特別企画 労働者座談会

本紙特別企画

労働者座談会

貧困・格差ノー!  安倍政権の「働き方改革」と対決し
労働運動再生GO! 産別・業種別職種別組織化を全国に!




出席者
仲村実さん

司会:仲村実さん


  • 木下武男(労働社会学者、元昭和女子大学教授)
  • 樋口万浩(全日本港湾労働組合大阪支部執行委員長)
  • 広瀬英司(連帯ユニオントラック支部執行委員長)
  • 大野ひろ子(全国金属機械労働組合港合同南労会支部書記長)
  • 西山直洋(連帯ユニオン関西地区生コン支部執行委員)
  • 司会 仲村実(労働プロジェクト)
(注)座談会の編集は、労働プロジェクトの責任でおこないました。

仲村 木下先生らを中心に東京で「業種別職種別ユニオン運動研究会」を立ち上げる準備が進められています。今日は、「産別、業種別職種別組織化を全国化に!」というテーマで集まっていただきました。
 最初に木下先生の方から、現在進められている「業種別職種別ユニオン運動研究会」についての報告と、それに至る問題意識を話していただけますか。

■「業種別・職種別ユニオン運動研究会」結成への問題意識はどこに
 関西生コン支部の「定石」を使って労働運動の再生を(木下)


木下武男さん

木下 昨年、関西生コン支部結成50年の出版記念シンポジュームが開催され、その場で関生方式の労働運動を全国に広めたいという武委員長の思いを感じました。私も委員長とは別に昨年、業種別職種別ユニオンをつくらなければという思いがありまして、合流するような形でやろうという気持ちが強くなりました。
 最初に、呼びかけ人として大学の教員と弁護士に限定しました。それは労働組合の方々の呼びかけになりますと、様々な組合潮流があって、あいつがいるんだったら俺はいやだということがあるので、労働組合の方々は呼びかけに応えていただくという形にしました。私の予定では5月連休明けに東京で「業種別職種別ユニオン運動研究会」を結成して、関西でも続いてもらおうと考えています。

 私は、2007年に『格差社会にいどむユニオン』という本を出版しました。ここで関西生コンの経験を紹介して、教訓化することをやりました。公式というか「定石」をつくったつもりでした。しかし関西生コン支部というのは、東京では敬して近寄らずという感じで、まあすごいけどねえ、ということで運動の根本が広がらないのです。そういうじれったい思いでいたわけです。しかしここにきて、労働運動の再生を真剣に考えなければならないと感じました。何とかしなければとの焦りは大きくなってきました。理由は二つあります。

 一つは日本の労働運動がとんでもないことになっていることです。実践の渦中にいる人は運動の衰退は知ってるはずなのですけども、とりわけ2000年代になってから全労連と全労協の組合員数が大きく減少しだしました。これは地方公務員、教員の組合員がどんどん減っているからです。このままでは労働運動に未来がないと思いました。そのためには労働者の組織化を、これまでとは違う、業種別ユニオンの方式で考えるべきだろうということです。
 もう一つは、2000年代に入ってから貧困と過酷な労働という状況が、若者を中心とした働く者を支配していることです。これを克服するためには企業別組合と年功別賃金は役に立たない。このことを実感したことです。貧困を克服する反貧困のユニオン運動を考えていかなければならない。

 この二つの状況に立ち向かっていくには、関西生コン支部の「定石」を使っていくことが必要だと思っています。実際に2010年代に入ると若者を中心とした業種別ユニオン運動がおきてきたのです。これが関西生コンの経験が広がらないという私の苛立ちを突破することになりました。やればできるという確信が生まれました。若者のところだけではなくて、日本の業界の構造問題に目を向けていくような、そういう労働運動を展開しなければならないし、その可能性は広がっています。
 問題はそのような運動をしている多くの経験を集め、教訓化して、広めていくことです。たとえば全港湾はすごくいい産業別運動やっていますが、余り知られていませんね。関西生コン支部も私が広げているくらいで、トラックの経験もあるようですが、広く知られてはいません。研究会活動を通じて事例を活字にして広め、こうすればうまくいったという経験を紹介する、集まって経験を討論する、このような場をつくりたいと考えています。

