誰が湯川さん後藤さんを殺したのか 安倍政権はアメリカ・有志連合の国家テロ、対「イスラム国」戦争への加担・支援を止めろ!

いったい誰が二人を殺したのか!
安倍はアメリカ・有志連合の国家テロ、対「イスラム国」戦争への加担・支援を止めろ!
エルサレムでイスラエル旗を背景に演説する安倍首相


ふたりの拘束が続く1月17日、安倍首相はエジプトで「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」と述べた。1月20日「イスラム国」がこの安倍首相の「宣戦布告」に対して人質の身代金を2億ドルとした時、安倍首相はイスラエルのエルサレム市内で「人命を盾にとって脅迫することは許しがたいテロ行為であり、強い憤りを覚える」と述べ、2億ドルは難民への支援であることを強調した。しかし中東全体でイスラエルを「国家」と認めているのはエジプトやヨルダンなど3ヵ国のみであり、イスラエルの旗を背景にこのような演説を行うことは、客観的には米軍・イスラエル軍の側につくことを意味する。

 いったい誰が湯川遥菜さんと後藤健二さんを殺したのか。まずは「残虐なテロは許せない」などと言った枕ことばは抜きににして、この事件が持つ意味を二つの側面から考えてみる。ひとつは「イスラム国」あるいはイスラム過激派はなぜ生まれたのか、二人が殺害されたバックグランドからアプローチする。もうひとつは、なぜ二人は殺されねばならなかったのか、その直接的な要因を探る。(大野和興・ジャーナリスト)

憎悪の連鎖が生み出した「イスラム国」

 「イスラム国」が生まれた背景をたどっていくと、イラク戦争に行きつく。米ブッシュ政権が行った対テロ戦争は、アフガニスタン、イラクの市民の大量殺戮ととめどない憎悪を生みだした。サダム・フセインは殺され、イラクという国家は解体された。
同じことがシリアでも起きた。内乱のあげく、国家は壊れ、一種の切り取り勝手状態となった。こうした混乱状況の中で、スンニ派による国家建設が武装闘争によって始まった。それが「イスラム国」といわれるものなのだととらえることができる。

 イラク戦争の犠牲者は本当は何人いたのか、その全貌はまだ明らかになっていないが、米軍など攻撃側の有志連合が約5000人であるのに対し、イラクに住んでいた住民の犠牲者は約50万人に達するという調査がある。これはシアトルにあるワシントン大学の公衆衛生専門家エイミー・ハゴピアン氏率いる国際チームにイラク保健省の関係者も参加して行った調査である。イラク全土で家族に関する調査を実施した。

イラク戦争・米軍のファルージャ侵攻で傷を負った子供

イラク戦争・米軍のファルージャ侵攻で傷を負った子供

 この調査で2003年から2011年にかけてのイラク戦争が原因で亡くなった人の数は約40万5000人に上るという推定が示された。さらに、難民としてイラクを離れた人びとからも最低5万6000人の死者が出ているとみられ、これも犠牲者数に加えた。犠牲者の60%以上は、銃撃や爆破、空爆といった直接的な攻撃によって命を落としたとされた。それ以外の人々は、ストレスによる心臓発作、衛生設備や病院の破壊といった間接的な原因によって亡くなっている。難民キャンプや国外に出たイラク人は100万人を大きく超えることから、この調査が示す数字はかなり控えめなものだともされている。

 そのほか、イスラエルによるガザ住民虐殺も加えなければならないだろう。2014年ガザ攻撃では住民2000人以上が死亡し、うち500人以上は子どもだった。憎悪が憎悪を生む、その連鎖が「イスラム国」やいくつものグループに分かれた過激派集団を生みだした。その連鎖の中に湯川さんと後藤さんも組み込まれてしまった。

二人の命を「捨て駒」に使った安倍首相

「イスラム国」勢力地域への爆撃

「イスラム国」勢力地域への爆撃

 湯川さん、後藤さんを直接殺害したのはロンドンなまりの英語を話す黒装束の男であり、命令したのは「イスラム国」であることはいうまでもないのだが、そう仕向けたもう一人の主役がいる。日本国の首相安倍晋三である。

 湯川さんが「イスラム国」に拘束されたのが2014年8月。その様子はインターネットで世界中に流れた。10月、湯川さんの救出なども目的に後藤さんがシリアに入った。そして11月下旬、後藤さんの妻に身代金を要求するメールが届く。そして今年に入り、1月20日に湯川さん、後藤さんの殺害を警告し2億ドルを要求する声明が出され、24日に湯川さんが殺害され、その後要求は人質交換に移るが、結局2月1日になって後藤さんも殺害される。

後藤さんを救え官邸前行動 この一連の経過のなかで、安倍首相は一貫して「テロに屈しない」というメッセージのみを発し続けた。二人が拘束されているのを知りながら衆院選挙を断行して政治的空白を作り、年明けにはエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ歴訪に出かけた。エジプトでは、「イスラム国」とたたかう周辺国への2億ドル支援を約束、「事実上の宣戦布告」を行った。2月2日のテレビ朝日「報道ステーション」で外務省がこの時期の中東行きは人質へのリスクが大きすぎると懸念を示したが、官邸は強行したと報じた。また、後藤さんが殺害された後、次第に明らかになっていることは、官邸はあらゆる手を尽くしていると一貫して発表してきたが、内実はヨルダンと「イスラム国」との交渉を待つばかりで、ほとんどなんの手も打ってこなかったということである。

 このことは安倍首相の念頭には、アメリカが主導し、「イスラム国」に空爆を行っている有志国連合の存在しかなかったことを意味している。エジプトでの演説で、安倍首相は日本が有志国連合の一員であることを世界に発信した。安倍首相には今回の二人の拘束を集団的自衛権の発動、自衛隊の派兵と結びつけようという明白な意思とシナリオがあったとみるほかない。首相が唱える「積極的平和主義」の具体的実践である。湯川さん、後藤さんの生命はそのための「捨て駒」に使われたのである。

哀しみと抗議の官邸前サイレント・アクション 『琉球新報』2月2日の社説は「首相表明の検証必要」として、そのことを鋭く指摘している。以下のくだりだ。
「安倍首相は『積極的平和主義』を掲げ、集団的自衛権の行使容認に踏みだした。それが中東からも米国追従と目され、過激派組織などに攻撃の理由を与えるようなことがあるとすれば放置できない。
 事件を糾弾し、「イスラム国」包囲を国際社会と協調して進めていく一方で、戦後70年の平和国家としての歩みを見詰め直し、中東諸国に粘り強く日本への理解を求めていく努力が今こそ必要だ。」

 憎悪の連鎖を断ち切り、日本がその連鎖に組み込まれていくことを抑えるために、とりあえず私たちは以下のことを掲げ、国際社会の人々と手を組んで追求していく必要がある。
 ひとつはアメリカ・有志連合の「イスラム国」への空爆を即時中止し対話を始めること、もうひとつは安倍政権を民衆の力で包囲し、積極的平和主義なるものを封じ込めること。3つめは対テロに名を借りた市民の監視と市民活動に対する弾圧を許さないことである。

(大野和興・ジャーナリスト)

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