報告】ソウル宣言の会-GSEF2016モントリオール大会へ向けて/若森資朗

新たな協働の発見――社会変革をめざすグローバルな市民の連帯へ

若森資朗(「ソウル宣言の会」代表)
若森資朗さん

若森資朗さん


 「ソウル宣言の会」は、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のリーダーシップにより開催された「2013グローバル社会的経済フォーラム・ソウル大会(GSEF2013)2013年11月5~7日」で採択された「ソウル宣言」に触発された有志が集まり、2014年6月に発足した。
 私たちは早速、この年の秋に開催された「GSEF2014ソウル大会」への参加に向け、ソウル市の組織委員会から3名招き、明治大学でプレフォーラムを開催した。そして「GSEF2014ソウル大会」には44名で参加し「グローバル社会的経済協議会(GSEF)憲章」が採択された大会の意義を共有した。
 この大会の成果については、ブックレット[「ソウル宣言の会編『「社会的経済」って何?――社会変革をめざすグローバルな市民連帯へ』(社会評論社、2015年)]を、ご参照頂きたい。

■GSEF2016モントリオール大会へ
GSEF2016カナダ
 今年2016年は9月7日~9日に渡って「GSEF2016モントリオール大会」が開催される。全体では90報告が予定されている。
 その内の3報告が日本からであり、「ソウル宣言の会」が推薦したものである。
 残念なのは今回は日本の地方自治体の参加がないことである。今日の成熟社会にあって、世界的にも市民の活動と連携する地方自治体(政府)の役割がクローズアップされ、社会の健全な発展に不可欠との流れが創られつつある。なお、本大会での日本からの報告は以下である。
  1. 地方政府と市民社会の連帯による自給圏推進機構の結成――山形県・置賜地方の実践
  2. 建設産業における中小企業同組合と労働組合の協力・巨大独占企業との交渉による公正な経済実現の事例――近畿地方生コンクリート関連協同組合連合会
  3. 生活協同組合と地方政府(千葉県・野田市)の地域福祉事業における五つの協同の実践事例――生活協同組合パルシステム千葉

■世界は「社会的経済」のグローバルな連帯を求めている

GSEF2014

GSEF2014ソウル大会

 「GSEF2014ソウル大会」の開催趣旨は「ローカルな危機だけでなく、グローバルな危機を解決することを目指した集会であること、国際機関や地方行政、そして社会的経済組織のコラボレーションと連帯の場となるであろうこと」であった。その成果として「グローバル社会的経済協議会(GSEF)憲章」を採択した。

 リーマンショックから8年、そしてヨーロッパに続いている経済危機、世界のいたる所に起こっている社会危機と戦争。しかしグローバル資本は競争と効率を最優先させ、経済成長が社会を、個人を、豊かにするとの幻想を振りまいている。
 しかし現実に起こったのはほんの一部の階層への富の集中で有り、格差、貧困の拡大であり、人々の心身の摩耗、自然の収奪、環境の悪化、世界的な非正規労働の増大と結果としての賃下げ、等々であった。
 一方で富裕層は将来に渡る富を、一層蓄積させている。さすがにここにきて、この不条理な結果を招いた経済成長神話に疑問をいだき、多くの人々が声をあげ始めた。それは既成のエリート主義、特権層への明確なNOである。しかしこの動きには、ヨーロッパ、米国、そして日本を含め、国家主義・排外主義の危険も潜んでいる。

 ヨーロッパでは、グローバル資本による席巻が経済不安を招き、ひいては社会不安を招くと感じ取り、1985年イギリス、1991年イタリア、2001年フランス等、多くの国で、継続的に社会的経済に関する法整備を行い、育成の方針を取ってきた。2008年のリーマンショック以降もヨーロッパ、中南米の多くの国、そして今回「GSEF2016モントリオール大会」が行われるカナダケベック州でも法整備が行われた。
2014グローバル社会的経済協議会の創立総会&記念フォーラム(GSEF2014)

パク・ウォンスン ソウル市長


 世界は伝統的にあった協同組合に加え、様々な非営利セクターの育成に力を入れている。アジアではソウル市がそのことにいち早く注目し、国に先駆けて基本となる「ソウル市社会的経済基本条例」を制定した。
 この条例はソウル市長に社会的企業の育成を課しており、ソウル市の支援で多くの協同組合、社会的企業が結成され、特に若者の雇用に力を入れている。そしてアジア発信の社会的経済の連帯に結びついた。ともすると一国主義、地域主義的になりがちな運動が、地方自治体(地方政府)をも巻き込んだグローバル連帯で、グローバル資本に対抗する新たな挑戦である。それはグローバル資本への牽制力にもなっていく。

 現代はあまりにも巨大化したグローバル資本が世界経済を牛耳り、その都合で社会全体が動かされ、その弊害が世界、そして社会を覆っている。
 今こそ市民が利益優先とは異なる経済を担う主体として力を蓄え、社会的ポジションを持つことが求められる。私たちは営利を目的とせず、無謀な経済成長を求めず、相互扶助や協同をベースとし、人間の関係や自然との共生を大事にして行われるもう一つの経済「社会的経済」の定着と広がりを、連帯を意識しつつ取り組んで行く。

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