Ⅰ 産別・業種別運動の強化へ、現場での新たな挑戦

仲村 出席いただいた皆さんからそれぞれの運動の紹介、産別、業界での規制力、かかえている問題、現状報告をお願いできますか。

■2008年に7中央単産が合流し全国港湾を結成

樋口万浩さん

樋口 全港湾といっても港全部を組織しているわけじゃない。2008年に7つの中央単産が合流して全国港湾労働組合連合会(全国港湾)を結成しています。我々の闘う相手は、日本港運協会という港湾運送業法の免許を持っている企業です。団体交渉を重ねながら、そこで決まったことは15地区の港湾で結びなおす運動をやっています。大阪は、大港労協というが、中央で決まったことを地区で調印書を結んでいます。各地区の力関係もありまして、なかなか進まない地区もあり企業との話し合いの場を設けるだけのところは、団体交渉権を確立できるよう力を入れています。
 港湾労働者の最低賃金は、毎年交渉でやられていますが、日本港運協会は去年から「独占禁止法」に当たると回答は出来ないと言っています。「これが『独占禁止法』に当たらんかったら回答せい」ということで、その確認書を昨年11月に取り今春闘に臨んでいます。大港労協的には、力ではね返して行くんやと。日本の中では大阪が一番強いんで、自負しています。労使が一緒でないと商いが成り立たない部分もあり、大阪港では組合が牽引していくと。懸念材料として大阪港が強ければ、荷物が逃げていってしまうところもある。

■「トラック産業の将来を考える懇話会」関西で立ち上げ

広瀬英司さん

広瀬 トラック業界は、1990年の規制緩和、この10年間デフレ状態、賃金は年収350万。トラックは物流として必要不可欠であるにもかかわらず、国から軽視されている。タクシー、バスは、適正運賃価格がある。トラックが法改正も含めて一番遅れている。事業者数が多すぎて品数も多いし、一つにまとめるのがなかなか難しくて、港湾とか生コンのように政策的なものが生み出せない状況。
 労働組合が賃下げを食い止めなあかんと、独自交渉で賃上げしてきたが、ここ数年、力関係を発揮すれば企業がつぶれてしまう、そういう負の連鎖に陥っている。業界全体をまとめて、根本の法律を変えていかなあかんということで「トラック産業の将来を考える懇話会」を関西で立ち上げた。我々と全港湾大阪支部、全港湾神戸支部が一つになって、その中に企業をいれている。この会の目的は、労働組合と経営者が一緒になって業界を改善することで労働者の賃金上げと労働条件を発展させ、企業の利益をもたらしていくということで5年くらい経ちます。この懇話会の中で、関西モデル的なものをつくろかと進めてるが、経営者自身も赤字で借金を抱え、なかなか増えてない。

■低賃金・劣悪な労働で心身をすり減らす介護労働の現場

大野ひろ子さん

大野 港合同は、自己破産突破闘争を闘った田中機械支部が拠点としてあります。南労会支部は、全港湾、全金など旧総評左派系の労働組合が労災職業病の医療拠点として作った南労会(松浦診療所・紀和病院)の組合。1991年から組合つぶしと闘い、22年間の労働争議になりました。解雇者13名をかかえ、2013年に和解で解決した。争議の過程で田中機械支部構内に介護事業所を南労会支部の第2の拠点として、今につながる運動を始めたということです。
 南労会の中に組合員は若干残っていますが、NPO港合同ケアセンターという方に重心が移っている。関生支部の方から産別とか業種別の労働組合を作って、労働運動の再生をめざそうという呼びかけがあって、全港湾大阪支部、港合同、管理職ユニオンなどが集まって「労働運動の再生をめざす懇談会」を立ち上げた。2014年の秋です。この懇談会の医療介護部会として活動を始めたが、なかなか集められないんで、「安心できる介護懇談会」という形にしました。介護保険法の大改悪があって反対運動を作っていかなあかんと、2015年5月に利用者、介護労働者に呼びかけて学習会をやりました。業界でいえば低賃金で劣悪な労働条件で心身をすり減らす労働で、どの職場も人手不足が最大の悩みです。介護保険制度の中で事業所の唯一の収入は、介護報酬。介護職は170万人位、今後3~40万人が必要と言われているのに今でも足りない。

