「二等兵物語」と日本軍・日本人の名誉(1)/神子上 徹

精神科クリニックの窓から/神子上 徹

「二等兵物語」と日本軍・日本人の名誉

喜劇「二等兵物語」ポスター 私の生まれたところは、人口1万人くらいの農村で、父の開業していた医院の隣には劇場があり、もの心つく頃はどさ回りの劇団が来て、チャンバラ劇をやっており、芝居好きのおばあさんについてよく行ったものです。そのうち、週末に映画をやるようになりました。大映、東宝、松竹などで、長谷川一夫、市川雷蔵、山本富士子、京マチ子、などが出ていました。その中でも、伴淳(伴淳三郎)、あちゃこ(花菱)主演の「二等兵物語」は、コメディの傑作(シリーズ化)でしたが、その中にもペーソスがあり、また日本軍隊の中の陰惨な新兵いじめもリアルに描かれていました。

 その中でも、兵隊が列を作って「おーい、早くしろよ」「まだだ、そうせかすな!」などのやりとりがあり、ドーッと笑いが起こり、中からズボンの前を直しながら一人が出てきて、次が入ってゆく場面もありました。(その後、勝新の「兵隊やくざ」にも同様のシーンがあったような気がします。)

 映画を観たのは、60年前・小学生の頃で、そのことが何を意味するかは理解できるわけもなく、この間の従軍慰安婦問題でのマスコミ報道で、「そう言えば」とふとこの場面を思い出しました。撤回された記事が長く放置されたために「日本軍の、あるいは日本人の名誉が傷つけられた」という報道が目につきます。前々号『コモンズ』で、従軍慰安婦の特集が組まれましたが、キチンとした内容でわかりやすくよい記事だったと思います。ただし、今や慰安婦問題は「強制されたのか否か」が中心の論点になっています。

 わたしは、これは慰安婦問題の本質を離れたところで焦点化にされて(歪曲化されて)いるように思います。
 私たち日本人の父や祖父たちが映画で再現されたように「慰安所」の前にズラーッと並んだ光景を想像すればするほど、そこにいた女性たちが強制されたのか否かを問うことの意味はもはやないように思います。このような軍隊の情景のどこにどのような「名誉」があったというのでしょうか。私は言いつのる人たちの人格や品性をまず疑います。(次号につづく

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