協同組合こそよりよい経済、社会の建設に貢献できる 吉原毅氏(城南信用金庫理事長)

GSEFロゴ11・2「ソウル宣言」プレ・フォーラム――報告(7)
第2部 各分野からの実践をもとにした報告(4)

協同組合こそ、よりよい経済、社会の建設に貢献できる

吉原 毅氏(城南信用金庫理事長)

■信用金庫のルーツについて

吉原毅さん 信用金庫は、地域の皆さまを幸せにするために生まれた協同組織金融機関です。そのルーツは、19世紀にイギリスのマンチェスター地方で生まれた協同組合運動にあります。
 当時のイギリスでは、産業革命が急速に進展し、経済は発展しましたが、その結果、貧富の差が拡大してしまいました。そこで、勤労者や庶民がお互いに助け合って、みんなが豊かで安定した生活を営める理想社会をつくろうと社会運動が起こりました。これが協同組合運動であり、組合員が協同で品物を安く購入したり、販売したり、お金をお互いに融通したりしました。日本では、ドイツで発展した商工業者の信用組合などを参考にし、明治33年に産業組合法が制定され、この産業組合が現在の生協や農協、信用金庫のルーツです。これらの組織は公共的使命を高く掲げた兄弟といえます。

■「お金がすべて」という考え方が蔓延した資本主義社会

 米ソ冷戦終結後、ソ連が崩壊した1991年以降、一強と化したアメリカ流の市場原理主義、新自由主義が、世界各国に導入され「グローバル資本主義」へと移り変わっていきました。特にアメリカは、あらゆる面で世界の市場の支配と一極化を目指し、アメリカ風の政治、経済、社会を他国に無理やりに強制し、結果的に、貧富の拡大や環境破壊など様々な問題を引き起こした。一例としては「サブプライムローン」であり、2008年の「リーマン・ショック」。そこで、市場原理主義や資本主義経済のメカニズムが、人間の幸福にとってプラスにならないという疑念が湧き起った。
2012国際協同組合年マーク

2012国際協同組合年マーク


 「お金がすべて」という考え方が蔓延した資本主義社会は、「人の幸せとは何か」「国家社会とは、そして人間同士の関係とは本来どうあるべきか」といった人間社会の本質的な問題から外れていく性格を持っています。人々の間にさまざまな格差を生み、人と人との繋がりを断ち切ってしまうのです。

 こうした状況を受け、国連は「利潤のみを目的とする株式会社よりも、人々が互いに話し合って良識ある経営を志向する協同組合の方が、人間社会にとって望ましい」という考えから、2012年を「国際協同組合年」とし、「世界中の人々が、協同組合の精神と活動に大きな期待を寄せる」と宣言しました。「お金だけで結ばれた人間関係でなく、本来の人と人との関係を重視する」という考えは、世界に広がっていくことと思います。

 韓国でも2012年12 月に「協同組合基本法」が施行され、この法律の施行を受けて、韓国のある大手飲食チェーンは、それまでの株式会社を協同組合に組織変更し、それまでとっていたフランチャイズ形式の事業展開をやめました。その企業の理事長は「資本より人間を、競争より分かち合いを追及する協同組合になる」とおっしゃっていました。これは大変すばらしい考えだと思います。

 そもそもフランチャイズとは、アメリカで開発され、世界に普及していったもので、この言葉は、人や会社などが「特権を与える」という意味です。つまり、「与える」という支配的な要素が含まれており、与えるかわりに「ロイヤリティ(使用料)」をもらう仕組みで、「お金」で結ばれた契約社会のアメリカらしい仕組みなのです。
ウォール街を占拠せよ
 こうした問題は、何も今、初めて分かったことではありません。古くは、プラトンが「国家論 」の中で指摘し、アダム・スミスが「諸国民の富」の中で「株主の利潤を追求する株式会社は、国家社会にとって望ましくない」と警告しています。マルクスもケインズも「市場を野放しにすることは危険だ」と警鐘を鳴らしていた。人間とは、元来、我が儘で自分勝手な生き物です。だからこそ、お互いに話し合い、道徳や倫理、良識を持って、健全な社会、健全なコミュニティをつくらなければならない。そして、そうした健全なコミュニティの中でこそ、お金も健全に使われるのです。

 逆に、人と人がお金だけの繋がりになり、市場を野放しにすると、人の心をばらばらにし、孤独にし、狂わせ、暴走さてしまいます。そして、その結果として、良識やモラルが崩壊し、拝金主義に陥り、バブルや多重債務、犯罪など、悪いことが止まらなくなります。つまり、現代社会の問題は「お金の暴走」です。お金の本質は、個人主義が生んだ最大の妄想で、一種の「麻薬」です。その拝金主義、個人主義を是正するために生まれたのが、協同組織金融機関である信用金庫なのです。

■原発の問題点

吉原毅さん そもそも、当金庫が「原発に頼らない安心できる社会へ」というメッセージを掲げることになったのは、福島第一原発の事故以降、政府や東京電力の対応に大きな不信感を感じたことがきっかけでした。

 これだけの事態を引き起こしたならば、当然、原発を直ちに止めて総点検し、関係者が責任をとるべきということが共通認識だと思いましたが、驚くべきことに政府もマスコミも、「直ちに健康に影響はない」「原発がないと経済や国民生活が成り立たない」などの発言を繰り返しただけでした。これには違和感と、同じ企業人として、あまりの倫理観の無さに、強い憤りを感じ、「原発を止めよう」と皆で声を出していかなければいけないと思いました。そして、地域を守っていくことが使命である信用金庫として、単に預金や融資やお客様の相談に乗っているだけでは、もはや地域を守りぬくことはできないと本気で考えるようになったのです。

■今後の日本経済 原発ゼロで日本経済は再生する

New Economy 安倍政権によるアベノミクス、日銀による金融緩和、原発停止による燃料の増加、こうした複数条件が重なり、貿易収支は赤字、為替は円安になり、デフレ不況は解消されつつあります。経済学においては、「貿易赤字は全く問題ない」との見方が大方を占めています。こうした点は、慶応義塾大学名誉教授だった故加藤寛先生や嘉悦大学の髙橋先生も指摘していたことです。貿易収支は、単体で動くのではなく、変動相場制と連動し、過度な赤字や黒字は調整されるものなのです。

 そして、何よりも原発ゼロは、PPS、火力発電等の技術革新、再生可能エネルギーといった新たな産業を活性化し、発送電の分離や電力の自由化と相まって、日本経済を押し上げることになり、脱原発の実現は、日本経済にとっても良い効果をもたらすと私は考えています。

城南信用金庫HP
原発に頼らない安心できる社会をめざして(城南信用金庫)
協同組合が「お金の暴走」を止める:吉原毅(FACTA ONLINE)

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■吉原毅さんの本
  

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