西山直洋さん

■大阪・近畿一円で大企業との対等取り引き実現

西山 生コンの全国化をしようと動いてるわけですが、大阪はまとまって大企業と協同組合が対等になろうというところまできました。現在滋賀、京都、奈良、和歌山で固まっています。兵庫県がまだぐらついてるが、大阪よりいい水準が作られている状況です。関生支部としても名古屋ブロックで生コンに進出して行こうということで、まだ職場数は少ないですが。名古屋の生コン業者の方は、関生支部の運動を見てまして、“関西はいいよね”と言っています。関西以外の生コン業界は、本当にセメントメーカー・ゼネコンなど大企業に支配されているので、下請けになればなるほど厳しい状況なので組織化はしんどい状況です。労働者の賃金も低水準です。しかしピンチはチャンスということで、今春闘も闘いますが、全国に関生の運動を広げる取り組みを考えています。

■若者たちのブラックバイトユニオンなどの活動が
 反貧困のユニオン運動の確信をつくり始めた


仲村 木下先生の方から、首都圏での若者のユニオン運動を紹介してもらえませんか。

木下 2013年に総合サポートセンターができまして、これはブラック企業の対策のNPOだったのですが、それを労働組合という形にしようと2014年に総合サポートユニオンを結成しました。その年にエステ・ユニオンができて、これが「たかの友梨」の争議を闘いぬくわけです。メディアに大々的に取り上げられ、経営上も打撃になったようです。
 従業員の残業未払いの個別争議でしたが、従業員の個人の紛争解決ではなく、企業とのあいだで重要な労働協約を勝ち取りました。団体交渉をして労働協約を結ぶ、組合員だけでなく従業員にも適用させる労働協約の拡張適用をやらせる、このようなことがやってみたら出来てしまった。いまやエステ業界の上位10社のうち5社と交渉をもっています。関西生コン支部の業界を攻めるという基本を、つまり「定石」で勝負をしていけば勝ち筋が見えてくる、その典型的な事例です。

 それからブラックバイトユニオンの活動。恵方巻き、クリスマスケーキ、うな重の自縛、これは単なる買取りじゃなくて賃金の切り下げになる。セブンイレブンが病欠で代わりの人を探してこなかったから9千何円のペナルティを課すこともテレビで報じられた。あるお店のある人の個別の問題を解決して終わるのではなく、企業を相手に、業界を相手に運動を起こすということをやっているわけです。他にも、介護・保育ユニオンだとか、個別指導塾ユニオンだとかそういうところにも広がってきています。
 働く者の貧困層、ワーキングプアのところで団体交渉して協約化していく、これが反貧困のユニオン運動だということが明確になってきていると思います。これをあらゆる業種で、あらゆる問題で、火をつければ、かなりの力になる、これがやっている者たちの確信になっているところです。

Ⅱ 闘いの蓄積、業界・業種組織の展望をどう描くのか

樋口 全港湾の会館に来ていただいたら、3階の外壁に「共同雇用の確立を」と掲げています。まさしく全港湾の取り組みです。何を言っているかといいますと、港湾労働者が残念ながら勤めていた会社が閉鎖されたということで、港を去っていくことは無しにしましょうと。会社が無くなっても、そこの会社がやっていた仕事は必ず違う会社がおこなうので、我々はその荷物についていくんやと。産業別で港で働いていた労働者は、その会社がつぶれても同じ港で港湾労働者になれると。そもそもの全港湾の最初の考え方です。最近は声高々には言ってないが、基本的に産別の力としてあると思ってる。そこで基金を貯めたり、制度的なもので港を通過する荷物に対して賦課金をかけて、港湾労働者を安定させるということを運動の中で勝ち取っている。

■重要な全港湾の「共同雇用の確立」

木下 全港湾の共同雇用というのは非常に重要だなと思っています。共同雇用とは何だろう、要するに労働力をプール化して労働組合が独占する、労働力を掌握するのです。これがユニオンの根底的な労働力市場政策なのです。どうやったら他の業界にも応用できるかを考えればいいと思います。保育ユニオンの場合は地域的な労働市場なのですから、地域で労働者供給事業を活用することを戦略的に構想することも必要になるでしょう。労働組合が労働市場をコントロールする。これは業種別ユニオンの最終的な方向だと思っています。

