規制改革と称してJAグループの解体につながるような提言がなされ、閣議決定がなされました。これはひとりJAグループだけにかかるものではない、というのが私の認識です。協同組合は自主・自立の組織。それに対する国家の介入であると受け止めざるを得ない。断じて容認できるものではない。

 もっといえば、2012年は国際協同組合年(IYC)で、富沢賢治先生が「協同組合憲章案」を練られたが、これに対しても無関心、無視の態度をとりました。国家、政府、国会議員もおしなべて日本では協同組合に対する底辺が非常に狭い、基礎知識がない、リテラシーがない。われわれはまず韓国から、ソウル市の朴元淳市長から学び取るべきではないかと、申し上げます。

■神話の崩壊とパラダイム転換の必要

Old Economy

成長神話の崩壊 古いマネー資本主義から脱却を!

 福祉国家「神話」の崩壊、「安全神話」の崩壊、いろんな「神話」が崩壊してまいりました。「成長モデル」という神話も、すなわち先進国型の経済成長モデルはもうとっくに通用しない。2008年のリーマンショックに象徴されるようなマネー資本主義はだめだ。
 そして、少子高齢化問題もあり、TPPの本質ということで言えば、韓国では韓米FTPを先にやってアメリカの言うとおりになり、「アメリカの51番目の州」になった。日本もそろそろ52番目の州になろうとしている状況で、今回の交渉の最大の特徴は、「超秘密主義」。そしてグローバリゼーションと自由貿易ですが、グローバルスタンダード(世界基準)というのは大体アメリカンスタンダードの強制です。まさにTPPも含むグローバリゼーションがそういう事で、「1%」のためにルールがどんどん変えられてしまうのが、本質としてある。

 そういった「神話」の崩壊、少子高齢化、グローバリゼーション、構造改革、規制緩和がいかに嘘っぱちかを見抜き、それを踏まえてパラダイム転換をしなきゃいけない。幸徳秋水の「大逆事件」の時に石川啄木が『時代閉塞の現状』という評論を出していまして、「時代に没頭していては時代を批評する事ができない」と語っている。まさに今、スマホに没頭して社会問題に無関心になると「無作為の罪」になっていく。政治的無関心、社会的無関心が蔓延する。思考停止状態。それが拡がると、時の権力の思うままになるってことです。

 それから地方の町の異常さ。商店街がシャッター街になって、ワタミ、築地日本海、マクドナルド、ケンタッキー、吉野家……。それぞれの地方の特色ある町並みが消えて全部同じような光景。今の「アベノミクス」でシャッター街のシャッターが上がることはない。農協はいらない、潰してもいいといいながら、一方では「地方創生」という。地方の産業といったら農林水産業しかない。協同組合セクターがきちんと立ってなければ回らない。

■民主主義の欠陥

11.2「ソウル宣言プレ・フォーラム

講演する松岡公明さん

 民主主義の欠陥とは何かというと、主権理論では我々は数年に1度、国会議員、市長、市会議員などの選挙を通してしか主権を発揮できず、あとはお任せで、実は官僚がみんな政策を作って決めている。その意味からも「ソウル宣言」でのべているような協同組合セクターなど社会的経済をどんどんつくっていくことが、関心を公共圏につないでいくバイパスになり得るという意味でも、民主主義の欠陥や危機を救っていく意味でも、社会的経済、協同組合セクターの役割があろうかと思います。

 今までの国民主権の前提にした近代的主権論に基づく民主主義の欠陥をもう一回、「ソウル宣言」の趣旨も踏まえた形で、新たな政治の発見・発明につないでいく事が大事です。そのためにはシティズンシップ教育が大事で、日本は公(おおやけ)と私(わたくし)があるだけで、市民がない。公教育の中にもそういう教育はされていない。それも今後の課題です。

■パラダイム転換のあとにどういう社会観が必要か

New Economy

新しい社会的経済へのパラダイム転換が求められている

 新たな社会観の構築ですが、人と人が拠って立つ、地域の中で生きていくこと。そのためにそこで関係が結ばれているローカリズムから重層的なコミュニティを再構築してゆくところから新たな社会観も生まれてくる。
 マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授によれば「質の高い関係が質の高い思考を生み出し、質の高い思考が質の高い行動を生み出す。質の高い行動が質の高い結果につながる」という「成功の循環」を言っている。コミュニティの成熟度を増してこういった成功の循環につなげていくことが大事です。

■大きな協同の中の小さな協同を

 既存の協同組合もパラダイム転換をしなければなりません。農協も生協も大きくなりすぎました。おそらく既存の農協とか生協では今日の「ソウル宣言」で言われているような取り組みはなかなか進まないと思います。私は地域に開かれた協同組合運動ということで大きな協同の中に小さな協同を作ることだと思っています。「小さな御輿」理論です。

 御輿は最低でも4人で担ぎますね。みんなが自己責任で担がないといけない。小さな御輿の方が主体性がうまれる。大きな協同だとぶら下がりばっかりです。農協も生協も大きな協同は経営資源がいっぱいある。その経営資源の中に小さな協同を作って、それをネットワークで結びつけていく。そういう発想が大事だと思っています。

