新年を迎えて by 尾形憲(法政大学名誉教授)

尾形憲(法政大学名誉教授) 90歳になった。
 昔軍人は電車賃が半額なのにかけて、「人生わずか50年、軍人半額25年」と言ったものだ。私は陸軍士官学校の航空出身で、あの前後でいちばん死亡率の高い世代だった。陸上も含めた全体で約半数、航空だけだと三分の二が戦死した。「半額」にもほど遠い20歳前後でである。69年前8月15日には一旦軍刀を腹に当てた私だが、そのどれと比べても何倍も生きながらえてしまった。

 先の国会で、特定秘密保護法案が成立し、12月13日に公布、1年以内に施行ということになった。これにより、安全保障=(1)防衛、(2)外交、(3)国内特定有害活動(スパイ活動)、(4)テロ防止の4分野に関する情報を行政機関の長が「特定秘密」と指定し、その漏洩や取得について既遂だけでなく未遂、さらに「共謀」と「扇動」も適用され、最高10年の懲役という厳罰である。これは公務員だけでなく、それ以外の者が情報取得のため働きかける「特定取得行為」も処罰の対象となり、ジャーナリストや市民活動でも適用される。そして「共謀罪」がすでに国会で上程が予定されている。

 この「特定秘密法」だが、既に特定するものだけで42万件といわれ、今後どれだけ広がるか、その内容は文字通り「秘密」であり、これをチェックする第三者機関として「保全監視委員会」と「情報保全監査室」(いずれも仮称)が設置されることになったが、どれも政府内で、身内の官僚がスタッフになるのだ。十分なチェックはできない。
 特定秘密を取り扱う者については、その詳細な経歴から飲酒の節度に至るまでの「適正評価」がなされ、息づまるような秘密国家、監視社会の到来となる。共同通信の世論調査では、修正・廃止が82%という結果である。

 この法に世間の関心が集中してあまり議論がされていないが、本当に危険なのは国家安全保障会議設置法案である。これはすでに国会を通過して、12月4日施行、同日初会合が開かれており、年明けから事務局が設置される。首相、官房長官、外相、防衛相の4大臣会合が柱となっている。戦争中の「大本営」にあたるもので、外交・防衛政策の「司令塔」、戦争指導最高会議である。交戦権の発動という恐ろしいことまでここで決定される。
 これに続き、今年の課題は集団的自衛権の問題である。日中間の緊張緩和どころか、アメリカと手を携えての戦争準備が歩一歩進められる。「いつか来た道」に私たちは断固闘わねばならない。

尾形憲さんの著作(Amazonサイト)


(機関紙『コモンズ』67号4面)

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

  1. コモンズ最新号目次

特集記事(ランダム)

  1. 2016-12-31

    現在に生き続ける植民地主義<連載第4回> 「戦後」という名の植民地主義

季刊「変革のアソシエ」No.32

最近の記事

  1. 6・8沖縄意見広告関西報告集会
    あきらめない!!命の海をこわすな! 6・8沖縄意見広告関西報告集会  辺野古への土砂搬入が8…
  2. 死刑執行オウムの闇に蓋をする 基準適合規制委こそが不適合 歴史から何を学んできた戦後 …
  3. 「業種別職種別ユニオン運動」研究会 連続3回講座
    「業種別職種別ユニオン運動」研究会へご参加を! 8・25 第一回「関西生コン支部の歴史と現状」  …
  4. TYK高槻生コン
    ヘイト集団追い詰める - 勇気ある一企業が突破口 協同組合の私物化 違法な出荷割り付け減らしは許さ…
  5. 武建一
    本号の関連記事一覧 ・6・23 総決起集会報告 ・人種差別主義者のユニオン潰しと闘い抜く/武建一…

職場・労働相談はこちら(外部リンク)


連帯労組の闘い ↑ 映画「フツーの仕事がしたい」より 労働相談は連帯ユニオン

特集(新着順)

  1. TYK高槻生コン

    2018-7-18

    勇気ある一企業の声が突破口開いた-大阪広域協4人組が全面敗訴

  2. 2018-7-16

    大阪中央公会堂 6・23 総決起集会 「奴らを通すな!」響き渡る1150名のコール

  3. 史上初の米朝首脳会談

    2018-7-11

    史上初の米朝首脳会談と「共同声明」を歓迎する

  4. 連帯と公正

    2018-6-25

    連載6】競争と分断の共進化から 連帯と協同の共進化へ-組合と経営者の協働による連帯経済/斎藤日出治

  5. 悪法強行採決に声を失う過労死遺族代表

    2018-6-21

    現場から】心身を蝕む長時間労働の実際-安倍「働き方改革」法批判

バックナンバー

カテゴリ一覧

本日
昨日
累計
FROM 2014/01/01
ページ上部へ戻る