■トラック業界は中小運送業者の協同組合化が重要

総がかり行動広瀬 トラック業界は、規制緩和してそのまま放置されていることが一番問題で、事業者数が増えてダンピング競争になった。荷主が一番、力関係でいえば大手事業者が力を持っている。今後、それを放置しておけば小さな中小の業者は、軒並みに淘汰されていく状況までにきている。
 この業界は、7次くらいまで下請けが入っている。国が進めている労働時間短縮して仮に残業がゼロになったら、トラック運転手は13万程度で生活せなあかん。この業界は歩合制が多いので、労働時間を減らしていったら賃金所得が下がっていく。残業も混みでやっと生活できるような賃金体系が問題で、そういう賃金構造を変えていかなあかん。
 適正運賃を国で定めてくれと規制を求めること、それと規制緩和で増えた違法脱法業者の摘発、水際のピンはね、中抜きをするような業者へ規制をかけることを国や行政に対して要請を行っていく運動を懇話会の中で取り組んでいる。それには中小企業の運送業者は協同組合でまとまる以外ない。

■職種・業種別組織化という形態はよい

高齢者の貧困大野 介護保険法が出来たのは2000年、業界としては新しいですね。介護報酬は医療の診療報酬と比べたら桁違いに低いので経営的に余裕がないし、労働運動の歴史や蓄積もない。なので、労基法違反状態の事業所がとても多く、そこが個別企業内での労使問題の解決、組合づくりが難しいところ。相手は国と自治体とハッキリしているので職種・業種別組織化という形態はすごくいいなあと思っています。まだ組織化の実績はないが、業界全体を動かしていくことを目指してやっていくと展望が見えてくる気がします。
 去年の11月25日に「介護の切捨てあかん!大集会」をやった。社会保障推進協議会という老舗の団体や研究者とも共同で介護総がかり行動準備会を立ち上げ集会を企画し、多くの参加と幅広い賛同を得ることができた。引き続き大阪市交渉、12月5日には厚労省アクションー情宣、署名提出、記者会見、直接交渉もやった。福祉用具業界団体は署名や地方議会意見書採択運動を大々的に展開、その他色んな闘いがあり、その総合した力が「要介護切り」を「先送り」させました。でも今の法案には利用者3割負担の導入など重大な改悪内容があり、闘いを強めていく必要があります。

■生コンでは派遣はない、何故か

関生労組西山 港湾さんでは、派遣労働者が入れないという制度をずっと継承しているが、建設は崩れつつあります。現在、現場監督というレベルまで派遣労働者です。業界自身が重層構造の完全下請け社会ですから、大会社・スーパーゼネコンでも現場にはちょっとしか社員はいない。生コンを打設する圧送労働者は、関西では二府四県で協同組合と労働組合が連携してやっています。今春闘では、下請けのバラセメントを運ぶ運転手ですけども、生コンが忙しいときだけ使われる輸送会社、庸車の事業者を含めての運賃をアップさせていこうと、それをメインテーマで闘っていく形になります。
 生コン業界では新たな参入を認めさせない運動で98%派遣はありません。何故かといいますと、非正規は労働者供給事業でしばれるから。派遣が入ることによって労働者の競争が生まれますし、低賃金を抑制していく部分、業界的にも定着しているので新規参入はほぼないです。しかし、最近生まれてきているのが労働組合を名乗った労働者供給事業者が増えてきていて、そこが労賃をダンピングしてきている。うちには直接来ないが、力のない労働組合の職場に入り込んできて、そこがダンピングされる状況になってきている。こうした部分を食い止めなあかんということがあります。

Ⅲ 企業内主義・本工主義を打破する対抗組織戦略を持つ

仲村 それぞれの取り組んでいる運動、その特徴を話してもらいました。日本の労働組合の社会的影響力は残念ながらなくなっています。企業内組合・本工主義批判はよく聞きますが、それを超える全国的に共通した方針、統一した取り組みが見えません。日本の労働運動をどう展望するか、現在取り組んでいることと、木下さんの問題意識を受けてどうですか。

■企業閉鎖でも仲間を助ける「連帯雇用保障制度」

樋口 先輩たちの財産で我々は守ってもらっている。港では確立されている労働協約によって、北海道から沖縄まで労働組合も経営者とある程度話し合いが出来る場があると判断しています。うちは事業法の中で下請は2次までしか認められていない。その2次も密な関係がある親会社から子会社へ役員が出向しているだとか、資本関係を持ってなかったらダメで、2次下請けが30%、荷物の30%だけ下請けへまわすことができ、それ以上はダメだと、事業法の中でくくられています。
 雇用の問題では、フェリーが大型化し、橋が四国に架かり、高速道路の道路整備が発達して、トラックに荷物が逃げて会社をたたまないかんという時にでも、全港湾の中での再就職の道はかなり高いです。労働組合の本質である仲間を助けるという伝統があるからです。