■協同組合とプラットフォーム
松岡公明さん(農林年金理事長)
 プラットフォームとは、誰でも入れる「公」の空間の中に、信頼しあい、共通のテーマ・目的を持った人間同士がつながれる「共」の空間をつくる場所。従来にないコミュニケーション活動を通じて、今までにはなかった人間関係の相互作用をつくり出し、そこから新たな付加価値を生み出す「創発現象」を引き起こすということです。じゃあ、プラットフォームを設計する時に何が重要かというと、開かれているということ。農協は農家などの同質性が強いので多様性を認めない閉鎖性がある。そして参加者間の役割の設計。「出番を作ってあげる」という事が大事です。

 最後に「価値の連鎖」について。農産物の場合も生産から消費までの一気通貫のフードシステムが、川上、川中、川下でお互いの取引主体間の関係性に着目した中で、農産物マーケティングを考えていくことが盛んに議論されるようになりました。フードシステムでいう関係性マーケティングについて言いますと、「サプライチェーン」(供給連鎖)がある。そこでは効率を追求する。しかし他方で「バリューチェーン」というのがある。価値の連鎖がなきゃだめ。お互いの付加価値。お互いが持っている経営資源を活かしながら、新たな価値を作っていく。

 西口敏弘さんの『ネットワーク思考のすすめ』によればネットワークの本質は「浸透」であり、その浸透作用によって、組織の「排除」作用で一度失われた連結可能性を回復し、再吟味し、再利用できる選択肢を増やす事にあると。そういうところまで含めたネットワーク力になっていかないと、本物にならないだろうと思います。

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10月
31
13:30 “他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
“他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
10月 31 @ 13:30 – 16:00
“他者への想像力”を~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて @ オンライン
【同時通訳付き Web開催】 SJFアドボカシーカフェ第67回 “他者への想像力”を ~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて~  組織ジャーナリズム・メディアの報道に接する日々において、政権に対する「忖度」やフェイクニュースの横行など目を覆うばかりの状況に不信感や危機感が高まっています。  長年メディアの中で活動をしてきたベテラン(?)のおじさん・おばさんたちも危機感を共有してきました。そこから、ジャーナリストを目指す若い人たちに「権力を監視し、市民の側に立つ」という姿勢を育んでもらおうと、「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」の活動が3年前から始まりました。  なぜ「日韓」なのか。日韓の間には、従軍慰安婦や徴用工の人たちのこと、強制労働など、今も「歴史認識」をめぐる問題が横たわっています。その解決のためには、まずお互いが相手を学び、理解していくことが必要です。その行為は、ジャーナリストにとって大切な“他者への想像力”に思いを寄せることにもつながります。  ジャーナリストが日々伝える「今」の一つひとつは、「過去」つまり歴史を背負っています。そこに目を向けられるようなジャーナリストが日本で、韓国でニュースを発信していければ、今のメディアは少しずつ変わっていけるのではないか。そんな日韓学生フォーラムの試みをもとに、日韓の皆さんと歴史認識を共有する道を探っていければと思います。 ゲスト 〇植村隆さん:  1958年、高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒、82年、朝日新聞社入社。大阪社会部記者などを経て、テヘラン、ソウル特派員。北海道報道部次長や外報部次長などを経て、北京特派員、函館支局長など。2014年、早期退職。17年秋に「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」をジャーナリスト仲間たちと立ち上げる。また現在まで、16年より韓国カトリック大学客員教授、18年より週刊金曜日発行人兼社長、19年6月から「金曜ジャーナリズム塾」塾長も務める。 〇西嶋真司さん:  1957年生まれ、早稲田大学卒。81年に「RKB毎日放送」入社。記者として報道部に配属され、91~94年にJNNソウル特派員。2000年に制作部に異動し、ドキュメンタリー番組を制作。18年に退社し、映像制作会社「ドキュメント・アジア」を設立。ドキュメンタリー映画の代表作に『抗い 記録作家 林えいだい』。現在は元朝日新聞の植村隆記者のバッシング問題をテーマにした映画『標的』を制作中。 〇「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」に参加し、現在メディアで働く記者や学生も出演します。 詳細 ●日時: 2020年10月31日(土)  13:30~16:00 ※受付時間13:00~13:25 ●会場: オンライン開催 ★オンライン会議システム・Zoom(言語通訳機能付き)を使用します。スマホやPC等の端末から参加いただけます。参加方法の詳細は、お申込みくださった方に10月26日までにメールいたします。 ★グループ対話セッション(逐語通訳付き)や、ゲストとの対話も行う予定です。聞くだけの参加も可能ですが、この対話の場を一緒につくれるよう、お声を出していただけましたら幸いです。参加者さまのお顔は写らないよう初めはこちらで設定いたしますが、グループ対話中は、自主的にお顔を写していただけます。 ●参加費: 無料  ※通信料は参加者さまのご負担となります。 ●お申込みフォーム: https://socialjustice.jp/20201031.html ★先着50名様。完全事前登録制(上記フォームからのみの受け付けとなります)。 ★締め切りは【10月25日】、または【定員に達した時点】の早い方とさせてください。 ●イベントホームページ: http://socialjustice.jp/p/20201031/ ★同時通訳(日本語・韓国語)をいたします。 ★韓国語でのご案内ページ http://socialjustice.jp/p/ko20201031/ もございます。オンライン開催のため韓国など海外からの参加も容易です。もしお知り合いで韓国語でのご案内の方がよろしい方がいらっしゃいましたら、こちらのリンクを広めていただけましたら幸甚です。 ― 助成: オープン・ソサエティ財団/JANICグローバル共生ファンド ― ■主催・お問い合わせ先: 認定NPO法人まちぽっと ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) メール: info@socialjustice.jp
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