伊波洋一氏講演「東アジアの中の沖縄」―辺野古新基地は対中戦争の準備

変革のアソシエ第2期出発記念講演『東アジアの中の沖縄』
伊波洋一 (沖縄・元宜野湾市長)


 以下は、4月20日、変革のアソシエ第二期出発総会を記念して、元宜野湾市長の伊波洋一さんが行なった講演の要約である。なお、同講演は21日のオバマ大統領への異議申立て集会でも行われた。編集部の責任で内容を要約し、小見出しを付けた。

「移設」ではなく新基地だ!
講演する伊波洋一さん
 一昨日、辺野古では座り込み10周年集会があって、神事が行われた。400~500名が集まった。辺野古は美しいサンゴの海です。この海が壊されようとしている。
 アメリカ側の資料を見ると普天間基地にはない様々な施設が辺野古新基地には作られる予定になっている。だからこれは「普天間の移転」ではなく全く新しい基地です。

 4月1日に更新された防衛省のホームページによれば米軍のために10億ドル分の架空の経費が上積みされている。グアムだけでは使い切れないからマリアナ諸島でも使う。

グアム移転が米軍の本音

変革のアソシエ記念講演会

変革のアソシエ第二期出発総会で講演する伊波洋一さん

 2010年のNHKによるハワイの太平洋海兵隊司令部への取材によれば、基地責任者のサンプソン氏は、今後100年、海兵隊が駐留する場所はグアムになるだろう、グアムは今後のアメリカと太平洋を結ぶ安全保障のハブになるだろうと証言している。

 米軍がその機能を一定に保つためには他国の軍と一緒に訓練する必要があるが、日本領土でフィリピン軍や韓国軍が訓練するのは不可能。しかし米国領土のグアムでなら合同訓練は可能です。すでに北マリアナ諸島テニアン島には新しい訓練のための施設が今度の予算で作られることになっている。沖縄海上の広大な訓練空域はマリアナ空域に移設される計画で、あとは海兵隊の本部隊の移動を待つだけになっている。

 即応部隊をグアムに置いていつでも展開できるようにしたいというのがアメリカの狙い。グアム住民がノーと言い、連邦議会が保留したので遅れている。

米国での撤退論の高まり

 沖縄にいま2万6000人余りが駐留していますが、それは韓国よりも多く、駐留経費も他の全ての国よりも日本が多い。しかしアメリカの中では撤退論が高まっている。米軍は今後10年間で1兆ドル、来年1千億ドルの軍事予算削減が決まっている。そこで海兵隊の削減が計画されている。しかし日本がお金をくれるので、辺野古に基地を作るという事で曖昧にしている。

 米軍のマリアナ移転計画にもかかわらずなぜ米海兵隊は辺野古に基地を作ろうとしているのか。理由は日本政府が尖閣への米海兵隊の関与を求めて彼らを引き留めようとしているから。またグアム移転を現地の人々から拒絶されたから。
世界一危険な普天間飛行場
「対中国」戦争戦略の内実

キャンベル・鳩山・ヒラリー・ルースら

キャンベル東アジア・太平洋担当国務次官補と握手する鳩山首相。ヒラリー・クリントン国務長官、ルース駐日大使(左から3人目)らと(2010年5月21日)

 実は1972年の沖縄返還の時、米軍は沖縄も岩国もハワイも含めて全ての軍隊を撤退するという計画を立てていたことが明らかになっている。ところが日本政府が海兵隊を引き留めたので日本側がお金を出す事と引き替えに駐留することになった。

 2009年にキャンベル国務次官補が鳩山政権に会いに来る時、当時のルース駐日大使が長文の電報を出した。それには「辺野古は普天間の代替基地ではなく、中国との戦争に備えるものだ。嘉手納と那覇空港だけでは足りないからもうひとつ作るべきだ」と書いている。アメリカ主導で進む日本の軍事力強化の目的は「尖閣防衛」ではなく台湾防衛戦略のために日本に中国艦隊の太平洋通過を南西諸島の公海上で阻止させる事です。

 2011年5月に創刊され、毎年2回発行される『海幹校戦略研究』という海上自衛隊幹部学校の戦略集に出ているトシ・ヨシハラの米軍戦略「アメリカ流非対称戦争」によれば、台湾の太平洋側の東海岸は防御力が弱く、中国艦隊に東側へ回り込まれたら不利になる。そこで日本が戦端を切り拓いて中国艦隊を阻止してほしい。そのために集団的自衛権が必要となっている。アメリカが守ろうとしているのは台湾であって尖閣ではない。それに対して安倍首相は米ハドソン研究所で「日本が米の安全保障の弱い環であってはならない」として事実上南西諸島の武装化を目指していることを明らかにした。

戦場地域を限定した戦略
日米が勝手に想定している中国・北朝鮮の「攻撃作戦」図

 「アメリカ流非対称戦争」は、戦場を日本と琉球列島の日本海域に限定し、米本土や中国本土にまでエスカレートさせない「限定戦争」を行う戦略。中国は核兵器をすでに持っており、主要なアメリカの諸都市を攻撃できる。だから核兵器使用以下に戦争を留める必要がある。

 自衛隊はこの米戦略に基づいて先島に「地対艦ミサイル」を配備している。2年前にもこの戦略に基づく自衛隊3軍の統合訓練が奄美大島で行われた。また尖閣有事を想定した部隊創設や宮古・石垣での新たな基地の建設も、こうした戦略によっている。

 しかし、米軍は中国の電撃作戦も視野に入れており、安倍政権の尖閣諸島に対する軍事的挑発に警告している。アメリカは尖閣には関与しないと明言しており、日本が守らなければいけないが、やりすぎると、中国の電撃作戦にやられるだろう。日本は米軍に思いっきりサービスして尖閣では手伝ってもらおうとしているが、そうはいかない。

沖縄の危機感が本土には解らない
ヤマサクラ21作戦図

日本を主戦場に米本土を守る米軍の対中戦略。戦争になれば沖縄は壊滅する。この危機感が本土に伝わらない。

 「アメリカ流非対称戦争」の前に立てられていた「エア・シーバトル」戦略では中国中枢部までの攻撃を含んでいたので戦争の第一段階では中国側から反撃のミサイルが一斉に飛んで来ることを想定して日本から一斉に撤退する事になっていた。そして第二段階で沖縄に来て中国へ攻めるという、沖縄を直接戦場とする戦略。「エア・シーバトル」戦略は中国の成長によって「非対称戦争」戦略に置き換えられた。
 中国のミサイルは毎年100発~200発増えている。沖縄は真っ先に壊滅し、日本列島が戦場となるという想定に基づく「ヤマザクラ」という日米合同演習が行われている。

 沖縄にとって戦争はもうたくさん。戦争への距離感の近さが沖縄の気持ちを作っている。69年前にあれだけの犠牲を受けたのに、沖縄の特殊な状態はいまだに続いている。いま現実にこんな作戦が想定されている危機感は本土の人にはほとんどわからない。戦争を絶対にさせたくないという沖縄の思いは日本の戦争回避の力になっている。

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