西山 生コンでも「連帯雇用保障制度」をつくっているから、企業閉鎖があってもその会社が持っていた出荷量が隣の会社に分散させられたという場合でも、業界で働いていた労働者がそこで働きたいということであれば、違う会社に労働組合付で入れるという制度は残ってます。100%ではないですが。

仲村 トラックや介護業界は、中小規模のところが多く未組織労働者が圧倒的に多い。今、企業別組合とまったく違う「共同雇用」や「連帯雇用制度」の報告があったが、トラック業界は難しそうですが。

広瀬 トラックでそれが出来るかというと、なかなか難しい。港湾では下請けの規制が出来ているが、トラックは出来ていない。労働者が同じ仕事をしているのに、同じ賃金でないことは不合理で大問題。大手であろうが下請けであろうが、同じ荷物をつんで同じ距離で同じように運んでいるのに、なぜ賃金に大きい差ができるのか、そこを問い続けないといけない。
 過剰サービスの問題もある。力のあるとこは過剰サービスが出来て、そのしわ寄せが中小零細企業にくる構造自体が問題。国がやる規制は、違法しなければ走れないというところを無視した中での規制ですね。罰則規定を強化する、それによってますます悪くなっていく、そういう悪循環が生じています。仕組み含めて変えていかなあかんし、必要な規制をやっていかなあかん。
 今、零細企業でいうたらこの業界の運送事業法で定められている293時間、これ以上で走っている運送事業者は多くいるんで、長距離でいけばそれを走らなしゃあない状況である。超過労働でそこそこの賃金になっているドライバーが多い。これを法律の枠できちっとあわしてやったら、賃金が生活の水準を満たさない。こういう状態を解決するのは労働組合であると発信しわかってもらうようにしないと組織も増えないし、業界の改善もできないと私は思ってる。

木下 産業の重層的下請け構造と労働協約の関係ですが、イギリスとフランスには日本のような重層的下請け構造は基本的にはないのです。産業別労働協約があれば、末端の労働者の賃金も上と基本的には同じなのですから、労働者の収奪は難しいのです。収奪構造でなく、雇用調整機能として下請け構造はありますが。もちろん下請けの末端は、産業別労働協約の最低の賃金で、大きい企業はそれに賃金の上乗せはあります。まったく同じ賃金ではないのだけれども、日本のような大きな賃金格差はないのです。

大野 介護業界は、経営的にいうと介護のみをやっているところは大変で、医療機関に併設して介護をやっているところは経営的にはまだましです。介護の職場、職種は重層的下請け構造がないわけですが、法制度そのものに根本的欠陥・矛盾があります。
 現場で介護を担っている人達、特に自宅で暮らす高齢者や障がい者を支える訪問介護のヘルパーさんは、50代、60代。70代の方もいる。この人達が主力で女性が多い。募集しても若い人は来ないんですよ。しんどいし、賃金安いし、8割以上が非正規ですよ。ほとんど登録型で。サービスする時間に対してだけ、生活援助だったらなんぼ、身体介護だったらなんぼという賃金体系、移動時間は賃金のないところが多い。そういう人達が地域の介護体制を支え、事業所も小規模が多い。
 訪問介護ってすごく大変な仕事なんですね。知識も経験も、人格も必要とされます。私たちの運動の中で、介護の仕事についての交流や悩み相談、介護の質を高める為の講習や交流なんかもしていく、そんな機能を持つことも重要かなと思います。

木下 介護職のユニオンは結構ありますね。あるんだけども介護の業種だとか職種で広く連携するのではなくて、事業所で労働組合をつくり、その事業所内で待遇改善をおこなうということに終始しているように見えます。それではいけないということで若者の介護・保育ユニオンはさかんに電話の労働相談を受けています。そこから業種別職種別につなげようということでやっています。

■介護労働者・労働組合と介護事業者も一緒に業界全体を対象にした戦略を

大野 介護懇談会の運動を進めていく上で、私たちの事業所が一定の事務局的役割を果たしています。こうして貢献できてほんとによかった。雇用されている介護職の労働組合だけではなかなか大変ですから。この事業所拠点を遺したことで、労働者・労働組合だけでなくて事業者も一緒に、業界全体を対象にして、という戦略を見定めることもできたかなと感じています。
 今までのユニオン運動に対して新しい問題提起にもなっているかと思います。それと介護を受ける高齢者や障がい者、家族や予備軍、保険料を払う労働者・市民など、様々な立場の当事者が主体となり融合して運動が発展していけば全面的に政権との闘いになっていくと思う。介護の切り捨ては命の切り捨てだから生存権をめぐる闘いです。

木下 これは新しい福祉運動ですね。これまでは社会保障制度の改悪などに対して地域社会ではなく、街頭や国会、選挙というルートで運動を進めてきました。それはそれで必要ですが、なんといっても地域社会で地道な福祉運動をすすめていくことが必要だと考えています。地域で福祉に携わる人たちと、福祉の受け手や家族、両当事者が地域で福祉運動を展開する。これは新しい方向性だと思います。

Ⅳ 安倍政権の「働き方改革」と対決し、業界に規定力を持つ業種別組織建設を

仲村 安倍政権が官製春闘としてこの2、3年、賃上げをさせ最低賃金もあげています。さらに同一労働同一賃金とか“働き方改革”と言っています。労働組合の組織率も徐々に落ちています。我々が今、労働者を産別、業種別で組織し、経営者団体・業界団体に影響力を発揮し、対決できる力が必要です。足元を固めつつ、安倍との対決をどのようにアピールし訴えていき、業種別職種別組織化を進めるのか、について一言づつお願いします。

■「働き方改革」は大企業だけ、闘いの発展には組織力が第一

西山 安倍政権のやっていることは我々につながらないし、大企業だけの問題ですから。働き方改革などについてマスコミの伝え方で労働者が本当に納得するのかなと思う。もちろんマスコミなんかは当てにできない。関生でいえば、地域、業界をこちらサイドで作り上げていく方が早いのとちゃうか。我々としては影響力が落ちないように、まだまだ未組織企業もありますから、労働者も含めて影響力がある組織化に力を継続してやっていく以外ない。組織力が落ちれば、業界が力を持ちますから、これまで勝ち取った権利を破棄していくやろし、それをさせない組織力が第一やと思てます。

■ストライキなど闘いの力が大事

樋口 日本交運協会の会長が経団連の役員で船会社団体から圧力かけられる。全港湾は港止めますからね。日曜日24時間止めたりとか、そんなん平気でやります。ストライキで部分やけども我々は止めるのが唯一の力やおもてます。アメリカの話ですが、2年前に西海岸のIAWUという港湾労働者が中心に倉庫とかを組織しているところが順法闘争に入った。順法闘争に入っただけでどんな影響が出たかというと、日本のマクドナルドのポテトがSしか売れませんとか、Lはないですとか、クリスマスツリーのモミの木は入ってきませんとか、西海岸ですから直接日本に入ってこない、挙句のはて何したかいうたら東海岸回ってということになった。我々は、安倍に対して組合として持ってる力を行使してるだけやと、安倍に直接行くのか業界に行くかです。関生さんもそうでしたけども戦争法反対でストライキ打った組合どうしで、我々は我々の先輩たちからの教えを現在にあったような闘いをしていく。

■労働者全体が業界の認識を変えるような運動を

広瀬 安倍はうまいこと物事をすりかえていく。前は「3本の矢」といっていたが今は無くなり、大企業が業績を上げれば中小零細企業にもおこぼれがいくと言ったがその話も消えた。安倍のやり方見てると業界全体が、流れでいうたら労働時間の短縮、全体的には1億総活躍社会、60才定年制でこの業界でどうなるのか。東京の方で60才後の継続雇用で賃金下がったことで、長沢運輸裁判やっている。そこで3割4割の賃金カットしていることが争点で、同じ仕事しても賃下げ。地裁では不合理やいうことで認められたが、東京高裁では認められなかった。明らかに不当や。賃金が下がるし、年金額も下がってくるし将来的に働き続けなあかん。生活できますかということです。この間、厚労省交渉を何度もやっているが突破できない。やはり労働者全体が業界の認識を変えるような運動を、トラック労働者が共通意識を持って、全体に反映させていかなあかんと思う。

■命が大事、ここをきちんと据える

大野 介護労働者の場合、安倍政権以前から「処遇改善」は一応政府の指針になっている。しかし1万2万賃上げといっているが、介護報酬は上がっても労働者の賃金は上がってない。介護職は労働者平均より月10万円も低いのだから、本当に虐待をなくし、誰もが安心できる介護をやっていこうと思えば、最低でも10万円の賃上げが必要です。
 また、2025年問題は「財源、財源は?!」と、まるで「長生きは悪」みたいに刷り込まれていくわけでしょう。相模原事件とも繋がります。だから、命が大事なんやと、国と自治体の役割は住民の命を守ること、その為に税金を使う、そこがあんたらの基本的な役割でしょうと、ここをきちんと据えないとあかんなと思います。
 安倍が「一億総活躍社会」「生涯現役」と言っている。そうすれば年金も、医療費も、介護も削れる、ただし高い保険料だけはキッチリ取りますということです。それに対して私らは、堂々と長生きしていいんや、老人と子どもや若者を守ることは互いを対立させることじゃないという価値観や考え方、そこを自分たち自身も繰り返し確認して広めながらこの運動をやっていくことが必要かなと思います。でないと財源論に勝てないし、オスプレイ配備に勝てないと思います。

仲村 最後に木下先生からまとめをお願いします。

■業種別の新しいユニオン運動と地域での新しい福祉運動
 この二つを柱に社会を変革していく


木下 安倍内閣の出してきた制度改悪を直接粉砕すれば、すべてがうまくいくということではなくて、もう十分に日本はまずくなっている。安倍内閣のやっていることは一筋縄ではいきません。ばっさり切れないところもあります。これまでの小泉内閣などがやった規制緩和と社会保障削減の一本やりで行ってたのですが、十年以上たってきてその弊害がとんでもなく出てきた。社会が崩壊しつつある。それにいくらかは対処しなければならない。すくなくてもそのポーズはとらなければならない。
 あと一つは、人口減少化における一億総動員体制つくらなければ彼らのいう成長はできない。一億総動員体制のために女性の活躍だとか、いろんなことを出してきている。

 だから私たちは社会に根ざした運動、業種別の新しいユニオン運動と地域での新しい福祉運動、この二つを柱にして、社会を組織化していく、社会集団をつくっていく。これが社会を抜本的に変革する抵抗の拠点であるし、変革の担い手の成長の場でもあります。
 これからは社会制度の改悪に反対することにとどまらず、新たに制度を構築する、その構想力が求められています。女性の活躍や保育問題、介護問題、人口減少対策、これらの問題を逆手にとって新たな制度構築で対抗していく、それを社会の下からの組織化と結合させて追求していく。逆手にとってと福祉でもおっしゃられたけど、こんなんじゃだめだよ、こうすればいいという話を根本的にやらなければならないところにきていると感じます。
 そうすることで大きな民衆のエネルギーを汲み出すことができるチャンスが生まれてくると思います。ギリシャやスペインなどの南欧の新しい社会運動、政治運動をみていると、必ず下からの社会運動が出発点にあります。社会を組織化し、制度を問い、政治にぶつけていく。烏合の衆では絶対になく、民衆みずからが組織化の担い手なのです。「左翼ポピュリズム」といわれるのは、政党まかせではなく、下からの民衆の直接的な行動が基礎になっているからです。

■米サンダース流「政治革命」、日本ではどこから

木下 それと財源の問題については、私は財源論ではなく、財政論でいかなければならないと考えています。財源のある無し、どこにあるかではなくて、今の財政の枠組みを根本的に組み替えることです。民主党の鳩山・小沢内閣のときに「コンクリートから人へ」というスローガンがありましたが、あれは財政論だと思います。政権は財源論で攻撃されましたが、ここを突破する政治力をつけていくことがこれから必要でしょう。
 昨年のアメリカ大統領選挙のときサンダース候補は「政治革命」という言葉を使いました。日本の「政治革命」は、戦後つづいた予算の全面的な組み替え要求だと思っています。予算組み替えを含む社会政策・社会保障政策を要求する抜本的な運動、これと安保問題や憲法問題の政治課題と結合したときに、戦後政治を転換させることができると思います。

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